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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第一章 獣人国編
23/114

23 狐の追憶

わいは誰も信用せぇへん、そうやって生きてきた。

父ちゃんは主を信じて仕事して、なのに処刑されたんや。

そん時思ったん。ああ、やっぱり他人を信じても仕方あらへんって


この世界はこんな詰まらんくて、くだらん世界なんやなって。

わいは嫌われ者のままこの国で死んでいくんやって……


そう思ってた……はずやのに




出会うたお嬢はんは変なお嬢はんやった。


始めて()うたのは、わいが石を投げられてたとき。

助けてくれたんがお嬢はんやった。

石を片手で砕いたんは驚いた、今でも忘れられん


その後は無理矢理観光案内をさせられるし。

しかも手ぇ繋ぎながらや、久々に触れた温もりにソワソワしたのはしゃーない


色々見てまわってたらわいの父ちゃんの話になった。

わいら一家は父ちゃんが人殺し言われて嫌われとる。


でもわいは父ちゃんが人殺しなんてするわけないって、ずっと言ってるんやけどだーれも信じてくれへんかった。


だけどお嬢はんは違ったんや、父ちゃんが何をしたのか始めに調べよ言うてくれはった。

この獣人国に調べよ言うたもんなんて見たことあらへん。


案内が終わった最後にお嬢はんが、明日はゴリラの休憩所に集合言うて帰ってった。

わいは行かん言うて家に帰ったんやけど、弟妹(きょうだい)達に何か楽しそうやら嬉そうやら言われてしもーた。


その次の日はなんやかんやと言われた通りに行ってしもたし。

そしたら嬉しそうな顔して狐さんなんて呼ぶんやから力が抜けてしもて、かなわん


そのあと父ちゃんを知っとるガッツ言うゴリラ一族の奴に会うた。

父ちゃんに助けられた言うて感謝されたんや

ガッツは父ちゃんがやったことを絶対ありえん言うてくれた、こんなこと言うてくれる獣人がまだいたことに驚きや。


次に向かったんは配達係りの本部やった。

鳥一族には嫌われてるはずやったんやけど、前と態度が少し変わったみたいや。


そのあとわかったんは、殺されたのが鳥一族の者だってことやった。

わいの知らなかった事がこんなあっさり知れて、変な感じや。

そのあとも色々聞いて色々知った。

お嬢はんは証拠集めやなんや言うて色々やり始めたんや。


そんな風に毎日嬢ちゃんはわいに関わってきよった。

そんなある日、家に突然やって来るんやから驚きや。朝起きて部屋出たら居るんやから、困ったお人やろ?


しかもわいら家族に桜国の経理課になってくれ言うんやからほんま困ったお人や

でも、冗談やなくて本気でわいらを経理課にしたい言うその金の瞳に、わいは嬉しかったのかもしれん。


信用できん他人、そうお嬢はんに言ってもお嬢はんはわいのこと信じる言うんやからアホやで、ほんま

お嬢はんと亭主の作ったチチゴパイはとんでもなく旨かったで、弟妹たちも大絶賛するぐらいの味や。


次の日の弱肉強食大会、お嬢はんの一人無双やった。

どんだけ強いか知らんかったけど、あれはずっこい

女性の獣人達が妙にお嬢はんに釘付けやったで


大会のあとはチモ茶飲んで、魔神やら魔王やらのこと話して。

お嬢はんは色々と考えてるようや。


そんなお嬢はんが一番喜んでたんはマーマガ肉を目の前にしたときや

瞳が輝いてたで、確実に。


かぶりついて食べてたんやけど、口が小さいから全然食べれてへんように見えた。

頬に肉のカスつけてるから思わず拭いてしもうた。

まったく、わいは何しとるんや


お嬢はんに関われば関わるほど、悪いやつじゃないってわかるんよ

そんなこと話してたら、マーマガ肉を一緒に食うてくれ言うんやから、やっぱり困ったお人やろ?


やっぱり食べきれへんやん、だからそんなに細いんやって言うてやりたいわ


その日の晩、お嬢はんはもうすぐ自分の国に帰るんやと思うと、いつの間にか外に出とった

真夜中の夜空は星が輝いて綺麗やった。


お嬢はんに出会ってから色々なことがあった。


わいを邪険にしない獣人達も居ることを知った。


良いことが続くと悪いことがおきる、そんなことを言うとるのを聞いたことがあったんやけど。

ほんまだったみたいや。


まさか、わいも父ちゃんと同じ理由で処刑される日が来るとは思わんかった。


わいやないって言っても誰も信じてくれへん。

ほんと嫌なるわ


家族を助けたくても、わいにはその力がない。

弟妹たちの声に涙が出そうでも、わいは泣かへんように眉に力をいれて誤魔化す。

父ちゃんが死んだときも泣かんかったわいならきっと大丈夫や。

他人の前でみっともなく泣くなんて嫌や


乱暴に投げられた身体が痛い。


わいの頭を落とすための剣を持った獣人に、最後に何か言いたい事があるなら言われたから、最後やし言ってやろ思うて


「やっとらん言うても信じてくれへんのに、何を言えっていうんや。

最後に言えることあるとすれば、この世界もこの国も嫌いや言うことだけや!」


吐き捨てるように言ってやったんや。

わいの言葉に返ってくる言葉はくだらんことばっかや


「やっぱり他人なんて信用できへんな……くだらん」


ほんま、くだらんことばっかや。


乱暴に頭を地面に押さえ付けられて、何故か思い出したんは父ちゃんの言葉やった



〝他人に信じてほしいなら、自分も他人を信じないといけないんだぞ、コン〟


〝きっとコンにも信用できる人が現れるさ。そしたら父ちゃんに教えてくれな?〟


なんでこんな時に思い出すんや……


なんで、なんで、お嬢はんが出てくるんや……


なんで、お嬢はんの言葉が聞こえてくるんや


本当に助けてくれるんか? 信用しても良いんか?



ほんまは、最初に手を差し伸べてくれたとき嬉しかったんや

手ぇ繋いでくれたんも、笑いかけてくれたんも、全部全部嬉しかったんやで


お嬢はんと毎日色々見んのも楽しくて、毎日続いたらええなって思うようになってたんよ


なぁ、お嬢はんお嬢はん


わいもお嬢はんを信用しとるよ


ずっと信用しとったんや


お嬢はん お嬢はん




「〝たすけてや、五十鈴はんっ〟」



あなたともっと一緒に居たいんです。



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