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カティア、激昂!


「ただいまなのだ〜!」


「おかえりロックス。あなたにお客さんよ」



⠀ドアが開く音がした。

⠀ノックも無しに玄関のドアを開けるのは、家族か空き巣か強引なセールスくらいのもの。ならば高い割合で家族の帰宅。

⠀夫のローガンは職場のマヨネーズ工場におり夜まで帰って来ない為、ドアを開くのは十中八九ロックスだ。

⠀息子の帰宅に、オリビアは来客がいる事を伝える。



「珍しいのだ。アイリ先生もこんにちは。今日って家庭教師だっけ?」


「こんにちはロックスくん。今日は家庭教師じゃなくて、この子連れてきたの……君に会いたいって……」



⠀話を続けようとしたアイリだが、裾を引っ張られ中断する。

⠀カティアが横目に睨みながら小声で話しかけてきた。



「ガキじゃないの……」


「え?」



⠀カティアにはここに来るまでの時間で、ロックスが10歳である事は話してある。

⠀契約結婚なるものの詳細は教えてもらえなかったが『結婚』を冠する以上は年齢の話題は避けられない。

⠀規定では婚姻の年齢条件は記されていないものの、大多数に『結婚は大人になってからするもの』と認識されている。


⠀故にロックスの年齢も話し、カティアはそれでもいいと言っていたのだが……。



「ガキって……ロックスくんは10歳だって言ったよね?⠀カティアちゃんもそれでもいいって……」


「ここまでガキ臭いと思うわけないでしょ!?⠀この知性を感じないアホ面!⠀何も考えて無さそうな能天気な声!!⠀甲斐性の欠片も無さそうな間抜けな雰囲気!!⠀あまりにダサい!!⠀どんなスキルがあろうと関係ない!!⠀こんなダサいのと結婚するくらいならどこかの妾になる方がまだマシよ!!」


「言い過ぎだよカティアちゃん!⠀ロックスくんは素直で優しい良い子だよ!⠀謝りなさい!」



⠀一瞬で激昂。

⠀これでもかとロックスへの暴言を撒き散らすカティアに、アイリも即座に諌める。

⠀次いで、母オリビアも口を開く。



「なんて失礼な子!⠀いくらロックスがアホで能天気で間抜けでダサくても、貴女に勝手に言われる筋合いはないわよ!!」


「オリビアさん!?⠀なんで母親の貴女が半分同意してんですか!」



⠀ロックスを擁護してくれるものと思ったが違った。

⠀この母にとって、愛する息子への侮辱は許せなかったが、内容はそんなに否定できないところだった。



「とにかくちゃんと謝らなきゃ駄目だよ!⠀そんなに言われたらロックスくんも傷付くんだから……!」


「このあたしに指図しないで。あたしはカティア・グライゼン。重力にすら逆らう女よ」


「僕は気にしてないからいいのだ。それよりカティアちゃんって言うの?⠀僕はロックス。よろしくなのだ」



⠀ロックスに傷付いた様子はなく、いつもの能天気な顔でクッキーをつまむ。



「ああそう。もう会うこともないけど。よろしくしてあげる」


「ぅぅ……ロックスくんは気にしてないかもしれないけど……もうカティアちゃんとは会わないかも知れないけど……」



⠀どうにも理不尽さを拭えない。

⠀せめて後で、ロックスへのフォローと、理不尽な少女を招いてしまった謝罪はしておこうと誓うアイリだった。

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