こんがりトースト。
スミちゃんの事はひとまず置いておいて、ルビーのお腹が大合唱を始めたので朝ご飯にする事にした。どんな時でもブレないルビーさんです。
店舗をまわるのは控えて、ワンクルーにお願いした。ワンクルーを喚び出しても、どうやらスミちゃんには見えていないようだった。そして私の腕の中にポンッと現れた買い物袋に驚いているのが見てとれた。
『あれはね、主のスキルなんだよ!』
エヘン! と得意げに説明しているエンリルが微笑ましい。
……え? スミちゃんの見た目が気になるって?
そうだなぁ……アゲハ蝶の芋虫の大きい感じかな……? 黄色い触覚みたいなものが頭の先っちょに二本ぴよぴよしていて、可愛いんだよ! 可愛いんだけれどね。感触がね……。
『(何をしているのだ? 腹が減ったのだが)』
長い尻尾で私の背中をポフポフ叩きながらルビーが声をかけてきた。買い物袋を持ったまま固まっていたからね。ごめんね。
今日のご飯はなんと! ほうれん草のキッシュもどきと、タルタルトースト! コレステロールやカロリーなんて気にしない、がっつりご飯なのです。
理由は昨日残った桃色たまごさんを使い切るため!
まずはほうれん草をざっくり切って、ベーコンもざっくり切ります。そしてバターをフライパンに落として香りがたってきたら、ほうれん草を炒めて、しんなりしてきたらベーコンを投入。四人分とは思えない量のほうれん草とベーコン……フライパンがとっても重い……。味付けはお塩と黒コショウで。
一旦火を止めておいて、その間に桃色たまごと生クリームをよく混ぜる。混ざったらピザ用の細切りにしてあるチーズをたっぷり入れて、更に混ぜておく。
本当のキッシュはパイ生地に入れてオーブンで焼くんだけれど、ここは異世界! フライパンにサラダ油を入れて熱したら、卵液を流し込んでアルミホイルをかぶせる。その上にふたをしてやや弱めの中火で蒸し焼きにします。
フライパンは火にかけたまま、しばし放置。
「ルビー? ちょっとお願いがあるんだけれど……」
『(何だ?)』
四枚切りの食パンを取り出して、ルビーに見せる。
『(喰っていいのか?)』
「ちがう」
薄く焦げ目がつく程度に焼いてもらえないかお願いしてみた。そう、トーストです。
『(やってみよう)』
ルビーに食パンをどさっと手渡し、イオリ特製タルタルソースをひたすら作る。ゆで卵が出来ないから、スクランブルエッグで代用。これはこれで、色もきれいで可愛らしい。
もうひとつ買っておいたカセットコンロでハムステーキをこれまたひたすら焼いていく。じゅうじゅう音をたてて焼けるハムステーキのいい匂い。
ルビーを見ると、真っ黒こげになったトーストが転がっていた。
「ルビー!? そ、そんなに真っ黒になっちゃったら食べられないよ!」
『(わっ、解っている!! 加減が難しいのだ!)』
いつもゴーゴー火を使うから、トーストする程度の弱火は難しい様子。こげたトーストを手に呆然としているルビーがとっても可愛くて、つい笑っちゃった。
『(これでどうだ?)』
両面こんがりきれいに焼けて、ちゃんとトーストになってる! さすがルビー! その調子!
『(さっきは笑っていたではないか)』
見られてた。
ルビーがトーストを仕上げて、私がその上にハムステーキとタルタルソースをたっぷり乗せる。
一袋全部真っ黒になっちゃったから買い足して、それもトーストしてもらった。
キッシュもどきもきれいに焼けて、粗熱を取ったらフライパンをひっくり返してまな板に出す。食べやすいように切って、お皿に並べるとボリュームたっぷり朝ごはんの出来上がり!
「出来たよ! ルビーもエンリルもスミちゃんもおいで! 食べよう!」




