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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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失恋確定 1

「大丈夫だった?」

歩きながら、沙希さんが不安そうに尋ねてくる。

「ええ、わたしは大丈夫ですけど……」

どちらかと言えば、沙希さんに怒られて大きなショックを受けていた綾乃さんが心配だった。


上を見ると沙希さんの優しそうな顔が見えた。綾乃さんは沙希さんに恋をしている……。そんな沙希さんから平手打ちを受けて、軽蔑されて、きっと気持ちは深く沈んでいるだろう。

「ほんとにごめん……。わたし、綾乃ちゃんのこと本当に良い子だと思ってて、それで信用してアカリちゃんにもう一度会ってもらったのに。わたしのせいで、またアカリちゃんが怖い思いしちゃったなんて……」


落ち込んでいる沙希さんを宥めるために、慌てて首を横に振る。

「大丈夫ですよ! 綾乃さん優しかったですから!」

実際、突然カバンに入れられて連れ去られたこと以外は、綾乃さんには何もひどいことはされていない。

「ありがとね……」と沙希さんは力無く笑った。多分、アカリがフォローするために優しい言葉をかけていると思っているのだろう。


「ねえ、せっかく来てもらって怖い思いだけさせちゃって悪いからさ、うちに来てお菓子でも食べていかない? リリカちゃんの分もお土産用意するからさ……。そのくらいはさせてもらわないと、なんだか申し訳なくて……」

別に気にしなくても良いのだけど……、とは思ったけれど、この間アミさんの持ってきたマカロンを食べていた時のリリカの嬉しそうな顔を思い出したら、何か持って帰ってあげられるならありがたいかも、とも思った。今日は突き放すような形で家から出てしまったし、美味しいお菓子でも持って帰って、リリカを笑顔にしてあげたかった。


「じゃあ、お言葉に甘えて……」

うん、と沙希さんが頷いた。そのままアカリは沙希さんの手に揺られて、のんびりと家に向かった。


「今日はスタジオじゃない方に行くね」

沙希さんはいつもと全然違う道を歩いていく。普段と違う景色は新鮮で面白いけど、万が一沙希さんと離れてしまえば、アカリ一人では絶対に帰ることができないという怖さもあった。


「沙希さんってお家が2つあるんですか?」

「家っていうか、今まで行っていたのはお仕事のために借りてる部屋だよ。簡単な事務所代わりに借りてるんだけど、最近はアカリちゃん専用の撮影スタジオにもなってるね」


「わたし専用?」

「アカリちゃんの場合は、室内でも色々な小物とかお洋服とか使って撮影できるし、タブレット使ったら色々な背景も合わせられるし、外に行くよりも安全に撮影できるからね」

確かに、外に行くとカメラに集中している間に鳥や猫に身を狙われてしまう可能性もあるから、室内で撮れるならそれに越したことはない。


「綾乃さんのことは室内では撮らないんですか?」

「撮影前の打ち合わせとかはあそこですることはあるけど、写真は撮れないかな。狭すぎるもん。良い感じの映えスポット探して、行って撮ってるよ」


「わたしのお洋服作って、綾乃さんの撮影場所探して……。大忙しですね!」

「まあね。でも、楽しいからいいよ。アカリちゃんのためにお洋服作ってる時は、着てくれたときの姿を想像するだけですっごく楽しいし、綾乃ちゃんと一緒に撮影場所に出かけた時には一緒に美味しいもの食べたりして楽しいし、景色も良いから見ているだけで癒されるっていうのもあるし……、って、綾乃ちゃんの話はあんまり聞きたくないよね」

沙希さんが話すのをやめてしまったけど、綾乃さんのことはそこまで嫌いではない。少なくとも、沙希さんの話に出てくる綾乃さんに不快な思いをしたりするほど嫌いなんていうことはない。


(綾乃さん、沙希さんに充分愛されてると思うけどなぁ……)

沙希さんが話す内容はまるでデートみたいで、少なくとも軽んじられているということは無さそう。今度会ったときに、綾乃さんに教えてあげたら喜ぶかな……。なんて、なぜかまた会うことを前提で考えてしまっていた。謝罪も終えたから、もうこの先会う必要なんてないのに。そっと指で唇に触れながら、そんな不思議な気持ちの理由について考えるのだった。

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