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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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51/53

「それぞれの朝 ――選ばれなくても、終わらない」

翌朝。


学園の鐘が鳴るより少し早く、

俺は目を覚ました。


不思議と、胸がざわついていない。


昨日の夜――

四人と向き合い、

誰も泣かず、誰も壊れなかった。


それが、世界にとっても

俺にとっても

“異常なほど健全”な状態らしい。


ゼロが淡々と報告する。


(マスター。

 現在、世界安定値は過去最高を記録しています)


「恋愛修羅場のど真ん中で?」


(はい。

 “依存が自立へ変化した”ためです)


……なるほど。

修羅場が成長イベントだったわけか。



ローゼリアの朝 ――「優しさの行き先」


ローゼリアは、学園附属の小さな礼拝室にいた。


朝の光がステンドグラスを通り、

床に淡い色を落としている。


彼女は一人、

椅子に座って静かに本を読んでいた。


――恋愛相談ノート。


学園祭で書き溜めた、

たくさんの悩みと答え。


ローゼリアは、そっとページを閉じる。


「……わたし、ずっと勘違いしていました」


隣には誰もいないのに、

まるで誰かに話しかけるように。


「“誰かに選ばれる”ことが、

 幸せだと思っていました」


小さく息を吐く。


「でも……

 誰かを救えた時、

 わたしはちゃんと“自分で立っていた”」


彼女は立ち上がり、

窓の外を見た。


学園の中庭で、

誰かが笑っている。


「ブランデー様に選ばれなくても……

 わたしの優しさは、消えません」


その目は、少しだけ強くなっていた。


ローゼリアは決めた。


――学園正式公認の

《心の相談室》を作る。


恋だけじゃない。

人間関係、家族、将来。


“誰にも選ばれない時間”を

支える場所を。


それは、

誰かのためであり、

自分のためでもあった。



アルティナの昼 ――「剣の意味」


アルティナは、闘技場にいた。


だが今日は、

剣を振っていない。


対峙しているのは、

学園最強クラスの戦士教官。


「……本気でやる?」


「ええ。

 “剣の意味”を確かめたいのです」


合図と同時に、

教官が踏み込む。


重い一撃。


アルティナは受け止めず、

かわし、流し、

必要以上に反撃しない。


「……変わったな」


教官が呟く。


アルティナは、息を整えながら答えた。


「はい。

 “勝つため”だけに振る剣は、

 もう要らない」


一瞬の隙を突き、

剣先を教官の喉元で止める。


「でも――

 “守るため”の剣は、

 もっと研ぎ澄ませます」


教官は、

静かに笑った。


「良い顔だ。

 戦士じゃなく、“人”の顔だ」


アルティナは剣を下ろし、

胸に手を当てる。


(……ブランデー)


(あんたに恋した私は、

 確かに強くなった)


(でも――

 あんたのためだけに生きる私じゃない)


その覚悟が、

彼女の剣を

より鋭く、

より折れにくくしていた。



ルナの午後 ――「見えない未来」


ルナは、図書塔の最上階にいた。


未来予知書、運命分岐表、

時間干渉理論。


積み上げられた本の山。


だが――

彼女は、それらを一冊ずつ閉じていく。


「……見ない」


未来視を使わず、

ただ“今”の感情だけで考える。


心臓の音。

呼吸の速さ。

胸の奥の、少しの痛み。


「未来を見ないの、

 こんなに怖いんだ」


でも――

嫌じゃない。


ルナは、

自分の手を見つめる。


「選ばれなかった未来も……

 ちゃんと“私”だよね」


本棚の奥から、

一通の封筒を取り出す。


宛名は――ブランデー。


だが、封は切らない。


「これは……

 “未来で渡すはずだった手紙”」


そっと胸に抱え、

また棚に戻す。


「今じゃない」


ルナは笑った。


「今の私は、

 未来にすがらなくても、

 歩けるから」


その瞬間――

未来視が、

ほんの一瞬だけ発動する。


見えたのは――


“笑っている自分”


相手は、

まだ分からない。


でも、

それで十分だった。



リュミエラの夕方 ――「王女の反撃」


王城。


謁見の間で、

リュミエラは堂々と立っていた。


向かいにいるのは、

国王と重臣たち。


「縁談を白紙に?」


重臣の一人が声を荒げる。


「王女としての責任を、

 どう考えているのだ!」


リュミエラは一歩も引かない。


「王女としての責任とは、

 国を守ることです」


真っ直ぐな視線。


「“形だけの同盟”より、

 “国を理解する時間”が必要だと

 わたくしは考えます」


ざわめき。


「わたくしは、

 隣国との条約交渉を

 自ら主導します」


国王が目を細める。


「……恋のためか?」


一瞬、間があった。


だがリュミエラは、

はっきり答える。


「恋を知ったからこそ、

 国の価値を理解できました」


静寂。


そして――

国王が、ゆっくりと頷く。


「……よい。

 やってみよ」


その瞬間、

王女は“守られる存在”から

“動かす存在”へ変わった。


リュミエラは、

胸の奥で静かに呟く。


(ブランデー。

 あなたが選ばなくても……

 わたくしは、立ち上がります)


(そして――

 選ばれるに値する国を作ります)



夜 ――ブランデーの独白


夜。


俺は、自室の窓辺に立っていた。


四人の気配を、

直接感じるわけじゃない。


でも――

不思議と分かる。


それぞれが、

“前に進んでいる”と。


ゼロが告げる。


(マスター。

 “選ばれなかった未来”が

 破滅ではなく

 “成長ルート”として固定されつつあります)


「……よかった」


本心だった。


恋は、

誰かを縛るものじゃない。


誰かを壊すものでもない。


――育てるものだ。


「なぁ、ゼロ」


(はい)


「俺が最終的に一人を選んだとしても……

 世界は、壊れないか?」


少しの間。


(……壊れません)


(むしろ――

 “正しい形”に落ち着くでしょう)


俺は、深く息を吸った。


「なら、俺は選ぶ」


(はい)


「逃げずに。

 感情から目を逸らさずに」


(それが、

 この世界が求めている“勇者”です)


窓の外で、

星がひとつ、強く光った。


嵐は――

まだ来ていない。


だが、

来ることを

恐れる理由もなかった。


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