包丁の威力。
『(スミは鍛冶スキルを持っているのか。ドワーフ族には多いのだが、珍しいな)』
背中に包丁を生やす方が珍しいよ。引っこ抜いたはずのスミちゃんの背中には傷跡ひとつ無くて、触れてもぷにぷにした背中があるだけだった。
「こんな良い物、ありがとうね、スミちゃん」
きゅう、と鳴き声をあげて返事をしてくれた。
『(しかし、珍しい鍛冶スキルを持っていても、製造したものが背中に生えてしまうのでは自ら使う事も出来ぬな)』
確かに。抜いて貰わない事にはどうにもならないんだよね……。
『スミちゃんが、ナイフをほんの少しだけ振ってみて下さいって言ってるよ! あぶないから、本当にチョッとだけ! って!』
手にしっくりくる重さの包丁で、大きさはさほど変わらず、刃は赤味がかり鈍色に輝いている。
誰も居ない方向を向いて、手首のスナップをきかせて軽く振り下ろす。
――――ズバンッ!!
『(……スミが、ほんの少しだけだと言ったであろうが。イオリ? イオリ、しっかりしろ。何を呆けているのだ)』
ネチスタの木の太い枝を、斬り落としそうな勢いで、包丁から斬撃が飛んで行った。
「……こ、怖!! 武器っていうか、兵器だよ、これ!! わわわ、私が持ってると事故が起こるよ!!」
あわてふためく私を、ルビーもエンリルも、果てはスミちゃんまでもが楽しそうに身体を揺すって爆笑している。
笑いごとじゃないよ〜。もし私が料理している時にルビーに向けて、つい包丁を振っちゃったら真っ二つになるんだよ?
『(イオリの鈍った斬撃など我が避けられぬはずがないであろう)』
ぐっ……確かに……。じゃあ、私が持っていていいんだね? 後悔しても遅いんだからね!
『(問題ない)』
『スミちゃんが主のために造ったんだよ! 主が持たなくちゃ!』
……そうだね、エンリルの言うとおりだよ。スミちゃんにお願いして、包丁を入れる鞘も拵えてもらった。腰から下げられるように、鞘ごと紐でしっかりズボンに結びつけておいた。
『(プッ)』
……! 何笑ってるのよ、ルビー!
『(フフフ、いや、すまぬ。まさかイオリの腰からアダマンタイトのナイフがぶら下がっているなどと、周りの者は夢にも思わぬだろうと思うとおかしくてな)』
そんな高級品を持っているようには見えないからね! ちょっと今は薄汚れているけれど、私だって捨てたものじゃないんだからっ。
『(そういう事にしておこう)』




