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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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47/53

「未来を知る少女は、今を選びたい」

放課後。


学園の喧騒が少しずつ遠のいていく時間帯。

校舎の影が長く伸び、空が夕焼けに染まり始める頃。


俺は、約束どおり――

ルナと二人きりで、校門前に立っていた。


「……遅くなってごめん」


「ううん。

 未来では“ちょうどいい時間”だった」


ルナは相変わらず淡々としているけれど、

今日は少しだけ、いつもより緊張しているように見えた。


制服のスカートの裾を、ぎゅっと握っている。


「行こっか」


「……うん」



【行き先:街外れの丘】


馬車も魔導車も使わず、

二人でゆっくり歩いていく。


沈黙が気まずくない。

むしろ、心地いい。


ルナはふいに言った。


「ねぇブランデー。

 私、デートって“結果を見るもの”だと思ってた」


「結果?」


「うん。

 未来でどうなるか、

 その答え合わせをする行為」


俺は足を止めた。


「……それ、楽しいか?」


ルナは一瞬だけ言葉に詰まった。


「……楽しくなかった」


正直な答えだった。



丘の上に着くと、

街全体が見渡せる。


夕陽が屋根に反射して、

世界が金色に染まっている。


ルナは草の上に座り、

俺にも隣に来るよう手招きした。


「ここね。

 未来で……私がブランデーと一緒に来た場所」


胸が、少しだけ締めつけられる。


「未来で?」


「うん。

 何度も見た未来」


ルナは空を見上げたまま続ける。


「この丘で、私はブランデーに告白する。

 でも……その未来の私は、泣いてた」


「……なんで?」


ルナは唇を噛んだ。


「未来を知ってたから」



【未来予知の代償】


「私の未来視はね、便利だけど……残酷」


ルナは指先で草をちぎりながら話す。


「好きになる前から、失恋する未来が見える。

 幸せになる前から、終わる瞬間が見える」


風が吹いて、

彼女の銀髪が揺れた。


「だから私は、恋を“ゲーム”みたいに扱ってた。

 勝率、確率、分岐……

 そうしないと、心が壊れるから」


俺は黙って聞く。


「でも……ブランデーと関わるようになってから、

 未来が、ブレ始めた」


ルナは初めて俺を見た。


「見えない未来が増えた。

 怖かった。

 でも……嬉しかった」



【“見えない未来”】


「未来が見えないってことはね、

 “今の選択で変わる”ってこと」


ルナは自嘲気味に笑う。


「未来予知少女としては、失格」


「一人の女の子としては?」


そう聞くと、

ルナは少し驚いた顔をして――


小さく、照れた。


「……合格、かな」



しばらく二人で夕焼けを眺める。


やがて、ルナが立ち上がった。


「ねぇブランデー。

 未来の話、してもいい?」


「聞きたい」


ルナは深呼吸してから言った。


「未来では……

 あなたは誰か一人を選ぶ」


心臓が、きゅっと鳴る。


「その相手が誰かは……

 いくつか分岐があって、確定してない」


「……そうか」


「でも、どの未来でも共通してることがある」


ルナは、まっすぐ俺を見た。


「あなたは、必ず“後悔しない選択”をする」



【ルナの本音】


「だからね」


ルナは、少しだけ声を震わせた。


「今日のデートは、

 勝つためじゃなくて……」


一歩、近づく。


「“今の私”を、知ってほしかった」


胸が、熱くなる。


「未来で泣いてた私じゃなくて。

 計算してない私。

 強がってない私」


ルナは、初めて弱い顔をした。


「……それでも、好きでいていい?」


俺は答える前に、

そっとルナの手を取った。


「未来がどうなるかは分からない」


指先が震えている。


「でも今、この瞬間――

 ルナとここにいるのは、

 俺の意思だ」


ルナの瞳が、大きく揺れた。


「……それ、未来に無かった言葉」



【キス未満】


ルナは一歩踏み出し、

俺の胸に額を当てた。


「……未来では、ここでキスしてた」


「今日は?」


「……今日は、しない」


顔を上げて、微笑む。


「“見た未来”をなぞるのは、もうやめたいから」


俺は、彼女の髪を優しく撫でた。


「それでいい」


ルナは、安心したように目を閉じた。


その瞬間――

空気が、少しだけ揺れた。


ゼロの声が響く。


(マスター。

 “未来固定率”が大幅に低下しました)


(世界はより自由な状態に移行しています)


恋が、世界を縛る未来を壊していく。



【別れ際】


帰り道。


ルナは、いつもの調子に戻っていた。


「ねぇブランデー。

 今日のデート、どうだった?」


「……楽しかった。

 静かで、ちゃんと“今”を感じられた」


ルナは満足そうに頷く。


「うん。

 それなら、このデートは成功」


校門の前で立ち止まる。


「今日は、ありがとう」


「こちらこそ」


ルナは一歩下がって、

くるっと振り返る。


そして、振り向きざまに言った。


「……次は、未来を見ないで勝つから」


小悪魔みたいな笑顔。



【ラスト】


部屋に戻った俺に、ゼロが告げる。


(マスター。

 本日のデートにより――)


(世界干渉値:安定上昇)


(恋が“未来を固定する力”から

 “未来を解放する力”へ変化しました)


「……いい方向ってことか?」


(はい。

 “幸せの形が一つじゃなくなった”という意味で)


俺はベッドに倒れ込む。


ローゼリアの優しさ。

アルティナの情熱。

リュミエラ姫の覚悟。

ルナの未来を捨てる勇気。


――重い。

でも、逃げたくない。




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