それぞれの恋 1
「じゃあ、アカリ行ってくるわね!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
プティタウンの出入り口の近くで、車椅子からピョンと降りて、片足で進んでいくリリカの後ろ姿を見守ろうとした。けれど、リリカが外に出た瞬間に、リリカの体は宙に浮いた。
「わっ、ちょっと、いきなり掴むな! 普通手のひらの上に自力で登るの待つでしょ? 桃香のバカァ!」
「だってぇ、早くリリカちゃんに会いたかったからぁ」
相変わらずお互いにマイペースな2人ではあるけれど、かなり気はあっているみたいだった。リリカは以前からは信じられないくらい外に出るようになった。それも全て桃香ちゃんのおかげだった。
嬉しい反面、どんどんリリカがアカリの元から離れていくみたいで寂しくもあった。今では昔とは逆に、出かけるリリカを見送って、一人アカリが家の中にこもっていた。リリカが外に出る分進捗が芳しくなくなっている小物作りの続きを暇つぶしにやることが増えた。
「ダメだな……。せっかくリリカが人間へのトラウマを克服したのに、まるで嬉しくないみたいじゃん……」
プティタウンの中を歩きながら、思わず苦笑してしまった。まあ、寂しく思う理由は一つではないのだけれど。
「アカリちゃん、なんだか元気無さそうね? 大丈夫?」
向こうから歩いてきたアミさんが心配そうに尋ねてきた。
「いえ、いつも通り元気ですよ。それよりアミさん引っ越しの準備順調ですか? 大変だったら手伝いに行きますよ?」
「ありがとう。でも、大丈夫よ。もう大方終わってしまったから」
「アミさんまで引っ越しちゃったら寂しくなりますね」
「わたしはこの近くだから、また愛菜に言ってプティタウンに連れてきてもらうわよ。そのときはクッキーでも出しておもてなししてよ」
アミさんがニコリと笑った。愛菜さんと同棲することに決まったアミさんは、すでに引っ越しの準備の大半を終わらせているみたいだった。沙希さんが去り、アミさんも去る。
「明日アミさんのお別れ会したいんですけど、予定空いてますか?」
「嬉しいわね。ありがとう。もちろん行くわ」
微笑んでいるアミさんに手を振ってから、アカリは家へと戻っていく。
「みんなどんどん進んでいってるんだなぁ」
ぼんやりとアカリが考えた。
部屋に戻ってから、沙希さんの画像SNSのアカウントを見る。スタジオ用に借りていた部屋を明け渡す日に5人で撮った画像を最後に更新は止まっている。遡ると、アカリの画像と綾乃さんの画像ばかりが並んでいる。随分懐かしく思えた。
「ま、そんなことよりも今はリリカが帰ってくるまでに小物作りの作業を進めておかないと」
アカリが自分の頬を叩いてから作業を始めた。




