二十一
なーんてね。
超絶イケメンさんに、勘違いさせるつもりは微塵もないんだろうなって思う。
ここまでイケメン力が高いと、何気ないことを言っても格好良くなっちゃうものなんだよ。
きっと、いつもこうやって女の子に勘違いされて、大変な思いしてきたんだろうなぁ。
だからこその“誰にでも優しい訳じゃない”なんだろう。
…本当はこんなに優しいのにね。
ただ普通に接しただけなのに気があるように勘違いされ、少しでも優しくすると彼女面される。
きっと、今までそれが日常茶飯事だったんじゃなかろうか。
特に超絶イケメンにアプローチする女って自分に自信がある人ばっかだろうし。
つーか自信がなきゃ、自分から超絶イケメンの隣になんていけない!
たまにいるじゃん?
自分を好きにならないはずがない!って自信を漲らせてる女。
あんな勘違い女に付き纏われたら、たまったもんじゃないよね!
超絶イケメンさんがそういう女の被害にあったかどうかは分からないけど、優しい超絶イケメンさんにもう優しくしたくないって思わせた人がいるんだろう。
または優しくする相手を選ぶようになる何かを経験したことがあるのか…、どっちにしろ良い思い出にならない事があったのは間違いない。
ご愁傷様、なむなむ。
その点私は、自分に異様に自信がある訳じゃないし、勘違いもしないから心配いらない。
優しくしても無害だ。
どんどん優しくしてくれたまえ。
「優しくしてくれて有難うございます。優しくする相手は選ばないと、勘違いされたら面倒で大変ですもんね!格好良過ぎるのも大変ですね」
「…。俺は、君だから優しくしているんだが?」
「大丈夫です。分かってますから!私は勘違いしないので、心配しないで下さっ痛い!」
喋ってる途中で急に右手に痛みが走った。
えっ、なに?!と慌てて痛む右手を見たら、忘れていた存在があった。
残念さんの左手。
みんな覚えてた?
私は、すっかり忘れてたよ~。
そういや握られてたよね!
やっぱり、こういうのは意識してるから駄目なんだよ!
さっきは意識し過ぎてたから余計に、溢れんばかりのイケメン力とエロさにあてられちゃったんだと思う。
凄まじきイケメン力…。
…なんかだんだん、イケメン力を戦闘力のように扱い始めてる私がいる。
そのうち、イケメン力53万!とか良い始めそうw
やだーっ、頭の中にスーパーイケメン人になってる超絶イケメンさんが現れちゃったんですけどー。
イメージは悟○じゃなくてベ○ータね!
ピンポイントでスーパーなベジー○さんが浮かんできて、マジ吹きそう。
慌てて下を向いて、笑いを堪える。
「すまない。そんなに痛かったか?」
タイミングもあり痛みを我慢していると勘違いしてくれた超絶イケメンさんに乗っかり、浅い呼吸を繰り返し噴出すのを堪えた私は、滲み出した目元の涙を指で拭いながら、
「痛かったです。急にどうしてですか?」
さり気なく意識を会話に切り替える。
ここで普通の女の子なら、大丈夫ですとか言うのかもしれないけど、私は言えない。
だって痛いものは痛かった。
さっきは痛いぐらい握って来た手が、今度は労わるように手を撫で始める。
どう考えても超絶イケメンさんの触り方はエロい。
存在がエロい。
エロ神であらせられるスーパーイケメン人ぶふっ!
ん、ゴホッ、超絶イケメンさんが、エロいのが全部いけないと思うの、ふふ。
ソウ私ハ悪クナイ!
「悪かった。わざとじゃないんだ。思わず手に力が入った。大丈夫か?」
言いながら手の甲をするりと撫で上げてくる。
ただ撫でられてるだけだというのに、なんでこんなに官能的なんだろうね?
「大丈夫は大丈夫ですけど、あの、そもそもこの手がなんなのか分からないですし、離してもらえませんか?」
言った。言ってやった!
ふぅ~、やっと言えたぜぇ~!!
これ以上の官能はご無沙汰の私にはキツイんで、そろそろ本気でやめて欲しいんだよね。
離してくれる、そう疑っていなかった私に超絶イケメンさんは、
「離したくない」
腰に響かせようとしてるとしか思えないドエロボイスで、想定と違うことを言って来やがる。
不意に与えられた背中を駆け上がる快感。
声だけでこの破壊力を叩き出せる超絶イケメンさんに、身体が震えた。