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せっちん!  作者: 濱野乱
空蝉編
37/97

欲しがります。勝つまでは


「では、エトワール選のルールをおさらいするぞ」


丑之森螺々は、ホワイトボードにペンを走らせる。


天井の低い卓球部屋で、螺々と寺田幸彦が息を潜めるようにして、密談を始めた。


幸彦は、どこか固い表情で螺々の背中を見守っている。


エトワール選の候補者の名前が、十二月五日に告知された。それから、二十五日までの間が投票期間となる。投票権を持つのは、丸岡高校に通う、一年から三年までの全男子生徒だ。棄権は基本的に認められない。学校に足を運べない者も、なんらかの意思表示をする必要がある。票は一人一枚ずつ、専用の用紙が配られ、記名式だ。期間中いつでも投票可能であるが、一度投票した票の変更は認められない。

投票受付は選挙委員まで。投票締め切りは、二十五日、十八時厳守。 

エトワール候補者は可能であれば、何らかの選挙活動を行ってもよいが、投票を直接促すような言動は慎むこと。

「寺田君、用紙を紛失した場合どうなる?」

螺々は、密かに入手した投票用紙のコピーを指で挟んでひらひら振った。

「すぐに新しい投票用紙が配布されます。全部の用紙を処分されて、ノーサイドとか、用紙の水増し、色々な妨害工作が考えられるから、不正防止のためらしいです」

幸彦が見てきたように語るのは、彼もまた去年の選挙を経験しているためだ。それを踏まえた螺々との協議も回数を経て、だいぶ選挙に通じた感触があった。

「紛失しても、投票権は剥奪されないのか?」

「ええ、投票率が百パーセントになるまで、投票が繰り返される決まりです」

選挙は厳正な手順を経て、校内の序列を定める。異論は認められない。

「ずいぶん用心深いな。たかが学生の遊びだろ」

「数少ない娯楽ですからね。できるだけ公正にやりたいじゃないですか。大人の魅力溢れる螺々さんには、わからないかもな」

螺々は少しむっとする。この少年は知ってか知らずか、人の神経を逆なでするのだ。

「餓鬼の思考に合わせる身にもなってくれよ。仕事だから文句は言いたくないんだぜ」

螺々は幸彦にある依頼を受けた。カヲリ=ムシューダをエトワールにするという、無理難題な依頼だった。

「ごめんなさい、口が過ぎました。僕からお願いしたことですし、できる限り協力させてください」 

幸彦は金銭目当てでエトワール選を戦うため、螺々に協力を申し出たが、二人が出会ったきっかけは、差出人不明の一枚の紙だった。

「これの差出人とは、いつ会えるんだろう」

幸彦が持ち出したのは、一枚の紙の切れ端だった。

それは、十二月の始めに教室の机の中に入れられていた。しかし、陽菜に破られてしまい、切れ端しか残っていない。

「いずれ会える。もう会ってるかもしれんぞ」

思わせぶりな螺々の科白に、幸彦は顔を突き出そうとしてやめた。そちらの方は、所詮ついでに過ぎない。

「とりあえず、ムシューダさんを頼みます。僕は」

幸彦は口をつぐみ、ドアの方に目を向けた。釣られて螺々も同じ反応をする。

開け放したドアの前に、来栖未来が立っていた。口元まで、マフラーを引き上げ、表情は読めない。

「どうしたの? 話を続けたら?」

未来はローファーのまま部屋に上がり込み、卓球台に片手をついた。傍観するというにはあまりに挑戦的な態度だった。

「やあ、エトワール。ご機嫌いかが……、聞くまでもないか」

螺々は幸彦に目配せして、入り口へ足を向けた。

未来は咎めるような棘のある口調で螺々を牽制する。

「丑之森、卓球しに来るのは構わないけど、あたしに一声かけて欲しいな」

「以後気をつける。それじゃあな、寺田君。また後で」

螺々は未来を適当にあしらい、部屋を出た。

「ゆーくんっ!」

螺々がドアを閉めるやいなや、未来は感情的な声で、幸彦の非を責めたてる。

「何で、他の女をここに入れたの? 約束が違う。しかもあんなヤマンバが好みだったなんて」

「ごめん、人目を避けたかったから。もうしないよ。好みに関しては否定するよ、誓ってね」

幸彦はやんわりと未来の非難を避けつつ、ホワイトボードの文字を消した。

未来は不満晴らすべく、幸彦の背中に体重を預ける。

「ここはあたしと、ゆーくんのための場所なんだぞ」

「うん、わかってる」

幸彦は事務的に応える。毅然とした態度を見せられ、未来は辱めを受けたように感じた。

「ねぇ、今日の夜、あたしのバイトが終わった後、会えない?」

「どうして?」

幸彦の背中に置いた手の力を無意識に込める。

「夕食、一緒にどうかなって」

「ごめん、やることがあるから、また今度にしてもらえる?」

幸彦は未来から体を離すと、機械的に荷物を纏め、部屋を出ようとする。

「やっと会えたねって、誰のこと?」

未来が投げかけた言葉に、幸彦の足が硬直するように止まった。

「ゆーくんが、誰に恋してても構わないよ、あたし。二番でも、三番でも我慢するから」

幸彦は、青ざめた。彼をよく知るものなら、怒り狂うのを押さえているように見えただろう。

未来は幸彦の情動に気づかず、彼の背後に再び立つ。

理由がなくては一緒にいられないなら、執拗に理由を探すまで。それだけ彼女は追いつめられていた。

  

 2


カヲリ=ムシューダが一人、校門の前で立ちつくしている。頭にサンタが被るような赤い三角帽子を載せていた。

道行く生徒に煙たがられても、怯むことなく彼女は任務を遂行しようとしていた。

一九九九年十二月十一日土曜日。

丸裸の枯れ木がさめざめと泣くような音を立てて、風に吹かれる朝だった。

「募金、お願いしまーす!」

カヲリが手に持っているのは、クリスマス募金と書かれた直方体の赤い箱だ。

何かの気まぐれか、一人の男子生徒が五円玉を募金箱に投入した。その際、至近距離で五秒間ほど、カヲリの顔をまじまじと見つめてきた。

「アリガットゴザイマシタ!」

頭を振り回すようにして男子を追い払うと、再び待ちの態勢に入る。

「うぃー、朝からごくろー、ペテロ」

登校してきた西野陽菜が、機嫌良くカヲリの肩に手を回す。陽菜の背後には、マイとアイコの姿も見える。

「寒い、つらい、こんなの絶対おかしいよ。西野さん、代わってよ」

「やだし。私、冷え性なんですけど。マイ、代わってあげたら?」

丸投げ体質の陽菜にできる相談ではなかった。それでも病院の一件以来、陽菜のカヲリに対する当たりは、ずいぶん柔らかくなっている。

ホームルームが始まりそうなので、カヲリも一団に加わって校舎へと入った。

「カヲリぃ。精一杯働いて、私にドンペリ飲ませてよね」

陽菜が、からかうようにカヲリの肩にすり寄る。カヲリは泰然自若として揺るがない。

「酒なんか飲ませるものですか。肉は譲れない」

カヲリがいらぬ労苦を抱え込んだのは、二日前の帰りのホームルームにおいてであった。

「今年のクリスマス大会が近づいてきました」

委員長が音頭を取り、クラスに呼びかけた。クリスマス大会とは、毎年十二月二十五日、講堂で簡単なパーティーを行うというものだ。生徒会と、クラス委員が主導し、ビンゴ大会や、お菓子と飲み物など用意しての懇談を目的としている。

「一ヶ月前からポスターなどで告知していますが、うちのクラスの”サンタ大使”がまだ決まっていません。誰か立候補してくれませんか」

サンタ大使は、委員長の補佐として各クラスから一名選出することになっていた。

教室は深閑となった。

積極性が足りないと、生徒会にせっつかれたのか、委員長は涙目である。

「あのー、いいですか?」

率先して手を挙げたのは、アイコだった。

「クリスマスは、あくまで個人的な目的に使われる日じゃないですか? 生徒会に言われたからとか、無理して参加させられるのって、どうかと思いまーす」

同意を示す声もちらほら聞こえた。

「そもそも生徒会がクリスマス会の運営を滞りなくやって、教師の心証をよくしたいだけだろ。点数稼ぎに僕らを利用しないでくれよ」

「そもそも需要がないんじゃないの。それならやらなくても」

不参加の兆候が顕著になり始める。

最前列の席でイヤホンをはめていた陽菜が、最後の決裁を行った。

「てゆーか、クリスマスに予定のない人っているんだ」

空気を震わせる鋭い舌打ちが、教室の至る所から聞こえた。不思議と誰がやっているのか判然としない。

失望と、恐慌がない交ぜとなった委員長が目をつけたのは、気の弱そうなカヲリだった。

カヲリはあまり話合いに積極的ではなく、窓に顔を向けている。

「ムシューダさん! 意見はありますか!」

半ば縋るように指名され、カヲリは泡を食う。

「えっ・・・・・・、自由参・・・・・・・」

委員長の目が突き刺さる。不参加と言ってくれるなと。もう流れは変えられないのだ。カヲリは小さな声で、自分も予定があると伝えた。

帰りの会が終わると、委員長がまっすぐカヲリの席にやってきた。

「ねえ、ムシューダさん、お願いが」

「いや、予定が」

「わかってる。形だけでいいからサンタ大使になってくれない?」

「えー!?」

「多分、今年は定員割れで会自体中止になりそうだから、形だけでいいの。助けると思って」

頭を下げられ、カヲリは曖昧な返事をする。それが運の尽きとなる。資金集めに駆り出されることになった。ペテロというコードネームまで与えられ、サンタ大使は奮闘する。

 

 3

 

サンタ大使の仕事をしていても、授業は待ってくれない。カヲリは疲弊してゆく頭をなんとか奮い立たせていた。

「ペテロ、調子はどう?」

授業の合間に陽菜がカヲリの席にやってきた。

「私、こういうの向いてないんだ。はあ・・・・・・」

陽菜は、愚痴に耳を貸さずカヲリの胸の顔を埋めている。お気に召したようだ。

「あー、あったけー、こいつ凶悪なもんぶらさげてんな。げへへ」

陽菜のふんわりとした髪を触ってみた。怒られないので、手を後頭部に置いたままにしている。

「ねー、幸彦君、すごいよ。これ、触ってみる?」

カヲリの胸に頬ずりしながら、陽菜が笑う。幸彦は見て見ぬふりをした。

「放課後もさ、集金と参加者集めないといけないから」

「ふーん、大変だね。私、帰りに幸彦君とゲーセン行くんだ」

「みんな薄情だよ。お金が貯まったら、使い道でまた揉めそうだし」

「うん、ドンペリとかドンペリとか?」

「あー、もう! やってられない」

カヲリが肩を振り回すと、陽菜は幸彦の背中にしがみついた。

「思い詰めない方がいいよ、ペテロ。でもドンペリは飲みたいからがんばってね」

カヲリは目を怒らせ、陽菜につかみかかる。

「未成年は酒が飲めないのおおおおおおおおっっ!」

そんなこんなで土曜の授業は昼で終わり、ペテロはサンタ帽子を被り、活動を開始する。

「サンタ大使ばんざーい」

「ばんざーい」

アイコとマイが教室の入り口で送り出してくれた。

「さて、ウチらも散りますか。千本桜のごとく」

「ポエムってんじゃねーよ、マイ。あ、さっきサンドイッチのお釣りもらったから募金するわ。ガンバ、ペテロ」

アイコに十円を募金してもらって、カヲリは歩きだした。衆目の視線がつらい。嘲笑されているのではないかと勘ぐってしまう。

廊下の端までついて、立ち止まる。無目的に歩いても行き詰まってしまう。階段を下りる途中で、見知った顔とすれ違った。

「挨拶くらいしたらどう? カヲリ=ムシューダ」

カヲリは帽子を落としそうになりながら、頭を下げた。

「お疲れさまです。灰村先輩」

灰村香澄はようやく表情を緩めたが、その場に留まったまま、段上からカヲリを見下ろしている。

「あのー、何か?」

「大使の仕事、頑張っているようね」

カヲリはこの先輩が苦手である。情緒を感じないというか冷たい印象があるからだ。 

「成り行きでこうなったけど、できる限り頑張ろうと思います」

「そう、殊勝な心がけね」

カヲリが立ち去ろうとすると、香澄も後を追ってきた。忍者のようなスムースさで追尾される。

「あ、あの、私、何かしましたでしょうか?」

「何か後ろ暗いことでもあるのかしら。それなら監視役として黙っていられないわね」

「え?」

カヲリは足を止めた。

「聞こえなかった? 君が滞りなく大使をやり遂げられるように私が手伝ってあげると言ってるの」

よりにもよって厄介な相手に目をつけられた。カヲリは不正を行うつもりは毛ほどもないが、マークされて気分を害する。

「勘違いしないで。別に君ごとき豚が横領犯して蒸発しても、私は痛くもかゆくもない。むしろウエルカム」

「は、はあ・・・・・・」

香澄は憂いを帯びた瞳を伏せる。

「生徒会の任は退いたけれど、今年で高校生活も最後だし、拙い思い出づくりというところかしら」

後に聞いたところによると、クリスマス大会は香澄の送迎会も兼ねていたようだ。

「というわけだから、ちゃっちゃと、取り立てをするわよ。男子生徒が狙い目ね。奴ら、金と女には弱いから」

香澄は人差し指と親指で輪を作り、黒い笑みを浮かべた。

「どういうわけかわかりませんけど、同感です。行きますか」 

予期せぬ同行者を得たペテロであった。期待よりも不安が募る。

道中、香澄と目を合わせた生徒は残らず財布を取り出していた。恐るべき集金マシーンである。

「エトワール選にエントリーされたようね。おめでとう」

人気がなくなった一階のげた箱付近で、藪から棒に話を振られる。

身構えていても疲れるだけである。カヲリは素直に受け止めた。

「でも、ムカつきません? 男子が勝手に」

「そうね、でもこういうことは、どこにでもあるわ」

香澄のように固そうな女子なら、反旗を翻しそうなものだが、その兆候もない。カヲリにはそれが不思議であった。

「女にも女の面子があるの。わかるでしょ」

「まあ・・・・・・」

内心、カヲリにはあまり闘争心が沸いてこなかった。陽菜とも和解しかかっているし、香澄も話の通じない相手ではないとわかって、この戦の大義を見失いかけていたところだ。

「来栖先輩は、どうしてエトワールになれたんでしょう」

カヲリは考えなしに口をついた言葉が、失言だったと後悔する。香澄がまるで未来に劣っていると言わんばかりだ。それでも香澄は、夜明け前の海のように静かであった。

「あの娘は、そうね・・・・・・、欲張らないからじゃないかしら」

「欲張らない?」

「未来が何かを欲しがる所を見たことがないわ。欲がないというより、欲を知らない感じだった」

だが、その未来も欲の味を知ってしまった。香澄はそう続けたかったのだろう。

「本当に嫌な娘。カマトトぶって、いつもへらへら笑ってる。怒ったこともないんじゃない」

仇敵を弾劾するような香澄の口振りに、カヲリは疑問を持つ。

「灰村先輩は、来栖先輩と友達なんですよね?」

「そうだけど」

「友達のこと、そういう風に言うのは、あんまり関心しないっていうか・・・・・・、あっ、えっと」

カヲリがしどろもどろになると、香澄が吹き出した。

「誤解があったようね。私の嫌いは、好きの裏返し。未来のことは好きよ」 

と、続け、

「殺しちゃいたいくらい」

カヲリが聞き返そうとすると、複数の生徒がげた箱付近に集まってきた。

香澄の存在に気づいた者は引き返そうとするが、ターゲットにされれば逃れる術はない。

「い、命だけは・・・・・・、おたすけー」

断末魔の叫びがそこかしこで聞かれる。カヲリは耳を塞いでいた。

「大使が働かなくてどうするの? 残業させるわよ」

魔王のように君臨する香澄と、いつまで一緒にいなければならないのか。カヲリはそのことが気がかりであった。

「もう、無理です。私は灰村先輩みたいに強くなれません」

涙声で訴えても、香澄は動じる気配がない。きっと委員長もこうしてプレッシャーを受けたのだろう。

「無理なんてものはないのよ。できた瞬間に無理じゃなくなるのだから。さ、頑張って」

第三者から見たら、後輩を叱咤する先輩の優しさの現れだったのかもしれないが、カヲリからしてみれば、理不尽以外の何物でもない。

今日の放課後だけで、だいぶずっしりした箱を抱え込むと、カヲリは仕事にかかる。幽霊のように背を丸めて、昇降口を出た。

「これでよかったかしら」

誰もいなくなったと思われた下駄箱だったが、一人の少年が音もなく姿を見せた。

「助かりました、灰村先輩」

ほくそ笑む幸彦の顔のすぐ脇に、香澄は手を伸ばす。

「それだけ?」

「ありがとうございます」

「感謝の念が足りない。駄犬、私を侮辱しているの?」

幸彦はため息をつきながら、香澄の手を取り自分の指とそっと組み合わせた。香澄は溜飲を下げ、大人しくなった。

「大変だったんだから。あの娘を大使にするの」 

香澄は委員長にカヲリを大使にするよう圧力をかけていた。全ては茶番であった。

「それにしても、あの畜生が私と同じ土俵に立てるとは思えないわ。君もそう思うでしょう?」

幸彦の手に頬ずりして、香澄は妖しく目を細める。

「あくまでですよ、あくまで相対的な見方をするなら、一概にそうとも言い切れないと思う」

幸彦の視線が首から下に下がったことに気づくと、香澄は舌を噛み切るのではないかという苦い顏をした。

「それじゃ僕はこのへんで失礼します」

「待ちなさいよ。どこに行くの」

「これからゲーセンに。西野を待たせてるんで」

陽菜の存在を知り、香澄は意地悪したくなる。

「キャンセルなさい。これは命令よ」

「できないですよ。知ってるでしょう? 西野の言うことは絶対なんです」

香澄は力なく腕を下げ、幸彦に背を向けた。

「バカ、駄犬の分際で・・・・・・」

失望で動く活力を失い、香澄はげた箱に額をつけて立っていた。

とっくに外に出たと思った幸彦が、香澄を背後から肩に手を回し、抱いた。普段なら抵抗するところだが、そんな気は起きなかった。

「僕は貴女がいないと、どうにかなってしまう。それだけは忘れないでくださいね」

「寺田・・・・・・」

必要とされているのは道具としての機能か、女としてなのか。聞くだけ無駄なことなのだろう。諦めはついている。

「私は君がいなくても問題ない」

「そ、そうですか」

香澄が即答すると、幸彦は少し落胆した様子だった。

「でも時々は、首輪を確認させて頂戴。わかった?」

幸彦の首に唇で捺印をして、香澄は鬱憤を晴らした。

  

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