元凶の元へ
またまた翌日の放課後
「アルバイト?」
「ああ、結局、捕まえた二人はいわゆる貧乏学生である大学の教授にバイトとして雇われたんだと。」
「なんでそんな事を?」
「理由までは知らなかった。ただなにかの実験に使うんだろう、と本人達は思ってるみたいだ。」
「そんな・・・。」
「・・・捕まえた二人はどうしたの?」
「学生証をコピーして放置。」
10分くらいで目を覚ますはずだから風邪とかはひかないだろう。
「なんで警察に突き出さなかったのよ!!」
「落ち着け空野。証拠もないし、事件にもなっていない。下手したら二人に暴行したってこっちが捕まるかもしれん。仮に二人が捕まってもトカゲの尻尾きり、根本的には解決せん。
それにあんまり言いたくないが、二人とも貧困状況は結構ひどいモンだった。これで前科付きになったらもっとヤバイ仕事に就きかねない。」
「だからって動物達の命が懸かってるのよ!!許される事じゃないでしょ!!」
「んんー?じゃあ空野は動物達の命を助けるためなら人間二人くらいは犠牲になってもいいっての?」
「そ、それは・・・」
「勘違いするなよ空野。俺は動物達か人間二人かどっちか選べって言ってるわけじゃないし、正義だの倫理だの法律だのを議論するつもりも無い。
俺が個人的に気に入らないってだけだ。んで賢治。この教授ってわかったのか?」
「あ、うん。XX大学の教授だね。生徒からも教授仲間からも人気が無いみたい。薬学が専攻らしいんだけど、やばいクスリを作ってるって噂もあるみたいだよ。」
「クスリか・・・大体見えてしまったな。ああ、神埼、空野、それに賢治。
先日言った話は撤回する。」
「先日の話?」
「USBメモリ型万能ツールを悪用しないって話。
時と場合と俺の独断と偏見と独善により悪用しないでもない、といい改める。」
「・・・なにその回りくどい言い方。」
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というわけでやって参りました、XX大学。なお今回は俺一人で行動中です。なんせ現在深夜0時ジャストなので。善良の高校生は帰って勉強していてもらいましょう。俺?俺は真夜中に大学に忍び込むアレだから、ね。
まあ冗談はともかく深夜で人がいない、と思ったがまばらに人がいる。こんな時間まで残ってるとは大学生も大変らしい。おまけに敷地が広い。広い中に何のためにあるか判らん建物がちらほら。例の二人の記憶によると、大学の一番奥にある建物に動物達を運び込んでいたらしい。例の教授の研究室もそこにあるらしい。
ここで問題だが例の教授が何を研究しているかわからない、ということだ。勿論、本来はそんな事ありえない。しかし実際に誰に聞いても明確な答えが返ってこない。大学に問い合わせても同様。なぜそんな教授が在籍しているのかも同様。つまり大学全体でタブーになっていると言ったところだろうか。
まあ、判りやすい舞台ですこと。問題は何をやっているか、だが。
<TRANSPARENCE! 幻想現出!>
透明化して建物に潜入する。・・・監視カメラがあったらホラー映像だな。ひとりでに扉が開いて閉まるんだから。まあ、そんなことは気にも留めず建物の中を探索する。建物は二階建てで一階には教室のような机と椅子の並んだ部屋が三つ。人はいない。というかどう見ても使われている様子が無い。部屋の中がほこりだらけだ。
二階に上がる。相変らず人気がない。そして明かりも点いていない。二階も一階同様、部屋が三つあるだけだ。教材らしき物や紙束、ダンボールが山済みにされていてやはりほこりに被れている。どう見ても人がいるようには見えない。それどころかもう何年も人の手が入っていない廃墟のようだ。
人がいないのはともかく連れて来られた動物達までいないのはどういうことだ?この建物に運び込まれたのは間違いないのに。一階、二階に無いのであればあとは屋根裏部屋か・・・地下室か。
再び一階まで降りてきた後、ガジャットを地面に刺す。
<ANALYSIS! 幻想現出!>
一階の地面を解析していく。地下への扉を見つけるために。そして見つけたのが・・・建物の端っこにある・・・女子トイレだった。・・・ちなみに教授は男性だったはずだ。
いやーな感じだが、仕方がないと個室を一個一個確認する。と一番奥の使用禁止と書かれた個室の中に便器ではなく地下へと通じる梯子があった。うーん確かにこれは見つけられないかもしれないかもしれないけどもうちょっとどうにかならなかったんだろうか?
心の中で愚痴りつつ慎重に梯子を降りていく。しかし、これ個人で作れる施設なのか?年季がいってるがそれなりにしっかりした設備に見える。やはり大学もグルなのか?しかし例の教授をかばうような素振りも切り捨てるような素振りもなかったと賢治から聞いている。
おかしいと言えばあのアルバイトの二人もだ。二人の記憶を見る限り大学のアルバイト紹介の掲示板を見て希望したらしいが、どうしてこんな怪しいアルバイトを引き受けた?空野には黙っていたが二人はかなり真面目で苦学生ながらも奨学金をもらって頑張っていた。なのにこんな怪しい建物にいる怪しい教授の怪しいバイト、もとい犯罪行為を引き受けるはずがない。
この下にいるのは予想以上に厄介な物かもしれない。と思っていたら下に着いた。20メートルは降りたんじゃないだろうか。降りた先には扉がある。それはいい。問題は扉に描かれている物だ。
血のように赤い『なにか』で描かれているのはどう見ても・・・『魔法陣』だった。