谷底のラタトゥイユ。
『(着いたぞ)』
ルビーの声にハッとして顔を上げると、あたりは暗く、見上げると割れた夕焼け色の空が見えた。どうやら谷底まで降下してくれたみたい。かなり深い所にいるようで、数メートル先さえも見えないくらいだ。
「ここがイレイドの谷なの?」
『(そうだ。谷を道なりに南へ進むと更に深くなっている、その辺りから毒霧が舞い始め、守りのドラゴンが目を光らせているはずだ)』
『ぼくの “ばさばさ” しておくね!』
エンリルが私とルビーにエアシールドをかけてくれた。エンリル自身にも忘れずにね。
そういえばお腹が空いたってエンリル言ってたし、このあたりでご飯にしておいた方がいいんじゃないの? この先は毒に侵されているんでしょ?
『(ふむ、そうだな。……今の所、先の教会の奴の気配もない)』
決まりだね! “ショッピング” 使用っ!
『ハーイ! ワンクルーデス! 今日ノゴ用件ハー!?』
相変わらずテンションたっかいなぁ、ワンクルー。
ご希望の白身魚のフライは冷凍のやつを多めに買って、お野菜大好きエンリルのためにラタトゥイユの材料、野菜ばかりだとルビーがふてくされちゃうから、ちょっとお高いウインナーを買ってみた。あ、トマトもラタトゥイユに使うから多めに。
ワンクルーが去ったら、調理開始〜。ルビーが灯りを出してくれたから辺りを見渡してみると、台になりそうな腰くらいの高さの平たい岩があったから、そこへまな板を置いてみた。うん、キッチンぽい。いい感じの高さだ。
ズッキーニ、黄色と赤色のパプリカ、ピーマン、玉ねぎ、きゅうり、セロリ、エリンギ、しめじ、ベーコンは全部2センチ角に切っておく。お茄子はすぐ溶けちゃうから少しだけ大き目に切る。にんにくはみじん切り。トマトはその間に湯むきして、皮をきれいに剥いで粗めのみじんに切っておく。
トマトの湯むきしてたらルビーがすかさず寄って来て、二個くすねていった。
フライパンにたっぷりのオリーブオイルとにんにくを入れて、焦げないようにフツフツさせながらオイルに香りを移す。そしてお茄子を入れて、おいしいオイルを吸わせるように弱火で炒める。
お茄子に火が通ってしっとりしたら、ベーコンをまず入れておいてから残りの野菜を入れて、しっかりと炒める。
お野菜たちがしんなりしてきたら、粗みじんのトマトを入れて薄めに塩コショウをふって、じわじわと水分が出て来たら、顆粒だしと隠し味のお味噌を大さじひとつ溶かして入れる。
後はくたくたになるまで煮込んで、コンソメとケチャップ、中濃ソースで味を整えて更に水分を飛ばせばイオリ特製和風ラタトゥイユの出来上がり〜!フランスパンにガーリックバターを塗って添える。
その後はひたすらフライを揚げて揚げて揚げまくる。ウインナーはボイルしておいてサッと炒めたら出来上がり。とっても手抜……簡単。
「出来たよー! ご飯にしよう!」
『ぼくの大好きなふらいだー! この赤いのは初めて見るね! 美味しそう!』
ルビーがふんふんとラタトゥイユの匂いを嗅いでいる……。あなたの大好きなトマトの香りですよ〜?
『(やはりトマトか。美味そうな匂いだ)』
「食べよう! いっただっきまーす!」
まずはラタトゥイユから。うん、お茄子がしっかりオイルを吸ってて柔らかジューシー。きのこはプリッとしてるし、パプリカやセロリは少し歯ごたえが残っていて噛むと楽しい! 手抜きしないで生のトマト使ったから少し酸っぱさもあるけれど、隠し味のお味噌がうまくまとめてくれてるなぁ。
パンと一緒に食べると、ガーリックバターのふんわりしたいい香りが合わさって更に美味しい。
『……あのね、まよねーずが欲しいな』
エンリルが申し訳なさそうに言う。あっ、タルタルソースも作ればよかった!! ごめんね、エンリル……。
『この赤いのとっても美味しいよ! ちょっと酸っぱいけど、お野菜がいっぱいで美味しい! また今度たるたるそーす作ってね』
可愛いな〜エンリル。またタルタルソースたっぷり作ってあげるからね。今日はマヨで我慢してね。
『(イオリ、この腸詰めは……噛むと弾ける上に肉汁も溢れるほどだ、とても美味いぞ! トマトのやつも後を引く味だな!)』
そうでしょうとも。ウインナー高かったもの。トマトで煮込んであるからか、ルビーもラタトゥイユをもしゃもしゃ食べてる。お野菜全部トマトで煮たりしたら文句言わずに食べられるんじゃないのかしら。
ルビーもエンリルも私も、お腹いっぱい食べて少しだけ休憩してから、先を進む事にした。




