ミュゼさん、ご立腹。
私を背に乗せたまま、ルビーは悠々と三人組の前へと歩いて出た。
「レオパル? なぜこんな所……に……」
ツインテールのミュゼさんと目が合いました。ええ、背中で揺られているモッサい冒険者の私と。
ミュゼさんは短剣を構えて私とルビーに向ける。
「さっきの斬撃を放ったのはお前か!?」
うーん、間違いなく私が放ったものだけれど、うまく説明しないと誤解されている気がするぞ。
「そうです、申し訳ありま……」
「やっぱりか!! アタシ達を狙って何のつもりだ?! 何の用だ!」
聞いてくれない……。
短剣をこちらに向けたまま、大きな目を見開いてがなりたてている。
「ミュゼ、落ち着け。謝っているようだ、話を聞いてやれ」
大剣の男の人が間に入って制してくれた。私もルビーから降りてみる。
『(大して力のある者共ではない。イオリの放った斬撃で少し危ない思いをさせたようだ)』
ルビーの言葉に、頭を撫でて三人組へと歩いて近づく。ミュゼさんだけが戦闘態勢のまま。
「ごめんなさい。新しい武器を試したくて、誰も居ないと思って使ってしまいました。あなた達を攻撃したわけではないんです」
平身低頭、頭を下げて謝る。
「モーリーが怪我をしたんだ! 謝って許されると思うな!」
涙目でミュゼさんが指し示す先にいるモーリーと呼ばれるフードの子が、よく見ると足を引きずっている。……これは私のせいだな。間違いなく。
『(イオリ、エンリルを呼んで治してやれ。このパーティの要が、その怪我をしている者のようだ。そのかわり、スキルを使うのがエンリルだと気づかれないようにしろ)』
なにその無茶振り。とりあえず、手招きをしてエンリルを呼ぶ。スミちゃんを背中に乗せたまま、ばさばさと飛んでくるエンリル。腕を差し出し、そこへ止まってもらった。
「私の仲間です。攻撃を加える気はありませんので、その、モーリーさんの足の傷を見せていただけますか?」
三人組は顔を見合わせ、モーリーさんの傷を見せてくれた。結構深く切れているようで、血が止まっていない。女の子なのに申し訳ない事をしたなぁ……。
エンリル、傷跡を残さないように治してあげられるかな? 私が治した風を装って、治してあげてもらえる?
『出来るよ―! まかせて!』
エンリルを腕に乗せたまま(スミちゃんの重さも相まって、すっごく重い!)、モーリーさんの傷に手をかざす。エンリルが私の手に隠れるように“ごっちん”をしてくれた。
足の傷はスーッと薄れて、やがて消えた。
ありがとうエンリル。ルビーの背中に乗っててね。
バサバサッと私の腕からルビーの背中に移ったのを確認して、ぽかーんとしている三人組に声をかける。
「傷は癒えたと思うのですが、モーリーさん? まだ、痛みますか?」
私の声に、ハッとしたようにモーリーさんが足を動かす。
「……大丈夫です、痛みもありません」
良かった。エンリルのごっちんは本当に凄いなぁ。
「避けられなかった私がいけないのです。治していただき感謝致します」
フードをばさりと外し、まとわりつく髪の毛を払うように頭をふるふると振って、こちらへ顔を向けるモーリーさん。
ゆるく結んだ三つ編みが揺れる、銀色の髪の……。
「私、この地より遥か東の果ての村、アウロラの領主の孫息子のモーリーと申します」
ん? アウロラって聞いた事がある気がする。そして……孫、息子……。
「わっ、私はイオリ。テイマーで、訳あって旅をしています」




