一話
山場はゼロ。
最初から最後まで婚約解消しないといけないのか?
という困惑の主人公視点。
相変わらず恋愛無し。
6時から10分毎に予約投稿。7時に完結。予約投稿済み。
王家で主催された社交シーズン中のある夜会。本来なら第二王子殿下の婚約者を探すための夜会でした。
私、ハジェス侯爵家の長女・エルゼは婚約者であるハーミット伯爵家の次男・リオス様にエスコートされて夜会に参加しておりました。
「バネッサ! バネッサ・ミルケス公爵令嬢! 貴様との婚約を破棄する!」
王族入場の前に、既に夜会会場に居た第四王子であるロベルト殿下がそのように発言する場に当たってしまいました。ロベルト殿下、元々あまり評判は宜しくないお方でしたが、このような公の場でこんな愚かな発言を為されるとは思ってもおりませんでした。
それも、王家主催の夜会です。王家主催、つまり国王陛下のお顔に泥を塗っているのと同じことです。
やってしまわれましたわね。
なんて軽い言葉で済ませられるような事態ではありません。
ロベルト殿下は王妃殿下のお子ではありますが、王位継承順位は四位です。第四王子殿下というのは、生まれた順番で決まったこと。我が国は継承権は男女問わずに在りますので、当然生まれた順で継承順位が発生します。王妃殿下の子なのだから継承順位は一位になりそうですが、国王陛下が生まれた順で継承順位を与える、と宣言されましたからロベルト殿下は四位なのです。
この辺りのことは、貴族なら誰しもが国王陛下のご判断が並々ならぬものであることを理解しておりますので、納得しかありません。
王妃殿下はお立場といい、ご本人の性質といい、少々複雑なお方ですからね。言葉を悪くするのなら厄介なお方ですわ。口には出せませんが。
尚、その王妃殿下の唯一のお子であられるロベルト殿下は、唯一であられることから、随分と甘やかされております。王妃殿下に。性格も良く言えば素直。悪く言えば分かり易い。御し易いと言いますか有り体に申せば操り易い。
それだけならまだしも、いえ良くは有りませんがまだフォローすることが出来ます。ですが、我儘だし王妃殿下の言いなりだし癇癪持ちだし考え無しだし。あら良いところがありませんわね。兎に角そんな方ですから、バネッサ様は婚約破棄そのものは大歓迎でしょうけれど。そしてその婚約破棄そのものは、国王陛下も他の皆さまも満面の笑みで拍手して了承するでしょうけれど。
ロベルト殿下のやらかし、きっと王妃殿下が国王陛下に「なんとかして」とか言い出すでしょうから。
もしかしてもしかすると、私とリオス様の婚約が解消されて婚約者変更になってしまう可能性が出て参りましたわ。
どうしましょう。
チラリとリオス様を見れば、難しい顔をして私のことを見ておりました。
「多分、エルゼ嬢と同じことを考えているよ」
聡明な方ですもの。やはり同じ想像をしていたのでしょう。
「私、リオス様を愛せるのではないか、と思っておりますの。恋がどうというものか分からずとも、家族としての愛情は持てると思っておりますの。ですから、婚約解消して婚約者を変更するつもりは有りませんのよ」
「私も、恋は分からないけれど、学院生活での友人付き合いだった頃や婚約してからのエルゼ嬢との関係を気に入っている。出来れば婚約解消したくないと思うけれど、私の一存では何も言えない」
「そう、ですわよね。取り敢えず、この場が収まり次第、お父様とお母様とハーミット伯爵夫妻とで明日にでも話し合いをしましょう、と私たちの意見を伝えるということでいかがでしょうか」
「そうだね。私も同じ考えだよ。それから兄上と君の兄君も同席してもらう方がいいかな」
なるほど。
そうですわね。リオス様の仰る通り、親同士だけでなく嫡子であるお兄様たちにも同席していただく方が宜しいですわね。
私たちの婚約は政略です。
嫡子では無い私たちは、学院で政務官科に通い、とても良い成績を修めれば卒業後は王城勤務の道が開けます。そのために勉学に励んでいるのですが、政務官の話とは別で、政略的な婚約の話が一年前に持ち上がり婚約しました。
学友でしたから互いのことは顔見知りでしたし、一年、婚約者としても恙無く過ごして来た関係です。
でも、政略での婚約。当然、家同士の兼ね合いも有りますが、互いの家だけでなく他家との兼ね合いも有る婚約です。
家格のみならず、政略内容そのものも我がハジェス家とハーミット伯爵家だけのものでは無く、他家が絡みますの。
それこそ、今、ロベルト第四王子殿下に婚約破棄を突き付けられたバネッサ様の家であるミルケス公爵家も関係しますわ。
出来ればこんな公の場で愚かな発言をするのではなく、ミルケス公爵家と王家と当人同士だけで話し合って解消して下されば、まだ良かったのですけど。
公の場じゃないこと。
それだけで私たちの婚約だけでなく、他家の婚約にも影響は無い、というのに。
本当にもう、ロベルト殿下は後先考えず、周囲についても何も配慮しない愚か者ですわ。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




