表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女児型なると製造機 なるみ [ 試作型 ]  作者: しおまめさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

なるとづくしのお正月れす!

 なるみ2026が我が家に来てから、早3か月。

 AI学習で高度化・効率化した……兆候は無い。


 工業団地が得意分野を結集して、復活した子供。

 まるで生きているように見える。

 脳や神経など生体の重要部が9割以上無事であれば、各分野で置き換える機械の開発は進んでいるそうだ。50:50、身体を半分機械化できるケースも、技術的には実現可能性があるらしい。それはあくまで『生きていたら』の話だろう。


 秘密は、このブラックボックス。

 試作段階だった『新型なると製造器』?


「よぉし、綺麗になったぞ~お!」

「ぃ、いそいれ……のぼせれ、しまうのれす……」

 創業時に様々な援助してくれた恩人から、味気ない袋めんばかり食べていた僕に「華を添えたらいい」と贈られた、先代『なると製造器』。あれから数年。和服の幼女がいる新年の幕が開けて、華やかさは段違いになった。


「あけましておめでとうございま~す」

「ほんねんも、よろしくいたますぅ!」


 では――


 おぉお!!


「なるみの作った、なるとだらけだ!」

「なるとづくしれす~❀」

「文字は下手なのに、のの字は綺麗!」

「んふ~、そうれすよぉ」

「煮物! ……どうやって作ったの?」

「レンチンなのれす~♪」



 ほったらかしてあった古いスマホに興味を持って、テキストの読み上げ機能と、電子レンジの使い方を覚えてから、レシピが一気に増えた。


 おせち料理じゃないものも入ってる。

 これが初おせち、カメラで撮影して。


 よし。



「 「 いっただきま~す! 」 」



 それにしてもドタバタしてた。

 2027年になってしまった。

 なるみ2026、どうなるのかなぁ。


 お孫さんは死亡診断書が出る前に、()()()の状態で移動して急速凍結。その後は超低温冷凍保管。必要なパーツが揃い準備が整ってから、なるみ2026にした、という流れだったそうだ。


 あの話が本当なら、笠松さんは逮捕。

 問われるとしたら、『死体領得罪』。


 会長が特別失踪で処理し、墓の下へ持って行ってしまった。死亡診断書が無いと「死体」とは言えない。その他の部分も、今回のケースは死体領得罪の構成要件に符合しない。立件自体まれ、判例となると極々少ない。


 不起訴処分……お蔵入りか。



 じゃあ。

 なるみ2026、どうなるのかなぁ。


「ん?」

「どうしたのれす? むつかしぃかお」

「今年なるみ2027になるのかな?」

「なるみは、なるみの、ままなのれす」


 そっか。

 そうか?


「いいや、違う!」

「違うんれすか?」

「見ろ、この料理の数々を! 人型なると製造機なるみ2026試作型じゃない。2027年のなるみは完璧だ、そうだろ? うんうん、そうだろぉ!」


「ぅわぁあぁん!」


 あ、あれれ?

 泣きだした!


 褒めた……つもり、だったんだけど。



「完成……テストおわるのれす」

「たしかに! そうなるの?!」

「ゎたし、ず~っと試作型れすっ!!」

「いや、そういうわけには……」

「じきそです、じかだんぱんれす!!」



 なるみ2026は玄関を飛び出した。

 生まれ故郷の鳴海工機、株式会社だからなぁ。

 年末年始は休んでる。

 で。

 振り向いて「どっちれすか?」と首を傾げた。

 そりゃそうだ、後部座席に座ってたんだから。



「今日明日どうにもできないよ?」

「なしてれすかーっ!!」

「正月三賀日は、お休み」

「そう……なんれすか?」


 笠松さんに電話して、渡す。

 言い争っていたけれど……。


 すぐにスマホは戻ってきた。



「明けましておめでとうございます」

『本年もよろしくお願いいたします』

「なるみ2026、なんて?」

『なるみは試作型です……と』


 その押し問答か。


「僕の言い方が悪かったのかもなぁ」

『4日の月曜から出社と伝えました』

「ご挨拶に伺っても?」

『お待ちしております』


 よしよし。


「仕事始め、挨拶に行くこ……っと、に?」





 居ない。


 なるみ2026の気配が無い。

 玄関は、開きっぱなしのまま。



 靴 が 、 無 い 。



 足元の悪い氷点下の屋外を、着なれない和服で歩く。なるみ2026の身体には過酷すぎる環境だった。すぐに迷子タグで位置を表示すると、すでに簡易型の範囲にはいないらしい。

 すぐに通話を切って、GPS測位の紛失防止タグを起動する。無事に位置が表示された。これで追える、移動中……車で行くか?


「早すぎる、走ってる?!」


 ゾ ワ リ ――

 嫌な予感がよぎる。


『これは……マズイ』


 車で追うと小回りが効かない。最短距離で追ったとして「このあたり」と目星をつけて、長靴で家を飛び出した。思ったより距離がある、間に合うか?!


 しばらくして。

 地図上に表示されていた位置へ、到着。

 方向を確認するためスマホを取り出し……。


 ふと。


 路上にうずくまる、小さな影が目に入った。



「なるみっ!!」



 動かない、動いていない。

 あちこち触って、調べる。


 ……冷たい。

 雪の積もった地面と変わらないほど冷たい。


 どうしたらいい?


 一度は、死んでいた子供。

 なるみは医療機関を頼れない。

 この状況で、命をつなぐ方法。



 知り合いに聞いてみるか……。


『あけおめー』

「緊急の用件」

『おや珍しい』


()()()()()()()

『死……()()()?』


 話が早いな。

 いいや早すぎる、想像どおりか。


「ウチの心臓を使ってるんだな?」

『除細動器のパターンが、まだ手探りの段階で』

「急な寒暖差と運動、その程度で止まるのか!」

『2歩離れて』


 小さな身体がビクン! と、陸に上がった魚のように跳ねた。なるみ2026に使える手段は少ない。埋め込み型除細動器の電気ショックを、遠隔操作で何通りも試しているようだが……。


『どう?』

「だめだ」

『AED』

「用意が無い」

『あ! アドレナリンは?』

「0.15mgが3本。静脈?」

『それだ、モニターします』

「よし、一発勝負だな!!」



 反応は……無い。


 時計を見る。

 10分以上、経っていた。



『3回分、あと2回あります』

「いいや。蘇生に失敗した――


 へたり込んだ。

 体から力が抜け落ちていた。

 雪に埋まったスマホの雑音。

 もう一度、耳に当ててみる。


『らしくないよ大鈴さんっ!』

「もう……時間が、無いんだ」



 通話を切った。

 静かになった。


 それは、一人。

 袋めんを啜る、仕事の、合間のような。

 わびしい静けさだった。


 ダメだった――――


 試作型のまま、完成せず。

 なるみ2027にすらならずに、終わってしまった。





「なると作りに来たのにねぇ……」



 死んでしばらく、声は聞こえているらしい。

 2度も死んだ、なるみにも届くのだろうか?



「なるみ、うちの子になろうか?」



 なるみ2026の、まぶたがゆるんで。

 目尻から、す――っと涙が流れ落ちた。


 『泣いてる?』と思った。

 鼻から、鼻水もでてきた。

 それきり反応は無かった。


 筋肉が弛緩して体液出た。

 ただ……それだけだろう。


 ずっとこんな感じだった。


 なるみ2026、なんかでろでろ出てくる。

 ひどく出来損ないの、なると製造機だった。



 なるみは、ただの、おんなのこだった……。


「   ぉ 」



「なるみ?!」

「ぉすき なのれすか、こ ぃうの」


 ひどい顔色でヘラヘラ笑ってる。

 ぎゅっと抱き締めてみると、トクン、トクンと脈打つ心臓が、微かな温度を身体に送りはじめていた。


「しんぱい れ もどって きたのれす」

「じゃあ。 ……うちの子になるか?」

「わっかした。ゎたし おおすず なるみ……なるれす」


 ずっと、ずっとこんな感じだった。

 一生懸命『大鈴なるみ』になろうと努力してた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ