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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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49/53

「王女である前に ――“恋を選ぶ覚悟”」

朝の空は、どこまでも澄んでいた。


城下町へ向かう馬車の中、

リュミエラ姫はいつもより静かだった。


豪華なドレスではなく、

今日は動きやすい街用の服装。

それでも隠しきれない気品は、さすが王女だ。


「……ブランデー」


不意に名前を呼ばれる。


「今日のデート、

 少しだけ……覚悟が必要になります」


その声は柔らかいが、

芯の通った“決意”の音が混じっていた。


「覚悟?」


「はい。

 わたくしが“王女である理由”を

 あなたに見せる覚悟です」



【城下町】


城下町は、いつも以上に賑わっていた。


露店の呼び声。

パンの焼ける香り。

子どもたちの笑い声。


リュミエラ姫は、

その全てを懐かしむように見つめている。


「ここは、わたくしが生まれ育った場所です」


歩きながら、静かに語り始めた。


「王女として、

 民の声を聞き、

 顔を覚え、

 笑顔を忘れないことを教えられました」


店主が気づいて、声をかける。


「おや、姫様じゃありませんか!

 今日はお忍びですかな?」


姫は柔らかく笑い、軽く頭を下げた。


「ええ。

 今日は“一人の少女”として来ていますの」


その瞬間、

周囲の空気が少しだけ和らいだ。



【姫の過去】


市場を抜け、

人通りの少ない路地へ。


「ブランデー。

 わたくしは、ずっと知っていました」


足を止め、こちらを向く。


「いつか、

 “国のために結婚する日”が来ることを」


言葉は穏やかだが、

覚悟と諦めが滲んでいる。


「好きな人ができても、

 それを選ぶ権利はない。

 そう教えられて育ちました」


胸が、少し痛んだ。


「でも……」


姫は、はっきりと言った。


「あなたに出会ってから、

 それが“当然”じゃなくなった」



【街デート】


話題を変えるように、

姫は小さな店の前で足を止める。


「こちら、昔よく来た菓子屋ですの」


中に入ると、

懐かしそうに棚を眺める。


「この焼き菓子……

 幼い頃、初めて“自分で選んだもの”でした」


「王女でも?」


「王女だから、です」


微笑む。


「“自分で選ぶ”という行為が、

 どれほど大切か……

 この国で生きる全ての人に伝えたいのです」


二人で焼き菓子を分け合いながら、

並んで食べる。


リュミエラ姫は、

その一瞬を大切そうに噛みしめていた。



【王族の影】


だが――

その空気は長く続かなかった。


黒服の護衛が現れる。


「姫様。

 国王陛下より、緊急の伝言です」


姫の表情が引き締まる。


護衛は、こちらを一瞥してから告げた。


「正式な縁談が決定しました。

 お相手は隣国の王太子です」


――来たか。


姫は一瞬、目を伏せた。


そして、

ゆっくりと顔を上げる。


「……そうですか」


声は、震えていない。


「では、

 父にこうお伝えください」


護衛が身構える。


「“リュミエラ・アルトリアーナは、

 自らの意志で人生を選びます”と」


護衛が息を呑む。


「姫様……それは――」


「王女の命令です」


凛とした声。


その場の空気が、

完全に“王女”のものになった。


護衛は深く頭を下げ、去っていった。



【選択】


静寂。


姫は、しばらく何も言わなかった。


やがて、小さく息を吐く。


「……怖くないと言えば、嘘になります」


こちらを見る。


「国を、民を、家族を、

 全て裏切るような気がして……」


その目に、初めて不安が浮かんだ。


俺は、ゆっくり言葉を選ぶ。


「裏切りじゃない。

 “責任を持って選ぶ”ってことだ」


姫の瞳が揺れる。


「あなたは、

 王女である前に、一人の人だ」


一歩近づく。


「その選択を、

 誰にも奪わせるな」



【リュミエラの本音】


姫は、しばらく黙っていた。


そして――

胸に手を当て、はっきりと言った。


「ブランデー。

 わたくしは……

 あなたを、愛しています」


真っ直ぐで、

一切の迷いがない告白。


「王女としての未来を失っても、

 それでも後悔しないと……

 今は、そう思えるのです」


それは、

“重い愛”ではない。


責任を理解した上での、

“覚悟の愛”だった。


俺は、深く息を吸い――

正面から答える。


「その想い、

 俺は軽く扱わない」


姫の目が、少し潤んだ。


「……それで、十分ですわ」



【別れ際】


城下町の出口。


姫は立ち止まり、

そっと俺の手を取る。


「今日のデート、

 一生忘れません」


指先に、

温かさが伝わる。


「次に会う時、

 わたくしは――

 “王女としての覚悟”を、

 もう一段、進めているでしょう」


軽く、

額に口づけ。


「これは、

 誓いのキスです」


静かで、

しかし重みのある一瞬。



【ラスト】


部屋に戻ると、

ゼロが低い声で報告した。


(マスター。

 本日の選択により――)


(王国関連の未来分岐が大きく変動しています)


(“恋を理由にした政治的変革”が、

 現実的なルートとして確定しました)


「世界、荒れそうだな……」


(はい。

 ですが――)


一拍置いて。


(“後悔のない未来”です)


俺は窓の外を見る。


ローゼリアの優しさ。

ルナの未来を捨てる勇気。

アルティナの剣を置く覚悟。

リュミエラの国を背負う決断。


……全員、本気だ。

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