イグリスの町。
『(もう少し進んだ所に町があるはずだ。今日はそこまで行こう)』
ソルトさんの管轄を抜け、陽が落ちた辺りから少し肌寒くなってきた。南下しているのに寒くなるってどうも慣れない。
景色もずいぶん様変わりして、真夏! って感じの景色から今は秋っぽくなって、秋桜みたいな可愛い花がそよそよと風になびいている。
あ……あれも魔物なのかな……?
【あれは植物ですよ。ふんわり甘くて美味しいのです】
スミちゃん、食べた事あるの?
【遥か昔ですけれど。他に食べられるものが無くて】
木の根を噛むとはよく言ったもので。美味しいもの作ってあげるからね……スミちゃん……。
………………………………
『(見えたぞ、イグリスの町だ)』
うわあ! 結構大きな町だねえ!
高台から見下ろすイグリスの町は、真っ白な城壁に囲まれていて、レンガ造りのような建物が密集している。灯りも沢山灯っていて、喧騒が聞こえるようだ。
『主ー! おっきなお城があるよー!』
遥か高くを飛んでいたエンリルが降りてきて言う。お城? があるって事は、ここは王様が統治しているんだね。
城壁の前にたどり着くと、門衛さんが手招きをしていた。あ、登録証の提示をしなきゃいけないんだった。こっそりとアイテムインベントリから出しておく。
「イグリスへようこそ。登録証の提示をお願いします」
お、この門衛さんってば、ルビーに乗っている私を見ても引かないぞ。
登録証を見せると、エンリルとスミちゃんの事を尋ねられた。そう言えばルビーしか登録証に載っていない気がする。
「道すがらテイムしたので、まだ登録していないのです」
どちらにしろ、町に入れてもらえないと登録も出来ないものね。クランでしか印字出来ないって、確か言っていたと思うし。
「他害は無いのですか?」
「大丈夫です。契約は結ばれていますので」
エンリルとは契約していないけれど、ひとに危害を加えるような子じゃないもの。
そうですか、とにっこり笑って、門衛さんは通してくれた。割りとテイマーってメジャーなのかしら。
大きな門を抜けると、噴水のある広場に出た。時間も時間だし、人通りはまばらだけれど。
『(まずはクランに行かねばな)』
そうだそうだ。えーっと、どこにあるんだろう? きょろきょろと周りを見ながら歩みを進める。さすがに町中ではルビーに乗ったままってわけにはいかないからね。
エンリル、クランの場所わかるかな? そこから見える?
上空を飛んでいるエンリルに問うと、旋回して探してくれている。
『あったよー!』
降りてきたエンリルを腕に乗せて、案内してもらう。到着したクランは、これまたレンガ造りで入り口にはものものしい門がある。今までのクランとは雰囲気が違いすぎる……。
『(入らぬのか?)』
腰の引けている私を不思議そうな顔をしてルビーが見つめる。いや、入るけれど……ちょっと待って。
ガシャンと音をたてて、ルビーが門を開ける。ちょちょちょ、待ってって言ってるでしょお!!
開いてしまったものは仕方ない。覚悟を決めてクランに入った。




