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現実的なハーレムの作り方  作者: 中高下零郎
完成したハーレムの満喫し方
32/44

幸福なハーレム完成の祝い方

「えーそれでは、同志四重の加入と、ハーレム完成を祝して……かんぱーい!」

「「「「かんぱーい!」」」」


 めでたくハーレムという名のルナティックな集団に加入した四重と共にカラオケへと向かい、ジュースで乾杯を決める。一気飲みをしてすぐに曲を入れて歌おうとする水草さんのテンポに慣れていないからか戸惑っている節のある四重が、気づいたようにきょとんと首をかしげた。


「……完成? もう増やさないってこと?」

「まあ、俺はそのつもりだよ。それとも何? 四重は兄の恋人が増えた方がいいの? そんな事思ってるのは、とりあえず乾杯したし歌うのは後にして色々喋ろうかと言うこちらの意図を無視して、しかも1曲目から電波ソング歌ってるそこの人だけだよ。四重もお兄ちゃんがギャルゲーしてる情けない姿を何度も見てるからわかるだろう、ハーレム系のヒロインは多すぎるとダメなんだよ、収集つかなくなってクソゲーなんだよ」

「そうだよ四重ちゃん。その手の漫画だって話が進むごとにどんどんヒロインを追加した結果打ち切りなんて珍しくないよ」

「そうですかね♪私がやってるゲームとかは♪ヒロインが30人くらいいるんですけど♪問題なくハーレムやってますよ♪男女共学になった学校でクラスに唯一の男子で♪クラス全員が嫁になるみたいな♪そして最終的には皆孕む♪」

「……SNEG? まさか正しい使い方ができるとは思わなかったわ……」


 ギャルゲーやラブコメ漫画の話をしている時にエロゲーの話を混ぜ込んでくるどうしようもない子はさておき、ヒロインは多ければ多いほど良いというものでもない。RPGのパーティーだって4、5人が基本だし、四重があんな目に会わなければ、彼女を加えずに4人でハーレムごっこしながら仲良くわいわいしようという案も当初はあったのだ。入れてしまったものは仕方がないし四重も可愛がってやるつもりだが、現時点ではこれ以上増やすつもりはない。カラオケが一巡した頃、俺は懸念事項を思い出してため息をつく。


「そういえば、俺母親と喧嘩しちまったんだよなぁ。四重がいじめ食らってるのに気づきもしない癖に、仲が良すぎるとか文句言ってきたからさぁ、頭にきちまって。まずったかなぁ」


 後数年は一緒に暮らすであろう親に反発して、理由からして和解できる気もしない。ついさっき学校を出た時は俺のやったことは間違っていないと自分に言い聞かせていたが、俺も人間、少し時間が経つと揺らいでしまう。そんな俺を見て、四重が珍しくキリッとした表情で親指を立てた。


「大丈夫だよお兄ちゃん、あの時のお兄ちゃん、凄くカッコよかったよ」

「ありがとな、四重。ま、むしろ問題はその時にロコも納得してるって言っちまってさ」

「気にしない気にしない。水草さん達ならともかく、幼馴染が隠し通せるだなんて思ってないからさ。ま、私の両親は割と常識人だから反対するだろうけど、なんとかのらりくらりと躱して見せるよ。幸か不幸かプラトニックだからね」


 四重に微笑み、そのままロコの方を向いて申し訳なさそうな表情をすると、ロコは俺は非難することなくニコリと笑ってくれた。本当にいい幼馴染と妹を持った。


「私の両親は娘に無関心だし、男がいる事自体話してないわ。友達で押し通すつもり、なんてね」

「私は♪実は親も重度のオタクなので♪リアルにハーレムの一員になってるんですよと自慢したら♪羨ましがられました♪」

「神狩さんも大丈夫そうだね。水草さんの家庭は大丈夫じゃないね……」


 他の二人も問題なく家族と良好な関係を築けているようだ。悩むのが俺だけなら、大した問題じゃないかなんて日和り、マイクに手を伸ばす。一度も見たことのない、動画サイトの作業妨害用BGMで聞いたことがある程度の、ハーレム系アニメのOPを熱唱したり、ちょっとカッコつけて洋楽に手を出してみたり、若気の至りと言えばそれまでな冒険心を抱きつつ、つつがなく四重の歓迎会を終える。


「それではおやすみなさい何だか歌ってみた動画を投稿してみたくなりました一度実況プレイ動画の途中で歌を歌ったんですがスピーカークラッシャーというタグをつけられたんですよ私そんなに歌下手ですかね?」

「興奮して大声で歌うからじゃないかしら? それじゃあまた」


 水草さん、神狩さんと別れ、家の前まで来てロコとも別れ、四重と一緒に帰宅する。最初は週末だしオールをしようという流れだったが、2時間程度歌ったあたりで疲れが出始め、結局午後8時には家に戻るという健全極まりない夜遊びだったため、丁度家に帰る頃には夕食の準備が出来た頃だった。


「ただいま~、あ。ご飯の匂いだ~今日はグラタンかな?」

「おお、二人とも帰ったか。丁度いいタイミングだな、今日はドリアだぞ」

「……」

「ただいま」


 仲良く二人で帰って来た俺達を見て母親は怪訝な顔をする。父親はかなり呑気で鈍感な性格だ、俺と四重の仲が最近良すぎることにも気づいていないだろう。俺も一瞬母親を見てムッとしてしまうが、わざわざそんなことで食卓の空気を悪くする程、感情で動いてる人間ではないのですぐに表情を切り替えて平静を装う。


「今日ね、お兄ちゃんとその友達と一緒にカラオケ行ったんだよ、お兄ちゃんったら洋楽を歌おうとして途中で断念して鼻歌で誤魔化そうとしたんだよ」

「ははは、男はカッコつけたがる生き物だからな。父さんもな、昔はカッコつけて葉巻吸ってたんだぞ」

「……」

「……」


 平静を装ってもペラペラと愉快に喋ることができる程、要領の良い人間ではないので、家族団欒の空気は、兄とのデート? で舞い上がっている四重と武勇伝を語り始めた父親に任せる。我先にと食事を終えて、普段は流しに持っていこうともしないお皿を持って行って、すぐに自分の部屋に戻り、ベッドに寝転がってあくびを1つ。両親への反発心からハーレムを作ろうとした訳でもないし、実の妹を攻略しようとした訳でもない。けれども今になって遅れて来た反抗期というやつだろうか、母との対立をきっかけに自分の中でどんどん反発心が芽生えてくるし、説教されたって屈するものかという気持ちになってくる。案外負けず嫌いな性格だな、と思っていると、


「知らないっ! お兄ちゃん悪く言うなんて、お母さんなんて大嫌い!」


 四重の怒号が部屋の中にまで聞こえてきた。お兄ちゃんは聡明な人間だからわかるぞ、どうせ母親は俺にしたように四重にも説教をしようとしたのだろう。いい加減兄離れしなさいだの、兄妹で付き合うなんておかしいだの、一般論を黙って聞いていた四重も、そのうち母親が俺が平気で複数の女性と付き合おうとするロクでもない男だ、そんな男と一緒にいても未来はない、てな感じで俺を下げ始め、とうとう優しい四重も怒髪天。血は争えないのか俺同様に母親に担架を切り、そのままドタドタと走って俺の部屋の前まで来て、


「お兄ちゃん! 一緒にゲームしよう!」


 てな感じにイライラを解消するために、ノックもせずに部屋に飛び込んで来たのだろう。はいはいとベッドから起き上がり、ストレス解消用のゲームを探し出してセッティング。


「お兄ちゃん聞いてよお母さんったら酷いんだよ、私が苦しんでる時に助けてくれなかった癖にその事を謝りもせずに……」

「ははは、母さんにチェーンソーは振り回すなよ?」


 ゾンビをチェーンソーで引き裂きながら愚痴を連ねる四重を宥めながら、頼れる仲間がいるのだから何も恐れることはないと、監督やコーチが呆れるようなポジティブシンキングを行うのであった。

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