シャラスナップとフライキラークラム。
ほどなくしてルビー達も小海から戻ってきた。ドラゴンの姿の時と違って、今は毛皮を持つ魔物にコートしているせいで、ことのほか身体が重かったらしい。
【海の中は素晴らしかったです!! あんなたっぷりのお水の中に、あんな沢山の生き物がいるなんて!!】
スミちゃんが大興奮して叫んでいる。いつもは無口なのに、よっぽど楽しかったんだね。
【でも、息が続かなくて……ルビー様にエアーを貰わなければ死んでいました……】
『(スミのライフがみるみる減っていっていてな、おかしいと思ったら我の首元で息絶える寸前だったぞ)』
スミちゃん、はしゃぎすぎだよ……。
んんっ!? ルビーに空気を貰ったって、まさか……。
『(阿呆! 何を想像しておるのだ! エアーを含んだ泡でスミを包んだだけだ)』
なーんだ。
『(獲ってきた物はそこに置いてあるぞ。腹が減ったし身体が重い。我は毛を乾かさねば……)』
ありがとう、お疲れ様! さてさて、何を捕まえて来たのかなーっと。
これは見たことあるな、小ぶりだけれどマグリルだね。ヒレがフリルみたいになっているやつ。ええと、何か食べちゃいけないようなお色と見た目のお魚がいらっしゃるのですが。50cmくらいの、クロダイみたいな真っ黒の鱗に覆われて真っ赤なオメメが6つ並んでいる上にお腹に虫みたいなお手々がいっぱい生えているんですけど。
【それはシャラスナップという魔物です。海の中では泳ぐことが出来、陸では手を使って這うんです。凄いですよね】
ホウボウみたいだね。見ようによってはムカデの足に見えなくもないけれど。これ、どうやってさばくのかな。
後は、貝? シャコ貝みたいな巨大な貝。私が丸まったらすっぽり入りそうだよ。あ! イカだ! イカもいる……。イカ……?
【キングクラーケンの子供ですね】
大漁だね! これだけあれば皆お腹いっぱいになっちゃうね! よーし、ここからはイオリさんの腕の見せどころだ!!
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マグリルは意外と簡単。私の世界のお魚とそう大差はない。内臓は食べないし、内臓っぽいものを除けたらいいだけだもんね。クラーケンの子供も普通にイカの下拵えの仕方で良かったんだけれど、後からルビーに毒袋を破らなかったか? と言うお言葉をきいた時には驚いたよね。どうやらイカの墨袋がクラーケンは毒袋なんだってさ。早く聞きたかったよね。
ラスボスのシャラスナップさん。真っ黒だよ。これ、毒ないの?
『(無いぞ。腹が減った)』
待ってよ……。ワンクルーにトマトでも持ってきてもらおうか?
『(久しく食べていないな。そうしてくれ)』
10個くらいワンクルーに買ってきてもらってルビーに手渡すと、しゃぐしゃぐとかじっている。スミちゃんの頭に触覚が出現したような気がするけれど、今はスルーしておこう。相変わらずワンクルーのテンションは高いまんまだった。
シャラスナップに毒がないことが解ったし、とりあえずこの足を何とかしないとなぁ……。エビみたいにむしればいいのかな……。えい。ぶちぶちと嫌な感触で足をむしる。鳥肌が止まらない!
あ、開いてみたら造りはお魚だ。足があった所だけエビのようになっている。まさかとは思っていたけれど、身も真っ黒。食欲はそそらないなぁ。
問題は貝だよ。どうすんの、このでっかいシャコ貝。開け方解らないよ。割ればいいのかな……?
『(開けてやろう。どれ)』
ぎゃっ、ルビー! 口の周りと胸元が真っ赤っ赤!! 久しぶりに食べるからって急ぎすぎでしょう! 後で洗ってあげるからね!
バキンと音をたてて、シャコ貝の口が開く。その肉球のついたお手々で器用に開けるね。シャコ貝の中身は牡蠣の身みたいなものがぎゅうぎゅうに詰まっている。牡蠣は大好きだけれど、ここまでぎっしり詰まるとアレだね。
『(美味そうだ)』
がぶっとルビーがシャコ貝の中身にかぶりつく。生でも大丈夫なの? ルビーだから大丈夫かな。
『(新鮮で美味いぞ。ぷりぷりしていて爽やかな海の匂いが鼻の奥を抜ける……うん? む……)』
ルビーが口をもこもこ動かして、手のひらに乗るほどの大きさのクリーム色したボールのようなものを吐き出す。
種? なに、これ?
【綺麗ですね。フライキラークラムの珠と呼ばれるもので、主に装飾品に加工される素材なのですよ。とても珍しいものなのだそうです】
真珠だね。大きさは規格外だけれどとってもきれい。
『(フライキラークラムは、海の中にいるものに飛びかかって襲うからな。捕獲するだけでも手間がかかるのだ)』
名前からそんな感じがしてた。そんなのに限ってとっても美味しかったりするんでしょう! 楽しみだな。
下拵えも一段落ついたし、料理に取り掛かりましょう!




