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現実的なハーレムの作り方  作者: 中高下零郎
完成したハーレムの満喫し方
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夏でも変わらぬオタクの生き方

「お久しぶりです水草太陽二等兵バイトヘルより帰還したであります」

「久しぶり。随分日焼けしてたみたいだけど、どこでバイトしてたの?」


 夏休みが始まってしばらくして、資金調達のために泊まり込みでバイトに行っていたらしい水草さんが戻ってきたのでデートをすることに。駅前で久しぶりに再会した水草さんはいい感じに小麦色に焼けており、オタクは根暗なんていう偏見をぶち壊してくれる。


「海の家ですよ海の家焼きそばを焼いたりかき氷を作ったり資格もないのにライフセーバーの業務をしたりしながら夏の海を満喫してきました残念ながらイカの女の子はいませんでした」

「はぁ……」

「どうしてため息つくんですか」


 海の家でアルバイトをしてきたという水草さんに呆れる俺。他の皆ならともかく、水草さんがこんな過ちを犯してしまうなんて、お兄さんは悲しい。


「海と言ったら恋愛物における一大イベントだよ? 事前準備として皆で水着を買いに行って『この水着なんていいんじゃない?』みたいに盛り上がったり、海に行ったら日焼け止めを塗るイベントが発生したり……考えてみてよ!? ギャルゲーやっててさあ海イベントだ水着イベントだって時に、一人だけばっちり日焼けしてたヒロインがいたら!? 一人だけもう海で遊びまくってましたオーラを出してたキャラがいたら!?」

「空気の読めなさに腹立ちますねなんということでしょう私はなんて愚かなことを」

「そんなんだから無口でもないのにコミュ障キャラの烙印を押されるんだよ」

「ぐはあ直球ですねいえ大丈夫ですよ気にしていないと言われれば嘘になりますがむしろよくぞ言ってくれたと称賛を与えたいです本音でぶつかりあえる関係こそが友情であり愛情なのですから」


 夏休みの駅前というそれなりに人がいる場所だというのに、熱くなって下らない議論をかます俺達。気を取り直してどこでデートする? あまりよく知らないけどコミケとか? と提案してみると鼻で笑われた上に地面にツバを吐く真似をされてしまう。どうなんだ彼女として。


「よく知らないなら黙っていてくださいコミケは夏ならいつでもやってるわけではありませんし素人を連れて行くつもりはありませんと思ったけど蛟さんが言っているのは産業会館でやっている方ですかそっちならまあ素人が行っても大丈夫かもしれませんねまあどのみち今はやってませんが」

「ごめん産業会館とかよく知らないや。じゃあどこに行く? オタクの夏ってコミケとアニソンとかのライブくらいしかイメージがないんだけど」


 元々ギャルゲーとかはやる方だし、最初に水草さんを落とす時に色々勉強もしたけれど、奥が深いのかどうにも水草さんの好みが掴みきれない。困ったように聞いてみると、これだから素人はと言わんばかりに肩をすくめ出した。ロコのリアクションがうつっているような気がする。


「夏だからって夏らしいことをしようなんて素人の考えですよ私達はゴーイングマイウェイであるべきです」

「一足先に夏を満喫してきた人が言うと説得力無いよ」

「さあ猫メイド喫茶に行きましょう」


 あえて夏要素を取り除こうという水草さんの提案。彼女の言うことも一理あるかもしれない。夏は皆、夏らしいことをしようと夏っぽい所に群がる。そこで夏関係ない所に行くことで、普段よりも快適に楽しめるという寸法だ。猫狩さんには申し訳ないけど私はぬこ派なのですと手を引っ張る彼女に連れられて、まずは猫メイド喫茶へ。


「水草さん」

「どうかしましたか」

「思ってたのと違う。思ってたのと違うよ。猫メイドって、猫耳つけたメイドじゃないの? これウェイトレスがメイド服着てる猫喫茶じゃん」

「何言ってるんですか猫もメイドも楽しめるんですよ一石二鳥じゃないですかこれだから素人は猫耳つけたメイドなんて私からすれば属性ごちゃごちゃしすぎて反吐が出ますねほーら猫ちゃんこっちおいで」


 猫を楽しむべきなのだろうか、メイドさんを楽しむべきなのだろうか、そもそも自分は猫を可愛がったりメイドさんと遊ぶようなキャラじゃないと悩む中、水草さんは猫を撫でながらメイドさんにオプションを注文して全力で楽しんでいる。郷に入っては何とやら、俺も全力で猫とメイドを楽しんでやろうとその辺に座っていた猫を抱き上げようとしたがパンチをされ、メイドさんにオムライスにケチャップをかけてくれと頼もうとしたが、恥ずかしさから裏声になってしまい引かれてしまう。虚しさに打ちひしがれながら、可愛い彼女に慰めて貰おうと横を見るが誰もいない。まさか帰ったのだろうか、そんなはずはない、いやでも彼女くらいマイペースなら、店の外に有名人がいたなんて理由で飛び出してもおかしくない。いや、彼女を疑うなんて恥ずべきことだ、トイレか何かに決まってる、いやしかし……と悩んでいると、


「元気出してくださいご主人様」


 ぽんぽんと肩を優しく叩かれ、振り向くとそこには水草さんの姿が。よかった、俺を置いてどこかに行ってしまった訳じゃなかったんだな、と感動し、更に水草さんがメイド服を着ていることに感動する。


「水草さん……よかった、俺を置いて有名人がいたからと店を出て行ったんじゃなかったんだね」

「いくらなんでもそれは私を馬鹿にしすぎですよ酷いですご主人様罰として熱々おでんをどうぞすみませんそこのメイドさん熱々おでんをお願いします」

『熱々おでん一丁入りましたにゃん』

「メニューにあるんだ……」


 子供っぽいスタイルの水草さんに大人のイメージがあるメイド服はあまり似合わないとかそんな事を思ってはいけない、水草さんが俺のためにメイド服を着てくれた、俺のために熱々おでんを食べさせてくれた、その事実こそ、女の子と付き合ってよかったな、なんて思える、そんな素敵なサムシングなのだ。


「ふう、猫もメイドさんも堪能したし、そろそろ出ようか。会計しとくから着替えておいで」


 慣れてくれた猫をたっぷり撫でて、カラシで文字を書かれたおでんを食べて口の中を悲惨な事にして、水草さんに着替えて来なさいと指示するが彼女は無くは無いかもしれない胸を張ってそのまま店を出ようとする。


「大丈夫ですよ蛟さんこれ実は私の私物ですから着て出ることができるのです」

「アキバじゃあるまいし、ちょっとメイド服の女の子と歩くのはちょっとね……」

「それでいいんですか蛟さん蛟さんは周囲の男にあいつ女の子たくさん連れてるよハーレム作ってるよすげーと思われたいんじゃないんですかメイドさん連れたってすげーと思われるじゃないですか」

「何か違う気もするけど……まぁ水草さんが構わないならいいか」


 何だかんだ言って目立ちたがりなのは否めない、メイドさんを連れて町中の人に俺は上級国民だ、例え隣を歩くのがどう見てもコスプレにしか見えなくても俺はメイドさんを雇ってるような人間なのだと知らしめるために意気揚々と彼女と一緒に店を出る。周囲の人間のちょっと引くような視線を若干心地よく感じていたが、水草さんはそうではなかったようで顔を真っ赤にして着替えて来ますとコンビニのトイレに駆け込んでしまった。


「そうでしたメイド服を買ったはいいけれど恥ずかしくて着れないからあのお店に来た時だけ着ることにしようと預かって貰っていたんでしたやはり夏は恐ろしいですね無謀な事をさせてしまいます」

「羞恥心存在したんだね……だったら次からは俺の家に預ければいいんじゃないか?」

「蛟さん私のメイド服で何する気なんですか使った後はちゃんと洗濯してくださいよ使うのは構いませんが着ちゃ駄目ですよ流石に破けますから」

「使わないよ……」

「使って欲しい気もしますねうーん複雑な乙女心です」


 男の性に詳しいが故に勝手に察してくる……オタク女子にありがちなこと、なんてニュース記事があったらきっとそんな項目があるだろうと全国のオタク女子と付き合っている男共に勝手にシンパシーを感じながらデートを続行する。結局夏とは全く関係のないデートをして、『しばらく私は夏を封印して過ごすことにしますそれにより海という一大イベントに真っ白な心で臨めるのです』と宣言して俺にメイド服を預けて去っていく彼女を見送る。持って帰ったメイド服をとりあえず部屋のハンガーにかけ、遊びに来た妹に誤解される、そんな夏の一日であった。




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