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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第七章 魔国編
111/114

111 絵


主の魔力が他のものより沢山混じってる物。

それ自体にも意味があるような気がする…


桜国なら桜だ。私が一番好きな花であり元の世界の花でもある


獣人国なら多分チモ草。獣人と人、食べ物での争いはおきないように実ったものって可能性がありそう


ドワーフ国のドワーフは物作りを好むから、優良なタンパク質や脂肪、糖分を含んでいて、栄養価が高く疲労回復にもいいし作業の合間にすぐに食べれるキャメかなぁ、多分


エルフ国は迷うことなくユグドラシル一択、それ以外にはない。それ以外にあったら逆に教えてほしい


人間国は絶対にゴッサム。魔物から人を守るために生えたであろう植物


氷宝国は宝石の木、 真っ白い雪と真逆に様々な色を産み出したってとこかな


魔法国は火薬花とかかな、まるで花火みたいな見た目の花で、華やかで力強い感じの花。



まぁ全部私の予想に過ぎないけどね

じゃあ、魔国ならなんだ?

カシュカは白色。花からとれる蜜から生み出されてるなら白い花があるはずだけど

そうならココリモがすでに見付けてるだろうし、このカシュカはこれしかない。

何故一つしかないのか、何故これを手放したら"違和感"がなくなるのか


その違和感っていうのもよくわからないけどっと考えながら手の中の本をパラパラめくる

植物のイラストが沢山あるが、白い花は一輪もなかった。

本を棚に戻して他の本を手に取る


サキュバス達は畑仕事が残ってるからと別れ。

私達が今いるのはマルラのお母さんの部屋、書斎だ


「ごめんマルラ、国の案内してもらうはずだったのにもどってきて」


「別に気にしてないよ、それより何かわかったの?」


「いえ、まったく…でも、マルラのお母さんはなんでも記録してるんですね。細かく綺麗に」


国に住んでる悪魔一族についてや植物や物の種類など事細かにまとめられている

丁寧で、それでいて力強さを感じる綺麗な文字で……


この国の文字は見る人によって読めるように変換されるようになってる。

意味やイントネーション的なのも何故か全部綺麗にわかるようになってる。

英語と日本語で微妙に違うって感じにはならないみたい

とてつもなく便利、言語の壁がないっていいね


「忘れないために全部書いてたみたい。

考える事のできる生き物は忘れる生き物だからって。

アトリエの絵もね、なんで写写(しゃしゃ)があるのに描くのって聞いたら

たしかに写写で撮ったら早く綺麗にその瞬間を撮っておけるけど、絵はその時の思いもその人の心も描けるんだってさ

見た人に絵はなにかを伝えられるから描いてるって言ってた」


大切な思い出に触れるようにキャンパスを撫でるマルラ。


「確かに否定できひんなぁ

わいの中に父ちゃんの記憶は残っとるし、父ちゃんを知っとる人の記憶にも残っとる。

けど、その時の気持ちを全部覚えとるかって言われると、多分覚えてへん

マルラはんのお母はんは、思い出を大事にとっときたかったんやね。

その時の想いも全部残しときたかったんや。ただ残しとくだけやなくて、マルラはんのお母はんは、記憶を形に残して色んな人の記憶の片隅でもええから残しときたかったのかもしれへんなぁ」


人が人を忘れるとき

最初に声を、次に顔を、最後に無くすのは思い出だと言われている

でもきっと、その人の事を覚えている人がいなくなったときが人が人を忘れるときなんだと私は思う


「記憶も想いも形に残すかぁ、マルラのお母さんに会ってみたかったなぁ」


目を向けるのは綺麗な女性が二つのハートを抱える絵が描かれたキャンパス

マルラが髪を伸ばしたらこんな感じなんだろうなぁっとおもいながら見詰める。


「きっと鈴ちゃんは気に入られてたよ、お母さんの好きそうな感じだもん」


「どんな感じですか」


「昔読んだ本に登場した女の子だってお母さんは言ってたんだけど、その女の子に憧れてたんだって

大事な人も周りも全部、守りながら手を引っ張っていける子なんだって。

どんな怖いことや困難が訪れても、全部乗り越えて誰かを引っ張っていける、強くて優しくてかっこいい女の子。

そんな女の子に憧れてたんだって、五十鈴ちゃんって、お母さんの憧れの女の子みたいじゃない?」


まるで祖母みたいな女の子だ。

守りたいものはしっかり守って怖いことも難しい事も全部吹き飛ばしながらいくだろう。

祖父を引っ張っていくのはいつも祖母だった。

いや、まぁ、おじいちゃんデレデレだったし、引っ張らなくてもついていっただろうけど


「私みたいなのが憧れとか申し訳ないので絶対に似てない。その本はないんですか?普通に気になる」


「お母さんは昔読んだものだからって言ってたけど…私は読んだことないよ。

持ってるのかどうか聞いとけばよかったなぁ」


どこか寂しげに絵を見るマルラ


「ずっと気になってたんですけど、マルラのお父さんはって聞いちゃダメですか」


これまで全く話にでてこない人物、やっぱり聞いちゃいけなかったかと思ったが

マルラはんーっと声を出しながら近くにあった筆の先端を触りながら喋り出した


「お父さんとの思い出はまったくないんだ。

全然会いに来なかったし、弱ってくお母さんに会いにも来なかったもん。

どんな顔かも覚えてないよ。もともとは父さんが魔国の主だったんだけどね…」


「魔王さんの前主さんですか…親子で主になるなんてリーナのとこだけかと思ってました」


「太陽から生まれたものは主が持続する。

だから兄さんは父さんとよく一緒に居たみたい。次は自分が主になるってわかってたんだと思う。

どんな話をしてたのか父さんがどんな人なのか一切教えてくれないから全然父さんのことわからないけどね。

国のみんなも家族も兄さん以外は父さんのことよく知らないと思う。

お母さんには、お父さんについて聞かないようにしてたからわからない」


魔国の主は引きこもりってイメージがどんどん強くなるんですけど…


「お父さんに全然会えないのにさ、ある日突然兄さんからお父さんが亡くなったって言われた。

私の知らない間に兄さんの目は銀色になって魔国の主になった

私、涙すら出なかった。お父さんの事知らないのにどんな気持ちで聞いたらよかったんだろう。


その後から母さんがだんだん体が弱くなっていったの。

それなのに無理してずっと絵を描いてた。

私の方を見てほしくてキャンパスなんか見ないでって事もあったけど

お母さん、幸せそうに絵を描くんだ、大切なものを大事なものを筆で撫でるみたいに。

その顔を見るのが私は大好きだったんだ。でもお父さんとか兄さん達とか、人物画は全然描かなかったけどね」


マルラの思い出を聞きながら部屋に沢山ある絵を見る。

柔らかく、綺麗で、それでいてどこか悲しげな絵

それを見ながら考えるのはマルラの母が言った言葉


"考える事のできる生き物は忘れる生き物"

"絵はその時の思いもその人の心も描ける"

"見た人に絵はなにかを伝えられるから描いてる"


この絵達は誰に何を伝えたかったものなのだろうか?

人物画はあまり描かないのに、ラルト君に自分自身を描いてもらってその絵にハートを描いた意味はなんだろう

それと、不思議な絵は他にもある


「このお母さんはラルト君が描いたんだよね。廊下の絵もラルト君が描いたんでしたっけ」


「うん、お母さんが筆を持てなくなるぐらい衰弱した後に、ラルト兄さんが母さんの真似するみたいに沢山描くようになったよ。

この絵に描き加えられたハートはお母さんの最後の絵」


廊下に飾ってある魔国の風景画や悪魔達の絵、椅子だけが描かれてる絵。

規則性はなく好きなものを好きなように描いているのかと思ったけど、違うのかもしれない

黒い蛇が大量にうねってるメデューサの絵などもたしかあったな…メデューサ、会ってみないとだめかなぁ


この部屋の中のキャンパス、廊下に飾られたキャンパス。

そして、部屋の中の記録が事細かに書かれてるもの。

これが誰かになにかを伝えるためだとして、閉鎖されているこの国の誰かでないのなら

主殿に入れるもの。隠された国に招待されるもの

そんなものは他国の主しか居ない


主なら誰でもよかったのか、来ると確信して描いたのかそれともいずれ来る人に描いたのかはわからないけど



これは…私になにかを伝えたくて描かれたものだ




『名称:願い


材料: 色石、花、水、母の愛』




なんだろう、巻き込まれるというより、巻き込まれてくださいとお願いされてる感じがするんだよな…


今回は仕方ないかなぁっと思いつつ、コンを見る。

コンは初他国だけど付き合ってもらうことになりそうだ


「頑張ろうね、コン」


「五十鈴はんと一緒ならどこでも頑張れそうや。

それに、五十鈴はんと一緒ならどこだって楽しいんやで」


にっと笑みを浮かべるコンにやる気がわく。マルラに巻き込んでと言ったのは私だ。



なら、やるだけやるさ






*********






「星に願えば願いが叶う…か」


手元にあるのはマルラに渡された紙。たしか短冊って名前の物だ。

桜国で作られた和紙ってやつらしい。触ると不思議なさわり心地だけど優しい手触りの綺麗な紙だな


マルラにに星降る日の願いを書いてくれと言われたからとりあえず書いてみたけど、そんな自分に呆れて逆に笑えてくる。


「願いとは"自分自身のために願うこと"それとも"世の中のためや他人のために願うこと"

何かが欲しい、当たりますように、叶いますように、なれますように


全部が全部"願望"でしかない。」


そう、願いは願望だ

自分自身がこのようになってほしい、こうあってほしいと思う主観的な願いであり欲求だ。

勝手に願って勝手に望んで、それが叶わなければ悲しんだり怒ったり落胆したり


「願ったところで叶うことなんてない。欲しいものが手に入らないのと同じだ

願いも願望も抱くだけ無駄なことで、叶えたいことがあるなら自分から動かなければ叶わない。


願いは無駄だ、俺の願いも思いも。絶対に叶わないんだから」


手の中の紙がくしゃりと音を立てて潰れていく。

綺麗な紙が一瞬にしてくしゃくしゃになった、まるで自分の心のようで目をそらす。


そうしないと金色に輝く誰よりも自由な彼女に手を伸ばしたくなる。


あの子は俺の理想だ

俺のなりたかったものだ

俺のなれないものだ

俺の…



そこまで考えて乾いた笑みがもれる。

願いなんてくだらない、望むだけ無駄なことだ



「父さん、俺…約束守れそうないよ」

































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