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11 イケメン

「おー」


 門の中は人が多い。

 夕方でも、いや夕方だからこそなのか、通りには人がたくさんいた。商店がならび、人が行き交う。

 食べ物を売っていたり、武具の店、雑貨屋などいろいろなところがある。

 しかも馬車が中央を通っても平気なくらいの広さがあって、中央通りという感じだ。


「どうだ、こんなに大勢見たことあるか?」

 レスラーさんがうれしそうに言う。


 まあ、渋谷とかそういうところと比べても、局所的な人の数は多く見える。


「審査はいつから行われるんですか」

「昼です」

 エクサミさんは言った。


「けっこう、ざっくりしてるんですね」

「早めに来ていただいて、審査となる会話も行います。一緒に昼食をいただいたりする場合もありますね」

「え? そんな感じなんですか?」

「もしA級になれば、王都とは無関係ではないので」

「おれは無関係だがな」

 レスラーさんは言った。


「どこに行けばいいんですか」

「昼前に、宿にお迎えにあがります。宿でお待ちいただければ」

「そうですか」


 町での話を考えると、なんだか、お前はA級にしないことにしてやろうか? くらい冷たい対応をされるのだろうと思っていたが、そうでもないらしい。

 王都は、A級とは仲良くするが、それ以外とはかなり対応が変わってくるから覚えておけ、という立場なのだろうか。

 これがいわゆる、AとBとのちがいというやつなのか。


「ところで、そもそも、王都ってどういうものなんですか」

「なにをきかれているのかわかりかねますが」

 エクサミさんは言った。


「つまり……。首都?」

「はい。そう考えてかまいません」

「首都?」

 レスラーさんは、微妙な反応だった。

 あまり首都という言い方はメジャーじゃないのかもしれない。


「なんだ?」

 わっ、と大通りの一角がにぎやかになった。

 店から出てきた誰かが、通行人に囲まれているようだ。


「あれもA級だ」

 出てきた男は、身長が190くらいありそうだ。もちろんセンチだ。

 髪の毛が、上はさらさら、横は刈り上げ。

 笑顔はキラキラ、女性はメロメロ。

 銀色の、関節くらいしか守っていないような防具を身に着けていた。

 イケメン族だ。


「俺とはちがう人種かな?」

「安心しろ。おれともちがう」

 レスラーさんがすかさず言った。


 ちなみに俺はいま、人種とかは、口に出している意識はなかった。もしかしてこれまで、駅とかで、そんなことをつぶやいてたんだろうか。リアルやばいツイートの人だ。


 進行方向だったので、馬車がゆっくり近づいていく。

 彼は、危ないよ、なんて言いながら女性を、馬車の進路から遠ざけた。

 そして軽く頭を下げた。エクサミさんに対してだろう。


「あの人は?」

「剣士センシャだ」

「戦車?」

「A級の中でもかなり名前が知られている」

「そうでしょうね」

「戦う者としての名前だ」

「そうなんですか」

 あれで強いのか。

 弱くてもいいじゃないか。


「ふだん、王都にはA級の人が何人もいるんですか?」

「それはそうだ。仕事もまわってくるし、そろそろ戦争だからな」

「戦争」

 俺はまわりを見た。


「どう見ても戦争って感じじゃないんですが」

「ナガレは、どこから来たんだ?」

 レスラーさんは言う。


「ずいぶん、古い常識の田舎から来たみたいだが」

「古いっていうか」

 新しいっていうか。

 でも、あの文明が核戦争とかで終わったあとに、ここがあるのかもしれないわけだけど。



 そして翌日。


「おい、行くぞナガレ」


 一緒の部屋だったレスラーさんの大声に起こされると、ぐいぐい腕を引っぱられた。

 階段を降りながら移動中にパンを口に押し込まれ、外に出た。服を着ていてよかった。


「なんなんですか……」

 思ったやつの五分の一くらいの声量しか出なかった。


「今日はA級の審査だろう」

「まだ朝ですよ……」

 八時前後。

 休日なら寝ていていい時間だと俺の体内時計が言っている。


「朝飯から食いに行って、そこで情報収集するんだよ」

「情報収集?」

「今回の審査の内容とか、昼飯の内容とか、わかるみたいだ」

「昼ごはんはなんでもいいでしょうよ……」

「それがそうでもない。審査員の好みが反映されるから、誰がやるのかわかる」

「誰でも一緒でしょうよ……」

「バカ野郎、お前は、相手が魔法使いでも、槍使いでも同じだっていうのか?」

「え?」

 俺は立ち止まった。


「魔法使いってなんですか」

「魔法を使うんだよ。ホックと同じだ」

「じゃなくて。審査って、エクサミさんがやるんじゃないんですか」

「場合による」

「じゃあ、俺が魔法でこんがり焼かれるかもしれないんですか? 死ぬかもしれなんですか? ていうか、魔法使いって強すぎませんか?」

 俺の天敵かもしれなくないですか??


「相手はおそらく特級だ。死ぬようなことはない」

 レスラーさんが俺の腕を引いて歩く。

「死にかけることはあるんですか?」

「真剣勝負だからな」

「ちょっと待ってください。ちょっとまってください!」

「うるさいな」

「刃物も、まだだいじょうぶなのかわからないし……」

 かまれるのは平気だったが。


 ふつうの刃物がだいじょうぶでも、エクサミさんの特級剣みたいなやつだったらどうなるかわからないし!


「ちょっと、俺、帰って考え直します」

「来い!」

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