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二話

「ロベルト殿下、婚約破棄を承りました。ですが、この婚約は王家と我が家との間で交わされた婚約。ゆえに我が父ミルケス公爵と国王陛下が最終的に了承しなくては成立しません」


 バネッサ様は相変わらず冷静ですわ。さすが淑女の中の淑女として名高いお方。緩やかに巻かれた髪に飾られたバネッサ様の目の色と同じガーネットが組み込まれた髪飾りが、眩く輝くゴールドに映えて、その後ろ姿だけで明星の女神のようですわ。ああいえ、今はバネッサ様にウットリしている場合では有りませんでしたわ。


「ロベルト殿下、ミルケス公爵として婚約破棄は了承しました。ですが、今夜は陛下主催の夜会ですからこれ以上は話し合えませんな。明日にでも陛下と話し合って婚約解消をしましょう」


 ミルケス公爵様は柔和な笑みを浮かべてますが、バネッサ様と同じガーネット色の目は冷ややかなのでしょうね。間近でミルケス公爵と対峙しているロベルト殿下が怯えていますわ。あの表情、もしやと思いますが、ミルケス公爵様がこの場に居られるとは思っていなかったのでしょうか。驚いてもいますわね。陛下主催の夜会ですのよ。成人した貴族や学院在学中の子息子女は全員出席するのは常識で当然ですわ。まぁ欠落しておられる方だから、こんな公の場でやらかすのでしょうけれど。ミルケス公爵様、さらりと破棄から解消に言葉を変更なさられましたわね。当たり前ですが破棄されるような落ち度など、バネッサ様には有りませんもの。


 で。

 何事も無かったかのように夜会が開催されました。

 国王陛下に報告はされていたのは確かです。ロベルト殿下が護衛に促されてこの場から去って行きましたもの。まぁスムーズとは言えず、足を踏ん張って抵抗しようとなさっていたので、護衛が威圧感たっぷりの笑顔でロベルト殿下の背中を押していらっしゃいましたけど。威圧感ある笑みに抵抗心は封じられてましたから背中を押されて足が驚くほど滑らかに動いていらっしゃいましたわね。


 ロベルト殿下が去って行かれて間もなく、私たちだけでなく高位貴族の子息子女の皆さまが親元に足を向けました。皆さま私たちの婚約同様に同じ政略事情で結ばれた婚約について、確認されるのでしょう。

 お兄様とリオス様の兄君様が既に両親の元におりますわ。他家をチラリと見れば、どこの家も同じような雰囲気です。


 これでは第二王子殿下のお相手を探す夜会は開催出来ませんわね。陛下もお分かりになられていらっしゃるのか、早々に終えられましたわ。

 そして、王妃殿下は不機嫌な顔をして国王陛下の隣にいらっしゃいました。本当はロベルト殿下のことが気になって夜会どころじゃないのでしょうが、夜会に出席しないと側妃殿下が陛下の隣に立つことになりますから。それが気に入らないから、一応夜会に出席されたのでしょうね。困ったものですわ。


 王妃殿下がロベルト殿下を甘やかしてきたからこその醜態なのですけど、まぁそのようなことに気が回り考えを巡らせることが出来る方でしたら、抑々無理やり国王陛下の正妃の座に着こう、などと考えませんものね。本当に厄介な方ですわ。


 表面上は何事も無かったように夜会を終わらせた翌日。ハジェス家に、ハーミット伯爵一家がいらっしゃいました。


 もちろん婚約について話し合うためです。


「それにしても、ロベルト殿下はせめて公の場で宣言をしなければ良かったのに」


 ハーミット伯爵が溜め息と共に溢される。気持ちは同じですが、もう起きてしまったことですから言っても詮無いことですわ。

 そう思っていたらお父様が私の考えをそのまま口にしてハーミット伯爵を宥められました。まぁ起きてしまった以上は、仕方ないですものね。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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