ボンジョン
紫の札を下げて、ゆうびん屋のあんちゃんが届け物の荷物の重さに振られて、えっちらおっちらやってきた。ということは、だ。
「初めて来る差出人ってわけだ」
うー、ん?どういうことだ。おれに新しくできた知り合いなんかいたかなあ。そう、おもいうかぶことなどないけれど。
「まあいいや、おーい、ビン屋のあんた! こっちだこっち!」
「あざぁっす、いまいくところです!少々お待ちを」
そういいながら、中身をカバンからぶちまけないように慎重な足取りでゆうびん屋のあんちゃんはおれの家の前までやって来た。どっせい、と重たいカバンを下ろしたなら、ばすんっと間に空気が入って急に抜けたみたいな紙切れの落ちる音がした。こりゃ、相当な量だ。どういう筋肉してやがるわけだ?
「どういう筋肉しているんだって顔しますよ」
「おっと、いけねえ、こういうのは顔に出しちゃいかんのにな。それで、今日の差出人は?」
「青年自警団からですよ。この手のは……」
おっと、これはめんどくさい。下手したらサツがらみの案件だ。
青年自警団は常に人手不足だ。若いのは体が出来上がる前に10歳前後で死んじまうから、入団するやつが少なくて困っている。そこで年配の経験のある連中から、中核メンバーの考査のもとで俺みたいなやつが選ばれるってわけだ。
「こういうのは、ちょっと、ねえ?」
あまりのきな臭さにおれはひよこ豆のみそを顔に塗りたくったみたいな、さすがにやめてくれよ……。という顔をしてしまった。
「いやあ、私たちゆうびん局も公僕ですからね。差出人に依頼された場合に、いちおうどこに宛てて出すかの判断も、それなりに権限があるわけなんですが」
「だが、これってば紙質がやたらよすぎる。おまけに薄い割に重い。明らかにインクの使いすぎだ。ここらのインクはやたら重いからな。内容を詰めて書けば自然と手紙も重くなる」
「そんで、紙質が良ければより公に向けた書類になるってんで、一つ上の上長に伺ったんですが」
「経験を積むためにそれくらい何とかしろ、ということかね?」
「おっしゃる通りです」
はあ、とおれはため息をついてしまった。蜜蝋で厳重に風もしてあるし、これは絶対よくない案件だ。
正直言ってウケたくない。ただ……。
「そんな厄ネタが俺のとこまで来るってことは、理由は一つだろ? なんせ」
そうそう、読者ショクン、申しおくれた。俺がこんなに金持ちになって、あまり人付き合いもうまくいかない生まれだってのに、ここまで金持って暮らせているのは。
「困っている子供たちが今も泣いているってことだろうが」
おれは井戸の底から天をねめつけるように、そう言い放った。
おれは、この国で初めて児童養護をはじめて一山宛てたからだ。
このていどでくすぶっててめえのハラ肥やしているおれが、俺は憎い。
まってろ、坊嬢!




