ホットスナック
「いらっしゃいませー。こちらのレジへどうぞ」
「あれ、新人さん? いつもの店長のおじさんじゃないんだね」
「何か問題でも? 商品お預かりします」
「いや、可愛い子が入ったんだなって」
「……他の仕事との兼ね合いで、シフトを夜から昼に変えただけです」
「ああ、そうなんだ。偉いねえ」
「連絡先とか渡しちゃうタイプですか?」
「やめてその蔑んだ眼差し」
「失礼しました」
「クセになるから」
「礼が不要とわかっただけで収穫と思うことにします。こちら温めますか?」
「ポーションを?」
「たまにいますよ」
「マジか。最近の流行りはわかんないな」
「あなたもじゅうぶん若いでしょう。これまでに何回、死んで復活してと繰り返してきたのかは知りませんが」
「辛辣。店員さん、お名前は?」
「昨今はクレーマー対策で名札はしないことになりましたから。名乗ったら意味がないのです」
「じゃあ店員だから、テンちゃんでいい?」
「なら店長もテンちゃんですね」
「アッ」
「そして勇者だからユウくん、と言うとでも思いましたか?」
「残念! というか、よくわかったね」
「魔物には見えませんからね。人間だとしたら、こんな辺鄙なダンジョン内部にあるコンビニなんて、最下層にいる魔王の財宝が目当ての奴ぐらいしか来ないでしょう」
「それはそうなんだけど……え、待って、この店って魔物もくるの?!」
「来ますよ。小腹が空いた時とか」
「魔物って小腹が空いたりするんだ……」
「するんです。クシャクシャ、ポイ!」
「ああっ、せっかくどさくさ紛れに連絡先メモを忍ばせたのに!」
「知らない人から物をもらってはいけません。はい、商品はこれで全部ですね。ご一緒にホットスナックはいかがですか?」
「あまり気にして見たことがなかったなあ。激辛地獄チキンに、爆裂ニンニク串、……どれも匂いがヤバいじゃん!」
「どうせ死んだら息リセットですよ」
「事実だとしても嫌!」
「ちなみに、リスポーン直後はそこの棚にあるゼリー飲料がおすすめです」
「まあね、胃に優しいもんね。『蘇生直後の飲酒はお控えください』ってわざわざ貼り紙もしてあるし。誰かやらかしたんだな」
「お察しください。まあ、お客様には聖女なんかのお連れ様もいないようにお見受けしますし。お仲間がいないなら、口臭は気にしなくても問題ないのでは?」
「そういうことじゃない……あれどうしてだろう目から聖水が」
「では、ハイポーション五つと毒消し草ラップサンド二つ、それから激辛地獄チキン一つで一八〇〇ゴールドになります」
「いつの間にか地獄チキンが追加されてる!」
「要らないですか?」
「いや食べる食べます。テンちゃんのおすすめなら頑張って食べますとも」
「毎度あり」
「さっそく味見しちゃおうかな」
「あ、店を出てからでお願いします。会計前に食べられると、仮にレベルアップしたら税計算が狂うので」
「レベルで金額が変わるの?!」
「当たり前じゃないですか。はじまりの村の村人に、ラスダン直前の雪山で周回するゴリラと同じ金額は請求しませんよ。鬼じゃないんだから」
「店舗で値段が違うのってそういうことなんだ……。ところで、これだけお喋りしているのに全く他のお客さんが来ないけど、大丈夫なの?」
「さあ、皆さん夜型なんじゃないですかね」
「ダンジョンに入れば真っ暗だから関係ないけど。それじゃ、行ってきます!」
「またのご来店をお待ちしております……というのはあまり良くないですかね?」
「なるべく再挑戦する羽目にならないよう頑張るよ」




