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谷の深くに居るものは。





 真っ暗な谷底を、ルビーの背中に乗って進んでもらう。ふたりとも見えてるんだよね? いいなぁ。



『(人間族は不便だな。これしきの暗闇で見えなくなってしまうとは)』



『ぼくも見えるよ! ここ、大きな岩がごろごろしてるねー』



 エンリルもいくらフェニクスとはいえ鳥なのに、鳥目じゃないなんて卑怯っ。



『とりめー?』



 私の世界の翼を持つものは大抵、夜目がきかないものなんだよ。



 いまいちピンと来てないエンリル。

 まぁ、ルビーの灯りがあるからまだ見える方だよね。



 しばらく進んでいると、空気が重くなったような気がした。ルビーに尋ねると、少しずつ毒霧が出て来ているらしい。毒が効かなくても、何だか嫌な感じ。



 『(うむ、酷い臭いだ。トリシャの奴、一体何を調合してこの毒を作っているのだ)』



『そうかなー? ぼく、よくわかんないやー』



 進化したはずなのに鈍くなってる……!



『(鈍いと言うよりは……)』



 ん?



 『(我の気のせいだろう。詮ない事だ)』





……………………





 何だかとっても空気が重苦しい。息苦しさは感じないけれど、空気に重力があるみたい……。



『(守りのドラゴンが威嚇しているからな)』



 威嚇? もうテリトリーに踏み込んじゃってるの?



『(毒のせいもあるが、空気が重いだろう? 主にこれは守りのドラゴンが放つ威嚇のせいだ)』



 ドラゴンこえぇー! 威嚇だけでこの重圧!



『(……)』



 ドラゴン、ここにも居たわ。



『(彼奴にも話が通じたら良いのだがな)』



 ……やっぱり。そんな雰囲気だったもんね! 前に話してた時!



『あれ? ねえ、何か言ってるよー?』



 えっ? ……何も聞こえないよ? エンリル大丈夫?



『ぼくおかしくなってないよ! 聞こえるよ! こっちー!』



 私とルビーは顔を見合わせて、エンリルが先導して進むのに着いて行った。何が聞こえているかは解らないけれど迷いなくエンリルは進んで行き、そしてたどり着いた所には大きな黒い岩があった。





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