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エンリルの決意。





 昨日は驚きのあまり、そそくさと狩りを引き上げて宿屋に戻って休んだ。エンリルはもっと狩りがしたかったみたいだけれど、あの“ごっちん”を他人、それもレア個体で稼いでいるひと達に見られたら困る。エンリルに言い聞かせないと、しれっと“ごっちん”しちゃいそうだったし。



 昨夜、口がすっぱくなるほどエンリルに言い聞かせた。



『おはよーあるじー』



「おはよう、エンリ……ル……」



『(立派な角が生えてきたな)』



 エンリルの頭には銀色の角が生えかけている。まだ村で見たライグルの角ほど大きくはないけれど。



「村に居たライグルの角って、白だったよね」



『(そうだな)』



「エンリルのは……」



『(我には銀に見えるが)』



「……ですよね」



 銀色ってことは、完璧なレア個体なんだよね。しかも“ごっちん”は聖魔導って……。



「傷を癒す魔導ってそんなにレアなの? よくゲームとかでは初期に使えるようになるじゃない?」



『(そのげーむが我には解らぬが、普通傷を癒すためには薬草であったり、町で暮らすもの達は魔療院という所へ行き癒しの力を持つ術者に治してもらったりするのだ)』



 私の世界で言う薬や病院みたいなものかな……。



『(それを鑑みると、エンリルの力が規格外なのも頷けるであろう)』



 うん、そうだね。どうしよう……。エンリルは村で生きていく方が危険なく暮らしていけるよね……。



『(危険はないだろうな。村の者が守るだろうし、仲間のライグルに認められさえすれば、群れの長にもなれる力だ)』



 群れの、長……。



「……ねえ、エンリル。あなたはとっても凄い力を秘めたライグルなんだって」



『うん』



「私達と旅をしていると、いずれその力が原因で危ない事に巻き込まれちゃう可能性があるの」



『うん』



「私達はエンリルが大好きだよ。守りたいと思うけど、もしかしたら守れない時も出てくるかもしれない。特に、私は弱いから……」



『うん……』



「私はね、実はこの世界の人間じゃないの。ルビーに力を貸してもらって、自分の世界に帰る方法を探して旅をしているんだけど、エンリルはそれでも私達と旅をしていきたいと思ってくれる? それとも、生まれた村でライグルの仲間と一緒に生きていきたい……?」



『……』



 項垂れて、ほんの少しの間をおいて顔を上げ、まっすぐに私を見てエンリルは言った。



『ぼくはあるじと、るびーといっしょにいたい』



『ぼくも強くなる。ルビーみたいにあるじをまもれるように強くなるから、いっしょに旅をしたい。あるじが困っているのなら、ぼくも力になりたい……!』



『(……決まりだな)』



「エンリル大きくなっちゃったけど、ポムさんにもう少し一緒に旅をしていいか、お許しを貰わないとだめだね」



『あるじ、ルビー、大好きだよ。ぼくを育ててくれてありがとう』



「私もエンリル大好きだよ。一緒に居てくれてありがとう」



『(……)』



「なに照れてんの」



 ルビーは照れくさいのか、尻尾を丸めて下を向いている。うるさい、とボソリと呟いて、ちゃかす私を尻尾で追い払った。



『(あの村の長に許しを貰いに行くのだろう。早く行くぞ)』



 ルビーに急かされながら準備をして、ライグルの村へと向かった。






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