09.運用実験計画
結局、撮影会の時間は数十分続いた。
そこで確信した。ニワさんはやはり、同志を集めたのだと。
「お兄様!見て下さい!超油圧シリンダーの実物ですよ!瞬間出力が通常重機の10倍らしいです!」
「ああ!そうだな!…じゃなかった、そうですね」
ティアさんは油圧シリンダー部分に感動するマジモンだったし。
「オペレーターくん!ニワさんがオペレーターくんと一緒なら操縦席見学も大丈夫って行ってくれたんで、付いて来て貰っていいっすか?操縦席周りは取り付け作業だけで中身まだ見てないんっすよ!」
「ずるいわ。レイさん。私も行く。電源は切られてるみたいだけど、触ってはいけないところは教えてちょうだい」
成人済みのレイさんとエルさんも、操縦席の見学で笑顔になっていた。
ちなみに、操縦席に座る体験でエルさんの足が下まで届かなかった時、一瞬、笑顔が消え、なんとも気まずい。
後、いつのまにか、後ろに並んで居たティアさんとニワさんには軽い恐怖を覚える。
俺も各所を業務の一環と自分に言い聞かせながら、写真に収め、充実した時間を送ったのだった。
「ふぅ、満足満足。ではもう皆で早退して、アジダハーカを肴に親睦会でも……と行きたかったのだが!」
一瞬、同意をしようとした自分もいたことは内緒にしよう。
「ついに、いよいよ!明日からの『先端重機開発室の今後』について話そうじゃないか!
ああ、段取りに付いての苦情は、社内メールで寄越したまえ。一読はすると約束しよう。
さて、今日までに、予算と情報は十分にあった。そして、ヒトとモノも揃ったと言えるだろう。
『机上から現場に』をテーマに一ヶ月以内の現場での運用実験計画を発動する。
未だに疑問視されるのだよ。たった一台の重機で、対抗は可能か、と。
その問いに対する今の答えはこうだ。『理論上可能』と。
だが、近いうちに、今までよりも迅速かつ適切に『対応可能だった』と言えるようになるのが目標だ」
そこで、ニワさんは、俺達一人一人に向き合った。
「ガズくん。キミには、シミュレーターの経験を生かし、実機運用実験をこれから行ってもらおう。
機体整備班との打ち合わせや、操作感のヒアリングの時間も増える。
こちらについては、レイくんにも関わり有る話だ。二人で話す機会も増えるだろうね。
レイくんは、その打ち合わせを元に機体へのフィードバックや調整。
実機運用試験後の機体チェック等も業務も増えてくる。
各種書類作成の不明点については、エルくんを頼るように。
エルくん。キミには、そのサポートもあるが、ワタシの関係各所との打ち合わせも増える。
それに同行しつつ、議事録の作成等を依頼するつもりだ。
もっとも、リモートの場合が大半だから、自動記述の内容の確認が主になるかな。
数時間の会議の結果が、A4一枚になれば実りある会議だったと言えるほうさ。
それから、備品の補充、発注などはガズくんも端末の扱いには慣れているから、忙しい時には頼るように。
ティア。キミは本日より、サブオペレーター候補生からサブオペレーターに昇格。
クリンタ号の実機運用を手伝ってもらおう。
他の時間は、三人の補佐を頼むよ。
さぁ!今より、アジダハーカの開発の第二章の幕開けだ!」
そうやって、アジダハーカを背にニワさんは、宣言した。
俺達は各々頷き、明日からの勤務に思いを馳せる。
仕事は増える、だがやりがいがある。仕事仲間もいる。明日が楽しみだった。
「ところで、ニワ姉様。一ヶ月以内に、現場での運用実験が可能なところに巨大災害は発生するのですか?」
「いや、それはわからないね。今の所20%しか」
ティアさんが一番、明日では無くて現実を見ていたのかもしれない。
発生まではアラートシステム頼りか。
「さて、開発室に戻りながら、好きな料理の話でもしようか。
今日は皆、定時退社で親睦会の予定だ。店は少人数だったし、まだ決めて居ない」
初耳なのだが。いや、そう言えば、数日前に今日の予定を聞かれたような……。アレって、親睦会の計画の一部だったのか。
「何でも食べます」
「肉っすかね。調理法は何でも好きっす」
「魚、かしら。ただ、尾頭付きと活け作り、目が合うのは苦手ね…」
「日本食が好きです!」
「よし、今日は旨い天ぷら店に行こうじゃないか!
無論、奢るよ!肉でも魚でも何でも好きに頼みたまえ!」
「「「「おぉー!」」」」
「…気のせいかな、ワタシの話の時より盛り上がってる?」
ロボットを肴に食べる天ぷらは大変美味しかった。
カウンターの天ぷら店に初めていったのは、入社半年後の2050年10月3日月曜日の日の出来事だった。




