エピローグ
勇者くんたちのお城の謁見の間。私はそこで、勇者くんたちの魂魄に触れていた。お仕事です。
ぐじゅり、と。彼らの魂の形を変える。ぐじゅぐじゅと。こねこねと。ぺたぺたと。
「おん。できたよ」
「これは……」
そうしてできたのは、いかにも人間らしい姿となった勇者くんたち。何かしら特徴のある見た目だったけど、これなら一般人として生活できるでしょ。
我ながら良い仕事したぜ! あっはっは!
「これから君たちは私の世界に来てもらうよ。そこで一般人として生活するといい。魔法の力はそのままだから、十分生活できるでしょ」
この世界に置いていくのはさすがにないかなって思うからね。ないとは思うけど、また何か企んだりしたら不愉快だから。監視っぽく私の世界に置いておく。
それに、だ。
「英雄としてではなく、ただの人として、あの世界を見てみるといい。きっといろいろと変わるものもあるだろうさ」
「シオンさん……。ありがとう」
勇者くんが頭を下げてくる。その隣には寄り添うようにキャスティアが。そして彼らの後ろでは、リッパーとメルトも頭を下げていた。
「あっはっは。お礼を言われることはしてないよ。取引の結果だからね」
かなり甘い対応をしてしまったと思うけど、クソ虫の世界で一暴れできてストレス発散できたからね。これでいいのだ。
「当然このお城も引き払ってもらうからね。また迎えに来るから荷物の整理をしておくといい。約束通り、このお城はもらうからね」
そう。彼らとの追加の取引だ。追加の取引というか、勇者くんの傷を治してあげた分をもらった感じだね。後出しの取引だったけど、快く譲ってもらえることになった。
勇者くんは、かつての聖女ちゃんが隣にいたと知って、いろいろと憑きものが落ちたらしい。勝手なものだねえ。私はどうでもいいけれど。
「ティアフレイムたちにもよろしく伝えてください」
キャスティアの言葉に、私はにっこり笑った。
「対価は?」
「これにも必要なんですか!?」
「強欲すぎるぞテメエ!」
メルトまで言ってくる。そこまで言う?
「あっはっは。冗談だよ。それぐらいなら伝えてあげるさ」
それじゃあまた後で、と私はその場から転移した。
アルバイトに精を出しています。魔法でお皿をぴかぴかよー。
「いやあ、悪いねシオンさん。君がいてくれると洗い物が楽なんだ」
「あっはっは。お金がもらえるならね、これぐらいやるよ」
「そうかい? じゃあ、そこの食器も綺麗にしておいてもらえるかな」
「喜んでー!」
私は一従業員なのだ。ふっ、魔女といえどお金の前には膝を折るしかないのさ……。
やはり金! 金は全てを解決する!
そうして軽く働いてから、私は明菜ちゃんとお話しすることになった。喫茶店の隅っこのテーブルでぐったりしている明菜ちゃんと静香ちゃん。いろいろ大変だったらしい。
「し、ししょう……」
「つかれ、た……」
「よしよし。がんばったね」
うん。本当に頑張ったよ。
あの戦いからすでに一ヶ月。もう勇者くんたちも私の世界に転移させた後。ようやく明菜ちゃんたちは落ち着いたようだった。
すごく大変そうだったよ。あちこちから問い合わせとか偉い人との話し合いとかあったみたいだから。
でも、さすがはニチアサというか、わりとゆるゆるだった気もする。私がいた地球なら、一ヶ月程度で落ち着かなかったと思うよ。まだ子供だからって解放なんてされなかったと思う。魔法なんて未知の技術が目の前にあるんだから。
でも、これぐらいでいいと思う。あまりしつこいようだったら、私がまた介入しないといけないところだったからね。
「さてさて。正義のヒーローさんは何のお話をしたいのかな?」
「う……。やめてください……」
「恥ずかしい……」
「やめられないかな! だっておもしろいから!」
結局変身ができるままになった二人だけど、怪人とかが出なくなった後にどうするのかなと思っていたら……。街のご当地ヒーローになっていた。いやヒロインか。どっちでもいいけど。
迷子を助けたり、川で溺れてる子犬を助けたり……。そんな活躍をしてる。
持っている力は大きいのにやっていることは小さいかもしれないけど、それでいいと思う。二人はまだ子供だからね。好きなようにするといい。
大人になった後、その大きな力をどうするのか。それは、未来のこの子たちが考えることだ。
今は子供らしく、ね。
「師匠?」
「なんで撫でるの?」
「かわいいからかなあ」
「え」
もう戦い方を教えたりはしてないけど……。それでもやっぱり、弟子の成長と未来を考えると、なんだかすごくかわいいと思えてしまう。
もしかすると、私もお師匠から同じように見られていたのかもね。そう思うとちょっと照れ臭い。
「あの、師匠、聞きたいことがあります」
私がしみじみとしていたら、明菜ちゃんがそう言ってきた。なんだろう?
「おん。なにかな?」
「師匠、もうすぐいなくなっちゃったりします? もうディザスターとの戦いは終わっちゃいましたけど……」
「え。いや、そんな予定はないけど」
「え?」
「え?」
え、なにそれ。むしろ逆に聞くけど、いなくなってほしいの? 邪魔なの?
「いない方がいいのかな?」
「ち、違います! そんなことないです!」
「もう戦い方を教えてくれることもなくなったし、来なくなるのかなって……」
あー……。なるほど。いや、これ以上はいいかなと思って教えるのをやめただけで、この世界に来るのをやめるつもりはないんだよね。理由は単純だよ。
「美味しいものが多いのに来るのをやめるなんてあると思う? いいや、ないね! 何のためにアルバイトをしているのかと!」
「あー……」
「納得、した。師匠らしい」
「あっはっは!」
褒め言葉として受け取っておこう!
最近の近況を聞きながらケーキを食べて談笑していたら、ふと二人が顔を上げた。何か、困っている気配を受けた反応だ。変な方向の魔法が磨かれてるのは気のせいかな?
「師匠……」
「おん。行ってらっしゃい。ここにいてあげるから」
「はい!」
そうして駆けていく二人。私はそれを見送って、なんだか頬を緩めてしまう。
さて……。二人には言わなかったけど、私がこの世界にまだ来ているのには、理由がある。
ニチアサヒロインの王道。それは二期! さらなる敵の追加! これだよねやっぱり!
そんな敵の登場にほんのり期待しつつ、私は今日もこの世界に通うのだ。
まあ、それに。私はまだまだ長く生きることになるから。あの子たちの生を見届けてあげようと、そう思う。なんだかんだとかわいくなった弟子だからね。
そのついでに、私はこのニチアサ世界を気まぐれに観光させてもらうよ。魔女らしく、ね。
了
本作はこれにて完結です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もしかするとこの世界には新しい敵が現れて、第二期なんて始まっちゃうかもしれませんが……。
シオンはハッピーエンド後に登場キャラが不幸になる続編を蛇蝎のごとく嫌う性格だったりします。
きっとほどほどに楽しんで、しっちゃかめっちゃかにして、ヒャッハーすることでしょう。
…………。あれ? 心配しかないぞ?
最後に感想や評価などいただけると嬉しいのです。
次回作の励みになりますので、是非是非よろしくお願い致します。
ちなみに次は、百鬼夜行の主をしている座敷童ちゃんのお話……に、なるかな……?
またどこかで見かけたら、よろしくお願い致します。
改めて、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた……。




