第30話:最終決戦
ジムは岸壁を駆け上がり、旗艦の甲板へと飛び乗った。
シルバーはすでに彼の存在に気づいており、隻眼で静かに見つめていた。
二人の間に、言葉はいらない空気が流れた。これが最後の戦いになることを、お互いがはっきりと感じていた。
ジムは持っていた銃を甲板に投げ捨て、腰に差していた剣を抜き放った。呼吸は安定し、視線は冷静そのものだった。
シルバーは義足を鳴らしながら一歩前に出る。堂々とした振る舞いのまま、剣を構えた。
「来たか、ジム・ホーキンズ」シルバーの声は低く、落ち着いていた。隻眼がジムをまっすぐに捉え、口元には冷たい笑みが浮かんでいる。
「ああ。ここで終わらせる、シルバー」ジムは剣を構え直しながら、静かに答えた。声に揺らぎはない。怒りの炎を内に秘めながらも、冷静さを保っていた。
「ふっ……トム・ゴールドの孫らしく、根性だけはあるようだな。お前のじいさんは最後まで逃げ隠れして死んだが、お前はわざわざ俺の前に出てきた」
「ここで終わりだ、お前が奪ったもの、殺した命……全部、ここで清算する」
シルバーは義足をコツコツと鳴らし、ゆっくりと剣を構えた。
「望むところだ。長く続いた因縁を、今日で終わらせてやる」
それ以上の言葉は必要なかった。
ジムは低く構え、一気に踏み込んで切りかかった。剣が鋭く閃き、シルバーの肩を狙う。シルバーは冷静に剣を合わせ、重い一太刀で真正面から受け止めた。金属が激しくぶつかり、甲高い音とともに火花が散る。
「甘いな、小僧!」
シルバーが体勢を崩さぬまま、ジムの剣を弾き返し、逆に大きく振り下ろした。重い斬撃が頭上から襲いかかる。ジムはとっさに身をひねり、剣先が頰をかすめて後ろの帆に食い込んだ。ギリギリのところで交わした。
「くっ……!」
ジムはすぐに体勢を立て直し、今度は低い位置から突きを繰り出す。シルバーはそれを重い斬撃で払いのけ、続けざまに横薙ぎを放つ。ジムはかがむようにしてその剣を潜り、足元を狙って切り上げた。シルバーは義足を生かしてわずかに体を反らし、辛うじてかわす。
甲板を踏み鳴らす音、剣が交錯する甲高い響きが連続して響く。ジムの素早い連撃をシルバーが力強い一太刀で受け止め、シルバーの重い斬撃をジムが身軽にかわして反撃する。
息が上がり、汗が額を伝う。だが、どちらも一歩も引かず、互角の戦いが続いていた。
そんな乱戦の隙を、船の物陰から見つめていた男がいた。
クックだった。
彼は腹を押さえながら、こっそりと銃を構えていた。目の前で繰り広げられる激しい剣戟を眺め、心の中でほくそ笑む。
(よし……今だ。この隙にジムを撃ちゃあ、俺の手柄だ。昇級間違いなしだぜ……! 副船長だって夢じゃねえ!)
クックは息を潜め、銃口をジムの背中に向けた。
指がゆっくりと引き金にかかっていく——




