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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第一章 獣人国編
25/114

25 国の未来

魔神と言うだけあって強い、飄々としているが隙がない。

そんなことを五十鈴が考えていると、うなり声が響く


「グルルルルッ」


銀月が魔神を見詰めながら殺気を出している。


「ん? あ、君って確かあの森の奴だね? 鬼さんは居ないんだ。あの時行ったのは僕じゃないからなぁ。でも、あの一族とは遊ばしてもらったよ?」


なんの話かわからないが、確か銀月は魔神に会ったことがあると言っていた。それと関係があるのかもしれない


「主様に近付くなっ!」


グルルっと唸りながらそう言う


「無理かな。だって僕、主ちゃんの事気に入っちゃったもん」


銀月が飛び掛かろうとするのを五十鈴が止める


「止まりなさい! 銀月!」


五十鈴の言葉にしっかりと止まった、理性は飛んでいないようだ


「ちゃんと飼い慣らされてるんだー。」


「飼い慣らしてる訳じゃありません、銀月は仲間であり家族です」


「ふーん。家族、家族かぁ。ふふっ、そうだった。主ちゃんにプレゼントがあるんだ! 神聖だって言う翼も混ぜた特製品! でも、特に何も変わらなかったから失敗だったよ」


そう言ってパチンっと、指パッチンをすると五十鈴のすぐ側に黒い鎧の騎士が現れた。


「取れたとこはくっつけたんだ、楽しんでよ!

そうだ、言い忘れてたけど、あのチモ茶、すっごく苦くて嫌いだけど主ちゃんの国の緑茶は気に入っちゃった。

もっと飲んどくんだったなぁ」


チモ茶の所だけ、うえっとした動きをした彼。緑茶を気に入ってたのはほんとだったらしい。


「ほんとはもっと主ちゃんといたいけど、このままここにいても詰まんないし」


またね! 主ちゃん、そう言って立ち去る彼を追おうとしたが、黒い鎧の騎士が持っていた漆黒の剣を五十鈴に叩き込んで来た。


ガキンッ


「くっ、逃げられました!」


ぐっと、その剣を押し返す五十鈴。そのまま鎧に蹴りをいれたが


「堅いっ」


一切壊れる様子がない。黒い鎧の騎士は五十鈴に容赦なく攻撃を仕掛けてくる、重そうな鎧姿なのに動きが素早い


「全然壊れませんっナビ!」


すかさずナビを呼んだ五十鈴


《はい。あの鎧は特殊なもので出来ています。五十鈴様の物理攻撃が受け流されているようです。》


厄介だ……、なら一点に集中すれば


《壊れるかもしれません》


なら、やるしかありませんね

足だけに力を込めて、一点にありったけを……


「とりあえず顔を見させてもらいますよっ」


地面に叩き付けられる重そうな剣。その上に足をつけ、そのまま相手の顔の鎧を蹴りつける


鎧ピシピシと日々か入り、割れる。中にいたのは


「とう、ちゃん?」


「え?」


コンの言葉に反応が遅れた五十鈴は、そのまま投げ飛ばされる


今、コンは何て言った……


まて、魔神の彼はなんと言っていた?



〝取れたとこはくっつけたんだ、楽しんでよ! 〟



「そう言う事ですかっ……」


五十鈴は自分の中で怒りがわくのがわかった。


鎧の中から現れたのは、額に黒い石のようなものを埋め込まれたコンの父、リド


「父ちゃんが、なんで」


呆然と父の姿を見るコン。

五十鈴に攻撃を仕掛け続けるリド、金属と金属がぶつかり合う音だけが響いている


「コン! しっかり現実を見てください!」


五十鈴声にコンは思い出した。そうだ父は死んだ、じゃああれは


「五十鈴はん! 父ちゃんを父ちゃんをあの魔神から解放してやっ」


「もちろんですっ!」


弱点があるとすればあの黒い石だろう、叩き割るしかない


迫ってきた剣を受け流し、そのまま地を蹴りリドの額に膝蹴りを叩き付ける。

パキンッと、額の石が割れる音と共に後ろに倒れる身体


「父ちゃん」


その姿を見てコンが近寄ってきた


「……コン」


小さい声だが確かにリドが喋った。コンは驚きだろうか、目を見開いている

死んでもまだ、彼の意識は残っていたのだろう


「ちゃんと、見付けられたじゃないか」


リドはそう言って笑うと鎧だけを残してサラサラッと砂になるように消えていった。


それをまた眉に力を入れて見ているコンの肩に手を置き五十鈴は口を開く。

魔神はいなくなった、でもまだ終わってない


「あなた方は、コン達一家が死ねばこの国はもっと良い国になると言いましたよね。」


魔神のせいだとは言わせない。全てを魔神のせいにしてこの件を片付けても何も変わらない


「泣きたいものが泣けない国が良い国ですか!

いっつも眉に力入れて、泣くのを我慢して。だれも彼等の本質を見ない!

助けても言えない! 信じることもできない!

彼らがいなくなってもこの国が良い方向に変わる事なんて何一つない!


あなた達は何を見ているんですか!」


五十鈴の言葉にコン一家を邪険にしていたものや獣人達は目をそらしている。その顔は戸惑いや後悔、様々な感情を混ぜたような表情だ


五十鈴がまた口を開こうとすると、五十鈴の背をポンッとたたかれた。


「五十鈴君、ありがとう」


レオパルドが五十鈴にそう言って前に出た。


「君達、五十鈴の言葉を聞いたね。たしかにこの国は良い国ではないだろう。様々な問題だらけだ。

でも、良い国にすることはできる。

その機会を私達はもらったんだよ、だからこそ一緒に変えていこうこの国を。

誰もが良い国だと言える国を」


君たちと一緒に作りたいんだよ、そう優しく言う自身達の主を見て獣人達は胸に込み上げてくる気持ちを押さえられなかった。

彼が主になったときと同じ言葉。


〝良い国を作っていこう 共に〟


過去に見た主の姿、俺達は私達は何を見ていたんだろうか。

主と共に歩んでいきたくて経理課に入って必死に仕事してたのに、いつからこうなったんだろうか……


五十鈴の言葉は確実に獣人達の心を動かした。

そんな獣人達をみてレオパルドは笑みを浮かべる


きっとこの国はかわるだろう、この少女のおかげで……





改ざんや横流し等を行っていたもの達は自分から申告してきた。

経理課以外でも色々と申告があったようで大忙しだ。

でも皆スッキリした顔をしている。

元々獣人達は素直な種族だ、嘘などは好まないのだろう。

魔神がこの国に長くいたために少しの影響があったのかもしれない




先程まで騒がしかった処刑場は静かになり、五十鈴とコンの二人だけになっている

銀月やコンの家族はゴリラの休憩所に先にいってるらしい。


「ガッツさんやクウさんが持ってきたものを確認するのに、この前弱肉強食大会に出てた人とか、ここ数日私と一緒にいるのを見てた人達はコンは良い奴だからやるはずないって言って、手伝ってくれたんですよ。


大人たちから言われてコンに近付かなかったものとかが多かったみたいで、この国もなんとかなるとおもいます。本質をしっかり見れる獣人も沢山いるみたいですから」


嬉しそうにコンに話す五十鈴を見て、コンはゆっくりと五十鈴に抱きついた


「コン?」


「わいの父ちゃんは人殺しやなかった……」


「はい」


「わいもわいの家族も生きてる」


「はい」


「五十鈴はんっ」


「はい」


「助けてくれて、ありがとうっ」


わいを五十鈴はんの仲間に家族にしてやっ



ずっと、長年我慢していた涙をぼろぼろ流しながら言うコンを抱き締めながら五十鈴は安心したように笑った



「もう、家族だよ」



やっと泣けたね、コン





辛いなら泣いて良いんです。



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