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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第一章 獣人国編
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24 真相とは


「やっと呼んでくれましたね、コン」



コンは目を見開き目の前の人物を見た。

振り下ろされた剣の刃を二本の指で受け止めている


「いすず、はん?」


「助けに来ましたよ」


確認するように呼ばれたその声に笑みを向け剣を持った獣人を蹴り飛ばす。

凄い早さで吹き飛んだ獣人など少しも気にせずコンの手足のロープをほどく


「銀月、コンの家族をお願いします」


「はい!」


突然の乱入に獣人達が騒ぎだす。


「五十鈴くん、何をしに来たんだい? 処刑の邪魔などして」


ローブを着たレオパルドが言った。


「色々と真相を喋りに来ただけですよ」


「真相だと?」


「ええ、真相とこの国の経理課問題について」


五十鈴の言葉に色々な声が飛び交う、五十鈴がコンを庇ったことでコンに対する罵倒なども聞こえてきた。


「少し黙っててくれませんか、不愉快です」


ギロリと騒がしい獣人達を睨み付けた五十鈴に、ピタリと静かになる


「とりあえず経理課の問題から」


そう五十鈴が言うと何人かの獣人がビクリと震えた


「この国は様々な国からあらゆる商品を受けとり、それを他国に買ってもらう。それが仕事ですから金額に問題があるのはあってはならないことです。


でも、相手の国が指定した金額と買うときの値段が違うんですよね」


五十鈴は獣人達に目を向けながら笑顔で喋っていく。


「私はつい最近、酢という物を買ったのですが。

この商品は在庫があり余っていて困っているもの、これを売ってる国自体も酢の使い方がわからなくて困っていた。なのに、塩よりも異様に高かったんですよ?

なんかおかしいなーっと思って調べたら、改ざんした形跡があるんですから驚きです。」


五十鈴がそこまで言うと、焦ったような声が返ってきた


「しょ、証拠がないじゃないか! そういうものは全て経理課にあるものだろ! 忍び込んだのか!?」


経理課に証拠があるって自白しているようなものだ。ため息しか出ない


「そんなことしなくても調べれば良いだけですから、クウ!」


五十鈴の言葉と共にバサバサっと大量の羽ばたく音がして、空を見ると大量の配達係りが飛んでいる


「各国に値段を聞きに行ってもらいました。照らし合わせたら値段が違うものが結構あって驚きですよ。

あまり売れていない物や小さいものを改ざん、国一つでもけっこうな特産物や特産品がありますから。

他国全ての商品を見るとなると、見落としていてもおかしくありません。」


この国にはパソコンなんて便利なものはない、少ない人数でこれだけの物を見るのには無理がある。

しかも手書きだ、気づかなくてもおかしくない


「経理課内で改ざんしているものが多くいるのですから、報告されないのも頷けますよ。

高く売り付けた分のお金は自分の懐に入れていたのでしょう?」


にこにことそう言う五十鈴の言葉に青ざめる者達が沢山。

この国が潰れないのが不思議だ。


「それから横流し、経理課の者が納品したものを他国の者に売り付けましたね。

配達係りは手紙も届けてくれる、知り合ったのは納品物に紛れ込まされていた手紙。

相手の欲しいものを元の値段より安く売り付ける、納品物だから自分のお金は一切減らない。売れたお金は自分の物にしていましたね?

ああ、証拠ならもうすぐ届きますから」


五十鈴の言葉と共に一羽の配達係り


「ありがとうございます」


受け取ったのは布袋、みっちり入っている


「ああ、やっぱり」


中から出てきたのはチモ茶の入れものが大量に


「手紙も入ってますね。中身には、ビッシリとお茶の苦情が書いてあります。

他の国の者が飲んでも苦いだけですから、苦情も書きたくなりますよ。

納品物は獣人国でしか飲み食いしちゃいけないのに、なんでこれが他国から届けられたんでしょうか、ね?」


経理課で働いているであろう者達は真っ青である。

五十鈴はにこにこと笑いながら話を続けた


「この国が機能してるのが不思議ですよ、ほんとに。

次にコンのお父さんの事件について。

最初はルスホ副官は経理課の全件を握ってると聞いて、経理課内で改ざん等を行っているのはルスホ副官だと思ってたんです。

だから妹にバレたがために殺しそれをコンのお父さんに目撃され、この国の刷り込みを利用して自分自身で翼を千切ったのかと考えてたんですよ。

コンのお父さん、リドさんは徹夜ばかりするほどに経理課で仕事をしていた。

過労がたまっていたのにルスホさんのような体格の良い方に勝てないと思ったのがこの考えに至った理由ですけど。」


ここまで言い切り、でもっと話を続ける五十鈴


「色々調べてわかったのですよ。この国には鳥一族、それも背から翼の生えている一族の翼を斬ったり潰したり出きるものは誰一人として居ないんです。」


「どういうことや?」


コンが五十鈴を見ながら口を開いた。自分の父親のことだ、気になるのだろう


「ガッツさんにこの国の人達の握力や筋力様々な物を調べてもらったんです。一族の歴史なんかもね

鳥一族の翼は神聖なもの、あれは刷り込みじゃなく本当に神聖なものでした。

とてつもなく固く丈夫、この国にあの翼を手折れる者はいません。

特にコンのお父さん、リドさんの当時の筋力も握力もとても弱かった。

経理課で経理の仕事をしてばっかりだったのですから、筋力や握力どちらも鍛えられていません。

じゃあ誰がやったか? それはルスホ副官に聞くのが早いですよ」


五十鈴の言葉に皆の視線がルスホに向く


「でも、ほんとに貴方がルスホ副官なら、ですが」


その言葉と共にクツクツと笑いだすルスホ。


「こんなに改ざんや横流し、色々してるのに誰も気付かないんだから面白くて仕方なかったよ。でもまぁこの姿でいるのも飽きたし」


そう言うと彼の姿は鷹の姿から人へ。少年だろうか、顔は面をつけててわからない


「あなたのとなりのローブを着た人、レオパルドさんじゃないですよね? 声だけそっくりにしたみたいですけど。」


「ふふっ、あったりー」


彼はそう言ってローブを剥ぎ取る。

そこにいたのは瞳に光のない女性の鷹が一人、翼は生えていない。

それを見た獣人達が悲鳴をあげる。

ルスホ副官の妹のローズ様、そう聞こえた。


「そうだよー。僕ね、最初にこの子の翼がほしくて襲ったんだ。

神聖なものって言うから欲しいなって思って。

そしたらこの子の兄が庇うんだもんビックリ! いきなり出てきたから翼がばっさり切れちゃった。

欲しかったから好都合だったんだけどね、でもなんかムカついたから二人共殺しちゃったんだ。

そしたら彼のお父さんがその現場に来るんだもん笑っちゃうよね?


僕も暇だったからさー 何か楽しいこと無いかなっておもって、だからルスホ君の体をもらって彼のお父さんには人殺しになってもらったんだ。


この国って昔から改ざんとか横流しとかしててちょっと面白いと思ってて、ルスホ君って経理課の全件を握ってるでしょ?

だから他の皆に色々吹き込んだら皆やるんだもん面白いよね!

僕はそのままルスホ君になって色々しながら楽しんでたってわけだよ。

でも、飽きてきちゃったからまた翼を貰ってその狐君に罪を擦り付けてみたんだ。

ここの国の主さんには僕の正体がバレちゃったから主殿から出られないように道具をつけたんだけど、主ちゃんったら壊しちゃったんだね?」


彼の言葉と共に獣人達の間からレオパルドが現れた。


「お前は私を殺しはしなかったが、あの事件から私をあの主殿から出られなくした。

お前のことを話そうとしても喋れないようになっていたため、こんな長い年月がたってしまったよ。

五十鈴君が来なければこの獣人国は潰れていただろう」


「パルドさんと始めて会った日。副官を態々席からはずして話をしようなんて言うんですから、とりあえず副官に何かあるだろうとは思ってましたよ。

それに手紙を二日後に送ってきた時点でおかしいですし、主なのに外を歩いて視察もないし大会も見に来ない。

あまりにも主殿から出ないからおかしいと思って主殿に行ったら玄関にタックルしてるんですから、アメフトの練習かと思いましたよ」


綺麗なフォームのアメフトタックルだった


「外に出たかったのと腕につけられたあれを壊せないかと思ってね。

民が何の罪もないのに処刑だなんて、許せることじゃない。

彼の父親も助けられなかった。だから頑張っていたんだが、五十鈴くんが素手でバキッと壊ししまうんだから驚きだよ、でも助かったよ。やっと外に出れたのだから」


レトパルドの言葉に楽しそうに笑う彼


「ふふっ! あれを素手でこわしたのかい? やっぱり主ちゃんって面白いね。

でも、彼を操ってる道具はまだとってないんだね? 」


そう言って側にいるビスに手を伸ばすのを見て、五十鈴は地を蹴った


パキンッ


「わっ、凄い! けっこう距離があったのに! しかも的確に彼に付けてた道具も壊しちゃった!」


五十鈴はそのままビスを掴みレオパルドにぶん投げた


「レオパルドさん! 受け取ってください!」


素早く刀を構えて彼を見る


「ふふっ、僕と遊んでくれるの? 」


「貴方は何者ですか」


「気付いてるくせにー」


「さぁ、私の憶測でしかでしかありませんから」


「ふぅん」


彼はそう言うと五十鈴の腹を蹴り飛ばした


五十鈴は彼の蹴りに気付けなかった。

いつの間にか間合いを詰められ気付いたらお腹に痛みと衝撃がはしって吹き飛んでいたのだから

皆の五十鈴を呼ぶ声が聞こえたが気にしてられない


五十鈴はそのままコンの側に飛ばされ地に足をつけた。

お腹に手を当てながらも立っている五十鈴にコンが駆け寄ってきたが、蹴りの衝撃で返事ができない


「ゲホッ」


「あれ? 骨を折るつもりで蹴ったのに……。

やっぱり主ちゃんって凄いや! 〝魔神〟の蹴りを耐えられるなんて!」



魔神、五十鈴の憶測が当たっていたようだ。


本音を言えば、当たってほしくなかった事実だったのだが



やっと名前を呼べました



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