ポイントカード
「いらっしゃいませ」
「また来たよテンちゃん」
「ということは、完全攻略はできなかったんですね」
「この階層までなら安定して来られるんだけどなぁ。……そういえば今更だけどさ」
「どうしましたか」
「テンちゃんも魔族?」
「本当に今更だった。そうですよ、このツノが見えませんでしたか」
「うーん。視界には入ってたんだろうけど可愛さが先に」
「あら嬉しい」
「少しは嬉しそうにしてほしい。言われ慣れているのはわかるけども」
「そんなことありませんよ。初めてかも」
「意外だね」
「ほとんど人と接してこなかったので。このバイトも、社会との接点を持ちたかったから始めてみたというか」
「引きこもり?」
「不本意ですが近いですね。不本意ですが」
「二回言った。店長も人間じゃないの? 普通のおじさんというか、おじいちゃんに見えたけど」
「えーと他人のプライバシーはあまり」
「ほぼ答えをありがとう」
「どういたしまして。こちらのお弁当は温めますか?」
「そのままで大丈夫。今日も一人で店番のようだけど、こんなダンジョンの中で危なくないの?」
「今のところ危険な目に遭ったことはないですね。ぞっとする出来事はたまにありますが」
「例えば?」
「基本的に、瀕死状態で来られると二度見してしまいますよね。血まみれの鎧姿で来店されたりとか」
「重戦士や聖騎士かな。ここは道中の貴重なポーション補給所だし、気持ちはわかるけど」
「けっこう怖いですよ。ボロボロで足を引きずって息切れしながらも『…………肉まん』とだけ言ってくるの」
「食欲には勝てないかー」
「ミノタウロスまんも、多少は回復しますしね。まあ仮にコンビニ強盗が来たとしても、身を守る術はありますから」
「確かに、君はただものじゃなさそうだ」
「そう見えますか?」
「直感かな。そんなに驚く?」
「あーいえいえ。しがない引きこもりですよ私はー」
「根に持たないでよぉ」
「冗談です。危害を加えようとする人間や魔物に備えて、ほら、カラーボールもあります」
「そんな禍々しい色の」
「一発当たれば体に穴があいてパン!です」
「カラーボールってそんな仕様だったか……?」
「投げつけられないようお気をつけください。はい、状態異常回復ジュースと王都の海苔弁で、七〇〇ゴールドになります」
「ありがとう。っと、これで足りるかな」
「ちょうどお預かりします。お客様はポイントカードはお持ちじゃないんですか?」
「お、ポイントカード? 初耳だ」
「来店毎にKPが貯まりますよ」
「KP?」
「棺桶ポイント」
「ド直球! 誰だ名付けたのは」
「十回死ぬとポーション一本無料です」
「時すでに遅しのやつ」
「要らないです?」
「……いちおう作っておくよ」




