成長、進化、変化。
「ね〜エンリル〜、もういいんだよー?」
朝ご飯の後もずーっと難しい顔したまま、ルビーの背に乗っている私の肩の上でモニャモニャ言っている。モニャモニャは聞き取れなくて、何を言っているのかは解らないけれど。
『(強制しているわけではないのだからエンリルの好きにやらせておいたらどうだ?)』
私のために、ってばかりでかわいそうなんだもん。
『(何がかわいそうなのだ? 力を分けてくれた親に報いたい心は少しもかわいそうなものではないぞ。それに風の魔導はエンリルの属性に合っているが、水は難しいからな。うまくいくとは限らん)』
ルビーも水の魔導は苦手だしね。
『(火の魔導は本能のようなもので理解出来るのだが、水は魔気を練るのが難しいのだ。ただ水を出すだけならば簡単なのだが……)』
大丈夫。私、魔気を練るっていうのも難しくて解らないから!
『(イオリは得意な属性は解らないのか。魔力は高いのにな)』
……。ルビー? どうして私の魔力が高いの知ってるの?
『(……)』
起きてたな!! ゆうべ起きてたなー!
『(外で熟睡するほど衰えてはおらぬからな)』
くっ……。守られている身だから、偉そうに言えない自分がはがゆいっ……!
ルビーと言い合いしていると、肩に止まっていたエンリルがポロリと落ちた。急ブレーキをかけてルビーが振り返り、エンリルをキャッチした。
「どうしたの?! エンリル!」
私の腕の中で抱かれるエンリルが、とっても熱くなっている。意識もないようで、ぴくりともしない。呼吸はしているけれど、とても荒い。
『(イオリ、そこの木陰に行こう)』
…………………………
「どうしたらいいんだろう……」
木陰に横たえたエンリルはますます熱くなって、もう素手で触る事が出来なくなってきた。
『(ふむ)』
ルビーはエンリルに触れて、何かを呟いている。紅竜だから熱いのは平気なんだっけ……。
『(イオリ、エンリルのコートを解いてくれ)』
「わかった。コートエンド!」
ポフンと音をたててエンリルの姿がライグルへと戻った。
『(見ろ、エンリルの身体が変化している)』
額の角が平べったく銀色に光る魔石みたいになっていて、尻尾は6本に分かれて身体はほんのり紅に染まってきている。
「どうしちゃったの……」
『(進化だな。我ら紅竜や地竜なども元々はただの竜から進化する。ライグルの進化は初めて聞くが、イオリの力を分け与えているから例外はありえるだろう)』
「私が何かしてあげられる事はある!?」
『(進化とは成長だ。魔力を分け与え、成長を手伝ってやれば苦しさは多少紛れる。我の魔力もさっき少し分けたがな。だが、分け与えるためには触れなければならぬ)』
「わかった!」
ルビーの制止もきかずにエンリルに触れる。じゅうっ、と肌が焼ける。熱いけれど、エンリルが私のためにしてくれたことを考えたら、これくらい……簡単なこと!!
およそ、魔力の8割を注いだ所で私は意識を失った。




