46話 演説? 何それ。
ングス エンシェントドラゴン
?歳 ♂
HP 911
MP 711
力 741
体力 858
器用 701
敏捷 722
魔力 751
魔防 799
【スキルの鑑定はキャンセルしました】
うわー凄まじい、全ステータスが700超えちゃってる。間違いなく地上でもトップクラスの能力値なのだろう。
それすら凌駕するお兄様とランキスさんも大概だけど。
満足した私の様子を窺って、ングスさんは今度こそグースカと眠りについた。怒らせたんじゃなくて良かった。
「度胸あるわね」
リリファさんに関心されてしまった、ううむ。
ステータス鑑定させて下さいって、なんと考えなしだったろうか。つい数分前の私って突拍子もないアイデアに振り回されてたんだなーって他人事?
まぁともかく。何事も無かったんだしいいか。
朝食は柔らかいパンと野菜たっぷりのスープにベーコンサラダだ。
リリファさんってスープ好きなんだよね。最近は食事を共にする機会も増えてきててるけど、ほぼ必ず野菜スープが一品添えられてるのだ。エルフって森に棲む種族だし納得かな。
「スープは母が好きだったのよ」
……失礼なこと聞いちゃった。
確かリリファさんの家族は奴隷狩りの被害に遭ったのだった。
「台所で色んなレシピを教えてくれて。……アリスどうしたの?」
言葉に詰まっちゃう。だって追及しちゃいけない話題だし。スープを一口啜る。
温かい。仄かな甘み。コショウとかはあんまり入ってなさそう。
……自分の母はどんなのが好きだったろうか。
そういえば血の繋がった家族は、もうお兄様しか生きてない。
実感が湧かないのは私が薄情、だからなの、かな。
テントの解体は、ほぼほぼ完了。あとはリュックを背負って屋敷に帰るだけ。
なんか一泊二日のキャンプ旅行みたいだったな。ただ一緒にいただけだし。
荷物を背負ってランキスさんを掴んでるんだけど、お兄様とリリファさんが一悶着してる。なんでもテレポートを習得したいらしい。
「ランキス、空間移動のやり方を俺にも教えてくれ。俺だって常にアリスと性的な意味で、性的な意味で密着していたいんだ!」
「畏れながらランキス様、一介の奴隷に過ぎない私にも是非、是非ご教授を、アリスの股間を撫でたいんです、是非、是非!」
「お前らホントに青春を謳歌してるよな」
でまあ、みんなでランキスさんの服の袖を掴んだけど。ングスさんは拒否したのだった。
『必要ない』
ングスさんは体長のわりに小さめな翼をはためかせフワリと舞った。
1mほどプカプカ浮かんで、薄い皮膜がしっかり風を掴んでる。手垢の付いた表現だけど、まるで重力を感じさせない優雅な離陸っぷりだ。
「ちょい待ち」
ランキスさんが制した。視線の先の、ングスさんの足首には深い古傷があった。
ずいぶん生々しい、おそらく逃走防止のために切断されたのが再生しかけてるのだろう。人間って酷だよね。
「見目麗しくないな」
一言ポツリとランキスさんは呟いて、手を当てて数秒。影も形も無くなった。色んな特殊能力持ってるなあ。
『すまんな』
「これから演説する偉大なるエンシェントドラゴンが怪我してちゃダセーじゃん」
演説? 何それ。
その後は行きと同じで、どっかの殺人鬼みたいなワープ連打を繰り返して、あっという間に帰宅してしまう。庭の花壇を手入れしてるウェルザーさんが穏やかに出迎えてくれた。
「初めましてングスさん、話は伺っております。ヒト用の狭苦しい屋敷ですが、自身の住処だと思ってどうぞ寛いで下さい」
「オランタ姉さん!」
リリファさんがなんだか嬉しそうに見えなくもない、いつもの無表情だけど。
そういえば傭兵団に所属してる人で、そんな名前の女性と友達だよみたいな話を聞いたような。でも女性が見当たらないな。
ん?
なんかやけに目立つ格好の男性が約1名いらっしゃる。洋服の着こなしとか仕草とかが妙に女性っぽい。
まさか、あの青年がリリファさんの言ってたオランタ姉、さん!?
「キャーリリファちゃん久しぶり。また成長したんじゃないかしら」
……まさかのオネエさん。そっかー、外見と中身の性別が一致してないタイプの方なのかー。
ちょこっと観察。紛れもなくイケメンの部類に属する整った顔立ちしてる。身長は175くらいで、赤銅色のストレートをポニーにしていた。
それからとっても綺麗な肌してる。丁寧に手入れしてるんだろうな。
ピアスとか髪飾り、ブレスレットなんかのアクセサリを目一杯に装飾してるんだけど、それらがやけに似合ってる。センスの天才みたいな、女性よりも女子してるヒトみたいな印象だ。
「貴女が噂のアリスちゃんかしらー? 聞いてたよりずっと可愛いわね!」
オランタさんって女言葉がとっても似合う、それにとっても社交的な感じ。握手するみたいな感じに手を伸ばしてくるやいなや、ぐっと引き寄せられて、わぁ予想通り積極的だあ。
ぎゅーっとハグされた。淡く甘いのは香水だろうか。くどくなくて、なんだか嗅いでると獣人の私でもリラックスできちゃう。
「これから宜しくね、アリスちゃん。そうだ! とっても可愛い洋服屋さんを見つけちゃったのー、一緒にデートしましょ」
可愛い洋服屋さんかー、獣人仲間のナルシュ君のお店かな。
「店主がアタシ好みのダンディーな方なのよね。今度逆ナンしちゃおうかしら、ウフフ!」
ナルシュ君の御主人様逃げてー全力で逃げてー!
……傭兵団って色物しか入れないって制約でもあるのだろうか? 勿論お兄様は別として。
リリファさんもハグされてたけどいつもの無表情。これはこれで相性が良いと言えなくも、ないのかなあ?




