第九話
~2100年4月9日7:30 NPOC US1層~
「結局戻ってきてしまいましたね」
「そうだな…悪いな明衣。高等部も案内するとか言っておきながら結局案内できなかったし、また長い道歩かせちゃったし…」
「いえいえ、そんな貴文君が謝る事てはないですよ!今回のはシステムが全部ダウンしちゃって、それで引き返してきただけてすから。貴文君が悪い事なんて一つもないてすよ」
…。天使か、いや女神か…。なんなんだこの聖母のように全てを包み込むようなエンジェルは…、まてここは本当に下界か?もしかしたらもう天界にいるんじゃないか?
「貴文君?なんだかこわいてすよ?」
「えっ…?あぁー悪い。ちょっと考え事してた(←嘘ではない)」
「そ…そうてすか?ならいいんてすが…」
「たぁかぁーくぅーん!」
ひゅぅぅぅぅぅぅーう…どん。なんだかものすごい速さで現世に連れ戻された。嫌だ!まだ夢を見ていたいの、てか一生夢見ていたい…なんでもいいから私を天界に戻してー!
「おはよう貴君…と誰?」
「えぇーっと貴文君、こちらは…?」
おいおい流石の女神様でもなんでも包み込んでくれる聖母様でも引いてるぞ。
「こいつは幼馴染の西郷優芽で、優芽、こちらは一ノ瀬明衣さんだ」
「えぇーと西郷さん?はじめまして、昨日転校してきました一ノ瀬明衣てす」
「あぁ!思い出した、昨日入学式の時挨拶してた…えぇーと初めまして、西郷優芽です。私のことは優芽って呼んでくれていいよ」
「えぇーえ、そんな私ごときが恩着せがましい…私には西郷さんと呼ばしていただくだけで充分ですよ…」
「そんなこと言わないの明衣ちゃん!」
「明衣…ちゃん?」
「そう、私は明衣ちゃんの事明衣ちゃんって呼ぶから、ね?ほら遠慮しないで、私の事も優芽って呼んでよ」
「は…はい…じゃあ西郷さん」
「優芽」
「西郷ちゃん」
「優芽」
「優芽さん」
「優芽」
「うぅーう…優芽ちゃん」
「優芽」
「うぅーう…もう勘弁してください…」
「おーい優芽、お前もさっきから明衣の事「明衣ちゃん」って呼んでるだろー。もう優芽ちゃんで勘弁してやれよ」
「言われてみれば確かに…ごめんね明衣ちゃん、優芽ちゃんでいいよ」
「ほっ…、分かりました、改めてよろしくお願いします優芽ちゃん」
「こちらこそよろしくね明衣ちゃん」
良かった良かった…。やっぱり仲良くしてくれてるとうれしいよー。
「そうだ、ねぇ貴君どこ行ってたの!寝てたらサイレンが鳴りだして、非常事態とか言いだして、怖いから貴君の部屋行ったら居ないし…」
か…可愛い…うろたえている優芽にはドキッとしちゃうなぁー…
「で、貴君?なんで明衣ちゃんと一緒に、こんな朝っぱらから公園にいたのか説明してもらいましょうかね」
「へっ…」
前言撤回します。こ…怖いよ…なんで優芽さん怒ってるの?貴文、バカだからわかんない!
「今むかつくキャラでごたごた言ってるでしょ。そんな暇があるなら、私の機嫌の一つでも取りなさい!」
「ひぃえぇー、お…お助けー!」
「あわわわわ…ゆ、優芽ちゃん待ってください。貴文君は私に高等部までの行き方と高等部の校舎案内をしてくれようとしていたんてす。ても駅でシステムトラブルがあって戻ってきて…だから貴文君は悪くないんてすよ」
「そうなの?」
「ひあ…はい…その通りでございます」
「じゃあ初めからそういえばいいじゃん、ねっ、明衣ちゃん?」
「そ…そうてすね…」
おっかねぇー…今後怒らせないように努力しないとな。
ピンポンパンポーン「こちらはNPOC司令部です。只今より西郷統括学園長より緊急の放送があります」
「お父さんから…?」
「緊急って言うから多分今回のシステムダウンについての説明だろ」
「そ…そうだよね」
「えっ?優芽ちゃんのお父様って統括学園長さんなんですか?」
「あっ、そうか、明衣は知らないんだよな。優芽はNPOC統括学園長の娘だよ。まぁ明衣がえっ…って言いたいのも分かる。だってこいつ見てたらそんな風には思わないよな。まさか統括学園長の娘だなんてな」
「ちょっと、どういう意味ですかね」
「ひっ、ほらほら放送始まるぞ静かに」
「逃げるな!」
「NPOCの生徒、教職員の皆、おはよう。統括学園長の西郷だ。先ほどシステム管理課からあったように現在NPOCサーバーがダウンしたため全てのシステムの機能が停止している。これは防衛システム含めだ。非常に言いにくいのだが、今NPOCは無防備な状態、つまり『どうぞ狙ってください』と言っているようなものだ。この状態では皆の生活に影響が出るのはもちろんの事、安全も保障できないと判断した。よってここに非常事態を宣言したいと思う」
「えっ…」
「おっ…おい…マジかよ」
「皆が驚きや不安を抱いてるのは重々察する。だが安心してほしい。我々NPOC司令部は皆の安全を精いっぱい守り、保証する。本日から全教育機関は閉鎖とし、危険防止措置として、SS層への立ち入りを制限する。また生徒諸君の移動はUS1層だけに制限させてほしい。不便や不満に思うかもしれないが君たちの安全を守るための非常措置だ、どうか理解して協力してほしい。またこれからの対応については先ほど発足した非常事態対策品部が主体となって動いていく。私からは以上だ」
「た…貴君…大丈夫なの?」
「少し怖いてすね…」
「おいおい、大事になってきたじゃねぇかよ」