↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能カフェ  作者: ノア
PR
1/4

不気味な手紙編

『異能学級』と同じ世界のお話です。


今回の舞台は、なぜか異能者たちが集まってくる小さなカフェ。


少し不思議で、のんびりとした彼らの日常をお楽しみください☕

 ある街に小さなカフェがあった。どの時間に行っても必ずお客がいる不思議なカフェ。

 青年がこの店を訪れるようになって、まだ数回。しかし妙に安心する居心地の良さを感じていた。マスターと話すようになり、今では愚痴を吐き出せる場所にもなっていた。

 青年は今日もカフェにやって来た。扉を開けるとコーヒーの奥深い香りに包まれる。

「いらっしゃい」

「いらっしゃいませー」

 アルバイトの少年に案内され、カウンター席に座る。青年の他にも3人のお客がいて、それぞれのテーブルに座っていた。

「古賀さん、何だか今日、元気ないですか?」

 バイトの少年はコーヒーを置き、尋ねた。普段の古賀はイスに座るやいなや会社の愚痴を喋ったり、コーヒーやスイーツの話をするほど、おしゃべりだった。しかし今日は珍しく、暗い表情で俯いていた。

「バイト君、マスター、聞いてよ〜。この前、カードケースを落としちゃったんですよ〜。ほんとに最悪……」

 古賀は重い口を開き、バイトの少年とマスターにため息交じりに吐き出した。

「大切なものなんですね」

「免許証とかポイントカードはもちろんなんですけど、写真も入ってて…」

「どこら辺で落としたのかも分からないのかい?」

「◯☓公園だと思うんですけど……。どこに行ったんだよ…」

 古賀はそう呟き、机に突っ伏した。すると、後ろでイスを引く音がした。

「それ、私なら見つけられるかもしれないです」

「え?」

 古賀が振り返ると、離れたテーブルに座っていた四十歳くらいの女性が立ち上がり、古賀の傍までやって来た。

「おや、牧野さん」

「とても困っているように思えたので、声をかけてしまいました。勝手にお話を聞いてすみません」

 牧野は古賀の隣の席に座った。

「それは大丈夫ですが、あなたには探し出せるんですか?」

 古賀は訝しげに問いかけた。牧野はそれを気にする様子もなく、頷いた。

「◯☓公園っていつもネコさんがいるんですよ。カードケースを落としたときもいませんでしたか?」

「えっと、多分いたと思います…」

「それから、そのカードケースの特徴を教えてください」

「青いケースで、カード類が何枚か入ってます。あと、実家で飼ってるイヌの写真を入れていたんです」

「イヌ、ですか」

「はい!めったに撮れない、変な顔してる写真なんです」

「それは見つけないと、ですね。少し待っていてください」

 牧野は立ち上がり、迷いのない足取りで店を出た。

「え?」

 古賀は閉まった扉を見つめていた。別のテーブルに座っている30代前半の男性が声をかけてきた。

「心配しなくても、牧野さんに任せとけば大丈夫だって」

「え?どういうことですか?」

「まぁまぁ、コーヒー飲んで、ちょっと待ってろよ」

「おかわりはいかがですか?」

「えっと、じゃあ、お願いします…」

 本当に見つかるのだろうか。古賀はコーヒーを飲みながら、何度も店の扉へ視線を向けた。


 数十分後、

「お待たせしました。ありましたよ」

 扉を開け、牧野が古賀に声をかけた。

「え?」

 彼女は持っていたカードケースを古賀に差し出した。

「これ、おれのだ!ありがとうございます!助かりました!」

 中をのぞくと取られたカードもなく、写真も残っていた。

「良かった…。どこに落ちていたんですか?」

「公園のベンチ側の草むらです」

「そんな所に…。あ、そういえば、ベンチに座ったような…。でも、この短時間で、どうやって見つけたんですか?」

「そこのベンチがお気に入りの黒猫さんがいるんです。その子が『人間が何か落としていった』って教えてくれました」

「…ネコが?教えてくれた?」

「はい、そうです」

「…牧野さんはネコと、話せるんですか?」

「そうです。簡単なことだけですが」

「どうやって?」

「あなたは、異能者って知ってますか?私はそれなんですよ」

「え?」

 古賀は驚き、固まった。異能者の存在は知っていたが出会ったのは初めてだった。「異能者」という言葉と、目の前の穏やかな牧野が青年の中でなかなか結び付かない。そもそも自分はそうだと他人に知られていいものなのか。

「俺もそうだぞ!」

 先程の30代前半の男性が声を上げた。そちらを振り返ると男性が笑った。

「あ、ちなみにこいつもそうだぜ!」

 男性は隣に座る古賀と同い年くらいの男性を指さした。

「勝手に言わないでくださいよ…」

 この男性も否定しなかった。

「え?…ってことは……」

 古賀はマスターの方を見た。

「私は違うよ。」

「ここって異能持ってる人がよく来るんですか?」

「そうなんだよ。不思議とね」

「マスターが集めてるとか?」

「んなわけないでしょ」

「何でなんでしょうね〜」


 数日後、古賀がカフェに行くと、あの時の三人が揃っていた。古賀は一人で座っている牧野の元に歩み寄った。

「こんにちは、牧野さん。お隣いいですか?」

 牧野は読んでいた本から顔を上げた。

「古賀さん、こんにちは。どうぞ」

 相席し、マスターにコーヒーを注文すると牧野の方に向き直った。

「この前はありがとうございました!」

 古賀は頭を下げた。そして顔を上げると牧野に尋ねた。

「牧野さんってどんな動物とも喋れるんですか?」

「そうですね」

「すごい…!」

「古賀さんはご実家でどんな子を飼っているんですか?」

「柴犬です!今度、こいつと話してみてくれませんか?」

「もちろんです」

「やった!楽しみ。異能ってすごいですね!」

 古賀と牧野は楽しそうに談笑していた。少し離れたテーブルでは、二人の男性がその様子を眺めていた。

「あの二人、もう仲良くなったんだ」

「牧野さんの異能、動物好きからしたら羨ましいもんな。俺もあっちの異能がよかったぜ」

 三十代前半の男性――兵藤は、コーヒーを口に運んだ。

「それにしても、古賀さんって異能者への偏見、全くないですね」

 その隣に座る大川は呟いた。

「単純そうだもんな!」

(あなたが言いますか…)

「…なんか言ったか?」

「いえ、何も」

 古賀は男性二人の方を向いた。

「そういえば、お二人も異能者なんですよね。どんなものなんですか?」

「僕のは…」

「秘密!すげぇのだから期待しとけ!」

「おぉ、楽しみだ…!今度見せてくださいね!」

 古賀は目を輝かせた。すぐに牧野に向き直り、カードケースから写真を取り出した。

「これがうちの子です!」

「ふふ、かわいらしいですね」

「でしょ、でしょ!で、この写真が――」

 楽しそうな声を背に大川は兵藤をじっと見た。

「兵藤さん……」

「……悪ぃ、ノリで」


 よく晴れた十一月半ばのある日。いつもの賑やかさとは異なり、カフェにはマスターがカップを洗う音が店内に響いていた。古賀、牧野、兵藤、大川がテーブルを囲み、大川は頭を抱えていた。

「どうしよう……」

 彼はため息をついた。古賀はいつもと様子の違う大川が気になり、尋ねた。

「さっきからその調子ですね。一体どうしたんですか?」

「不気味な手紙が、一週間くらい前から毎日届くんです……」

「どんな手紙なんですか?」

 大川はカバンから七通の封筒を取り出し、テーブルに並べた。ゆっくりとした動作で封筒から便箋を出していく。

「……これです」



『最近、よく眠れていますか。

夜は静かでいいですね。

あなたもそう思いませんか。』


『復月が近づいています。

月は静かにこちらを見ています。

あなたもそう思いませんか。』


『鳥は空を飛びます。

でも、帰る場所は忘れません。』


『時計の針は進み続けます。

止まっているように見えても。』


『月が半分になるのは、いつだろう。

未だそのときは来ない。

あなたは知っていますか。』


『落としたものは、拾えば戻ります。

失くした時間もそうでしょうか。』


『最も寄ることの多かった公園で待つ。


ただならぬ気配をまとい

何かを隠すように笑う

影から君を見ているもの より』



「…気味が悪い手紙ですね」

「意味わかんねぇな。ただのいたずらじゃねぇのか?」

「ただのいたずらで7枚も送ってきますか⁉家に両親いるから心配されるし!それにこれ、切手も消印もないんですよ!」

 大川は店に響く程の声を出した。

「そ、そうだよな」

「気味悪ぃ。なんなんだよ、もう…」

 大川は机に突っ伏した。

「…大川さん、何だか疲れてます?」

 古賀は兵藤に小声で尋ねた。

「こいつ、少し前まで仕事関係でゴタゴタしてたんだよ」

「そうだったんですね…」

「私たちでできることなら、解決してあげたいですが…。これは、難しいですね」

「月って言葉が多いですね。ってことは夜に何かあるってことですかね?」

 古賀たち三人は手紙を何度も読み返したり、透かして見たりしたが、何も分からなかった。古賀はふと、以前利用した、ある場所のことを思い出した。

「あ、あそこなら…」

 古賀はうなだれている大川の肩を叩いた。大川は顔を上げた。

「古賀さん?」

「あの、この手紙の謎を解決できそうな所、俺知ってます!」


 古賀はテナント募集の張り紙が出されている古びたアパートの前に立っていた。ここの一室に、古賀が以前世話になった『便利屋』がある。文字通り、依頼されれば何でもやるらしい。古賀は以前、ここを訪れた時のことを思い出す。あの時は何度もめんどくさいと断られたが、古賀は引き下がらず、必死に頭を下げた。そして、最終的にはため息をついて向こうが折れ、無事解決した。解決までが素早く、腕は確かだと思った。

(でも、ここの人、顔怖いんだよな〜)

 便利屋の店主の男は、終始ぶっきらぼうな話し方で古賀をビビらせていた。

 便利屋の扉の前に立ち、深呼吸して、ノックする。

「…入れ」

「……失礼します」

 部屋には40歳程の目つきの鋭い男が一人、コーヒーを手に立っていた。

「…またお前か。今回はなんの用だ?」

(覚えてくれてた!)

「実は、変な手紙が知り合いに届きまして、解読してもらえたらと…」

「見せてみろ」

 古賀は大川から預かった7枚の手紙を便利屋に見せた。便利屋は手に取り、一枚ずつ目を通していく。全ての手紙を読めたであろうタイミングで古賀は恐る恐る問いかけた。

「……わかりますか?」

「わからん」

「そんな…」

 古賀がうなだれると、便利屋は続けた。

「そもそも、この手紙、意味があるのは数枚じゃないのか」

「と、言うと?」

「全く意味がないものが混じってるんじゃないかってことだ。それが分かればいいんだがな」

「なるほど」

 思いつかなかった考えに古賀は感心し、メモに残した。

「それから、『最も寄ることの多かった公園で待つ。』って文章だ。『多い』じゃなく『多かった』ってことは、昔のそいつを知ってる奴が送り主なんじゃないのか」

「知り合いに聞いてみます!」

「俺が思いついたのはこれだけだ」

「ありがとうございます!参考になりました!」

古賀は立ち上がった。

「お代を…」

「解読してないから、いらん」

「でも、」

「こんなんで金取れるか」

「……ありがとうございました。失礼します」

 古賀は何度も頭を下げ、扉をゆっくりと閉めた。

(やっぱり怖ぇ。でも、いろいろヒントくれたぞ!)


 古賀は急いでカフェに戻り、扉を開けた。

「戻りました!」

「何かわかりましたか?」

 大川は顔を上げた。

 居残り組もケータイで手紙の写真を撮り、頭を悩ませていた。

「お疲れ様です。コーヒー淹れましょうか?」

「お願いします!」

 マスターはカウンターに戻り、コーヒーを淹れ、テーブルに置いた。マスターも手紙の内容が気になるようで戻ろうとしなかった。

「ありがとうございます」

 古賀は熱々のコーヒーを少し飲み、便利屋で聞いた内容を披露した。

「便利屋さんにも解読はできなかったんですが、ヒントをもらいました。一つ目は七通の内、意味のないものがいくつか混じっているんじゃないか、ということ。二つ目はこの部分です。『多い』ではなく、『多かった』と書かれていることから、知り合いの可能性はないのか、ということです」

「なるほどな。ダミーが混じってるってことか、思いつかなかったぜ」

「でも、どうやって偽物を見分ければいいんでしょうか?」

 再び手紙に見入ったが、どれも同じように見える。どれに意味があり、どれがダミーなのか判断がつかない。

「……わからない…」

 しばらく頭を悩ませても答えが分からず、唸っていると、兵藤がコーヒーを目の前に置いた。

「頑張れよー。ほれ、マスターが淹れてくれたコーヒーでも飲んでリフレッシュしろ!」

「ありがとうございます」

 古賀はコーヒーを一口飲んだ。

「熱っ!これ、何でこんなにアツアツ!?ちょっと前に淹れてもらったのに!」

 慌てて、コーヒーカップを机に置いた。危うく舌を火傷するところだった。

「俺の異能だよ。コーヒーはアツアツの方が旨いだろ」

 兵藤はにんまりと笑った。

「…ありがとうございます?…って、ちょっと服にこぼれた!シミになったらどうするんですか!熱くするならするって言ってくださいよ!」

「お前の服黒いから、そんなのわかんねぇって。大丈夫だぜ!」

 古賀と兵藤が言い争う横で、大川はじっと手紙を見ていた。

「色……。あ…」

「大川さん?どうしました?」

 牧野は大川の呟きに首を傾げた。

「…この紙、色が違う」

「色?全部白色じゃないですか?」

 古賀が兵藤との言い争いを終わらせ、尋ねた。紙の色に違いはないように見える。

「違う。こっちは白色、こっちは少し青みがかってる」

 大川は机に並べられた手紙を二組に分けた。

「こっちは白色」


『最近、よく眠れていますか。

夜は静かでいいですね。

あなたもそう思いませんか。』


『鳥は空を飛びます。

でも、帰る場所は忘れません。』


『時計の針は進み続けます。

止まっているように見えても。』


『落としたものは、拾えば戻ります。

失くした時間もそうでしょうか。』


「こっちは青色。」


『復月が近づいています。

月は静かにこちらを見ています。

あなたもそう思いませんか。』


『月が半分になるのは、いつだろう。

未だそのときは来ない。

あなたは知っていますか。』


『最も寄ることの多かった公園で待つ。


ただならぬ気配をまとい

何かを隠すように笑う

影から君を見ているもの より』



「便利屋さんが言ってたのって、こういうことなのかな…?」

 大川が尋ねると、古賀は頷いた。しかし、手紙を二組に分けても、法則性は分からなかった。

「さっきから思ってたんですけど、この『復月』ってどういう意味なんですか?」

 古賀は『復月』を指差し、隣にいる兵藤に声をかけた。

「俺が知ってるわけないだろ。調べろ」

 スマホを取り出し、検索をかけた。

「復月っと。……えっと、11月の呼び方の一つみたいですね。珍しい呼び方みたいですね」

 大川は古賀が指さした『復月』の文字をじっと見ていた。

「……やっぱり、この文字、色が違う」

「一緒じゃないですか?」

「違う」

「…よくわかりますね」

「ということは青い紙の方に色の違う文字があるかも…」

 大川は手紙を凝視し始めた。

「『復月』だけ少し色が違う……。こっちは『半月』と……『未』」

 周りにいる古賀と兵藤は邪魔をしないよう、声量を落として話していた。

「大川さん、よく色が違うってわかりますね」

「あいつ、色覚が鋭い異能なんだよ」

「へぇ、異能だったんですね。すごい」

「…お前、俺にすごいって言ったか?」

「え…。兵藤さんの異能もすごいですよ!」

 大川は周りの雑音を気にする様子はなく、解読を進めていた。

「これは、昔よく行ってた公園…?……それから、この三行の最初の文字……た、何、影……」

「……田中ぁ!?」

 大川は声を上げた。


「びっくりした。解読できたんですか?」

「うん、一応…」

「俺等にも教えてくれよ」

 大川はテーブルに手紙を広げ、説明を始めた。

「うん。まずは色の違う紙の方に色の違う文字がありました。その文字は『復月』『半月』『未』と『た』『何』『影』。『復月』の意味は11月。『半月』は月の半分、つまり15日。それから『未』。十二支の未は、昔は時刻を表すのにも使われていて、未の刻は今でいう13時頃。…それから最後の『た』『何』『影』は『ただならぬ』の“た”、『何か』の“な”、『影』の“か”、つなげると、たなか……。それから、『最も寄ることの多かった公園』は、たぶん××公園だ。昔、田中と一番よく遊んでた場所だから。これをつなげると、『11月15日 13時 ××公園で待つ 田中より』と解読できる」

「おぉ、すげぇな、ちゃんと意味ある文章になった」

「大川さん、すごいですね!」

 解読できたことを喜ぶ古賀と兵藤とは反対に大川は浮かない表情をしていた。

「…田中。しかも今日だし……」

「お知り合いですか?」

「幼馴染…」

「わざわざこんなめんどくせぇ手紙作るとかおもしれぇ奴だな!」

「……」

「幼馴染からの手紙、嬉しくないんですか?」

 大川は重い口を開いた。

「……少し前まで、僕、社畜で…。田中から連絡が来ても、既読スルーしてたし…。次第に連絡も来なくなって……。会いづらいなぁ……。」

 大川が力なく言った。その横で牧野が立ち上がった。

「牧野さん?」

「相手がこんなに手間のかかった手紙をくれたのに、無視するなんて失礼です。ウジウジしてないで早く行きなさい」

 普段の穏やかな彼女からは想像できない言葉に、三人は目を丸くした。

「……そうだ、牧野さんの言う通り。…行ってくる」

 大川は立ち上がった。

「マスター、お代…」

「後でいいから早く行ってあげなさい。報告待っていますよ」

 マスターは微笑んでいた。

「はい、ありがとうございます。行ってきます」


 13時を少し過ぎて、大川は××公園に到着した。公園を一周しようと歩いていくと、見覚えのある姿の男がベンチに座っていた。

「田中!」

 男はその声に顔を上げた。

「うぉ、ほんとに来た」

「何だよ、お前から手紙送ったくせに、その言い方」

 大川は田中の隣に腰かけた。

「あんな不気味な手紙でわかるのかな、と」

「そうだ!何だよ、あの手紙!めちゃくちゃ怖かったんだからな!」

 唾を飛ばさんばかりの勢いで詰め寄った。

「そんなに怖がってくれたなら、作った甲斐があったわ。普通に連絡したって、また既読スルーされると思ったからな。だから、無視できねぇくらい気味悪いの送ってやろうと思って。」

「方向性がおかしいだろ!」

 大川の声が公園に響いた。田中は声を上げて笑っている。その笑い声が収まるのを待って、大川は視線を落とした。

「……田中、ごめん。連絡何回もくれたのに、無視して……」

「いいって、気にすんな。社会人になったら色々あるもんな」

 昔の田中からは想像できない、静かな口調だった。こいつも大人になったのだとふと思った。

「…田中は、この街に帰って来たのか?」

「そうそう。インフルエンサーになって一山当てるって大口叩いてたのに、負けてすごすご帰ってきましたよ」

「そっか…。でも、まだ僕ら若いし、他のこと色々やろう」

「そうだな。…やっぱお前、変わんねぇな」

「そうかな。……そうだ、僕、社畜だったって言ったじゃん?で、今は無職。辞めた理由、聞いてほしい」

「何?」

 大川は深呼吸を一つして、口を開いた。

「僕、多分、異能者なんだ。他の人には同じに見える色を見分けてたら、上司に気味悪がられてさ。『お前、異能者じゃないのか』って。古い体質の会社で、あの事件のことがあって、異能者の疑いある人間はすぐに辞めろってクビになった。結果的に社畜から解放されて、今は健康になったし良かったけどな」

 大川は一息に喋った。会社の人間から向けられた奇異の目を思い出した。無意識に手を強く握っていた。

「そうなのか。…異能者だろうがなんだろうが、お前はお前だよ」

 田中は迷うことなく答えた。大川の手が緩む。

「…お前が異能者に偏見ない奴って分かってたけど、安心した」

 大川は立ち上がった。

「行きつけのカフェがあるんだ。一緒に行こう」


「ところで、僕がこの手紙の謎解けなかったらどうするつもりだったんだよ?」

「夕方まで待って来なかったら、電話するつもりだったぜ」

「じゃあ、最初からそうしろよ!」


 カフェに大川が戻って来た。

「戻りました!」

「おかえり〜」

 古賀たち三人の声が重なった。

「おかえりなさい。コーヒー飲みますか?」

 マスターもカウンターから声をかけた。

「お願いします!皆さん、こっちが手紙の犯人、田中です!」

 大川は一緒に入ってきた青年をみんなに紹介した。

「はじめまして!田中です。大川がお世話になってます!」

 田中は頭を下げ、大川に小声で尋ねた。

「この人たち、お前の友だち?」

「そうそう。あ、ちなみに僕が異能者って知ってるから」

「…じゃあ何で俺のときはあんなに緊張してたんだ?」

「拒否られたらどうしようかと、考えて…」

「変な所で心配症だな。」

 田中は苦笑した。

 それから田中も交え、みんなでおしゃべりをした。早くも古賀や兵藤と打ち解けていた。

 大川は席を移動し、牧野の隣に座った。

「ちゃんと会えてよかったですね。」

「はい。牧野さんが背中押してくれたおかげです。」

「私は何もしてませんよ。最後に行くと決めたのは大川さんです。」

「ありがとうございます」

 閉店時間まで会話に花を咲かせ、大川と田中は飲みに行った。

「手紙の謎、解決してよかったですね。」

 古賀、兵藤、牧野、マスターは二人を見送った。二人は肩を組んで笑っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。