「あいつ」がいるなら「こいつ」もいるよね!
「よっし、次はサウナだ!」
「はい!」
「わたしは……遠慮しておく……」
静香ちゃんはあまりサウナが好きではないらしい。仕方ないので明菜ちゃんと二人でサウナに入る。じっくり入って、そして水風呂、休憩……。
「サウナ……いいよね……」
「とてもいいです……」
この不思議な感覚がとても好きです。
サウナで満足した明菜ちゃんと、のぼせそうになってる静香ちゃんが去っていくのを見送って、私は露天風呂に向かった。
外の空気はほんのりひんやりとしていて、温まった体に気持ちいい。露天風呂に入って空を見上げれば、いつの間にか赤く染まり始めた空が視界に広がった。
夕焼け。どこの世界でも、綺麗だと思う。本当に。
そうしてのんびり眺めていたら、誰かが露天風呂に入ってきた。他にお客様がいるのは当然だから、誰かが入ってくるのは別に気にしないんだけど……。今入ってきた人だけは別だ。
露天風呂に入ってきたのは、タオルで体を包んだ銀髪の美人さん。髪色についてはこの世界ではわりと珍しくなかったりするけど、でもこの世界の人とは決定的に違うものがある。
魔力。とても強い魔力を持っている人だった。
「失礼しま……」
そしてその女性は、私を見て大きく目を見開いた。
「おん。そんなにびっくりしてどうしたのかな?」
「あ、いえ……。申し訳ありません。綺麗な人だったので、驚いてしまっただけです」
「あっはっは。君が言うとわりと嫌味に聞こえると思うよ」
「そうでしょうか?」
「そうでしょうとも」
んふふ。もしかしなくても、私が気づいてないと思ってるんだろうね。あの時、私がディザスターに会いに行った時には、直接顔は合わせていなかったから。
けれど、私は知ってるよ。
「ディザスターは元気?」
「……っ!」
女性が息を呑み、その手に杖を呼び出して構えて……。
「くぁぁ……」
私のあくびを見て、一瞬だけ困惑した表情をしてから杖をしまった。
「今日はオフ、ということでしょうか?」
「おん? オフも何も、私は君たちと敵対しているつもりはないよ?」
「よく言いますね……。ティアフレイムたちに修行をつけているでしょう」
「仕事を紹介してもらったからね。その対価ってやつですよ」
「対価、ですか」
「私自身は手を出してないでしょ? そういうことだよ」
確かにあの子たちの実力はかなり底上げされたと思う。今なら幹部と戦っても、ある程度はまともにやりあえるんじゃないかな。
けれど、そこまでだ。私が直接戦うことはない。私に剣を向けない限りは、ね。
「そう、ですか……。今はそれで納得しておきましょう」
「あっはっは。そうしてほしいね」
納得されなくてもいいんだけどね。襲われたらそれこそ開き直って片っ端からぶちのめすだけだし。
今も私はのんびりと赤い空を眺めているんだけど、女性は私の顔をじっと見てる。私の顔に何かついてるのかな。照れちゃうよ。なんて。
まあ、理由は分かってるけど。
「あなたは……」
「おん?」
「あなたの世界では……その……どう、でしたか?」
「すさまじく抽象的な質問だね」
どうって何がどうなのか。何を聞きたいのかそれだけだと分からないよ。
でも……。ふむ。
「最初は本当にクソだなと思ったけど……。今となっては、まあまあ楽しめてるよ」
「そう、ですか……」
女性は少し考えるような素振りを見せていたけど、やがて何も言わずに首を振った。そのまま立ち上がって、出口へと向かう。
「もういいの?」
「はい。ああ、ですが、そうですね……。では、これだけ」
女性はそう言うと、私へと振り返った。
「ありがとうございます。救われた気分です」
「おん?」
「いえ……。お気になさらずに」
救われた、ね……。この人がそう思えたのなら、出会えて良かったのかもしれないね。
「それでは、またお会いしましょう。シオン様」
「はいはい。またね、名無しの女性さん」
「…………」
ぴたり、と女性が動きを止めて。
「キャスティア、といいます」
「あっはっは。キャスティアさんね。りょーかい」
名無しの女性改めキャスティアさんは、小さくため息をついて今度こそ立ち去っていった。
さて。さてさて。
「やっぱりあの人だったかあ……」
元勇者くんがいるんだから可能性はあると思っていたけど……。でも、まさか本当にいるとは思わなかったかな。どんな確率だよと言いたい。
あの人、私の世界の聖女さんだ。勇者くんと結ばれた、と風の噂で聞いたことがあったし、勇者くん含めてちゃんと生きて亡くなったはず。二人そろってこっちの世界に転生してるなんてね。
本当に……。不思議なこともあるものだよ。
それにしても。それにしても、だ。
「なあんであいつらまでこっちにいるんですかねえ」
どうやらディザスター一味がこの旅館に泊まってるみたいなんだよね。なんでだよと言いたい。誤解されないように言うと、あいつらに関しては本当に何もしてないから。
これは、あれか? ニチアサ的なお約束ってやつですか!? 旅行先で敵組織と巡り合って、そこでも戦う! 劇場版みたい! いい! とてもいいよ!
「んふふ。楽しみだなあ」
何かあるとすれば……夜、かな? とても! 楽しみ!
壁|w・)聖女さんもいるよ!




