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捨てられ令嬢は、騎士団に拾われる  作者: わんたんめん
拾われ令嬢、家をもらう
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アティ、初めてのカフェテリア

 アティとイザークは、貴族街のノーブル大通りから2つ隣にある中流の中でも上流の人々が主な客層であるメイベル通りに移動していた。

 イザークにエスコートされているアティは、メイベル通りを優雅に歩く。


 可愛らしいドレスを着ている美少女と、第2騎士団の騎士服を着ている美少年の組み合わせは、周囲の視線を集めていた。

 それは人の多い通りでも、2人の道を妨げるものがいないほどだった。


 そして、イザークは柔らかで落ち着いた雰囲気の店の前で止まる。


「さあ、お嬢様、このお店でございます」


 格好をつけたイザークは尻尾を振りながら、アティが通れるように扉を開けた。


「ありがとうございます」


 アティは小さなお辞儀をして、店内に入る。そして、店内を見回した。


 その店は、柔らかで親しみやすい雰囲気を漂わせていた。赤レンガ色の壁紙、磨きこまれた木のカウンター、真っ白なテーブルクロスがかけられた丸テーブルに、雰囲気とよく合った椅子、それらが全て綺麗に配置されている、そんな店内だった。


「いらっしゃいませ! こちらのテーブルにどうぞ」


 店員に案内された席は、テラス席だった。柔らかな太陽の日射しを受ける、白いパラソルと木の床のコントラストを、アティはすぐに気に入る。


 イザークは向かい合っている椅子の右側の椅子を引き、アティが座れるようにした。

 彼女が座ると、イザークは反対側の椅子に座る。


「こちら、メニューでございます」


 店員はメニューを置いて、2人がすぐ呼べる位置に下がる。

 イザークはメニューを開いて、アティの方に向けた。


「アティさんは何にするっすか?」


 アティはメニューを見る。しかし、寮の料理ぐらいしか知らない彼女には、全てが呪文に思えた。


「……私、こういうお料理は初めてなんです。オススメを教えてもらえませんか?」


 イザークは耳をピンと立て、ムムと眉間にシワを寄せる。

 自分が機嫌を悪くさせたのかとアティは焦りを感じたが、それは杞憂だった。


「どれもオススメだから迷うっすね……アティさんって、甘いクリームとチョコならどっちが好きっすか?」


 メニューを真剣に見つめる彼に、アティはホッと胸を撫で下ろすと同時に笑顔になった。


「ありがとうございます、イザークさん。私はどっちも好きですけど、今はクリームが食べたいです」

「なら、この苺のミルフィーユがオススメっす。飲み物は……」


 そして、イザークはアティの分だけではなく自分の分までメニューを決めると、店員に伝えた。

 店員が去ると、イザークは八重歯の見える、にこやかな笑顔をアティに向けた。


「このお店はウィル先輩が教えてくれたんすよ。さっきオススメしたミルフィーユも、ウィル先輩の好物なんす」


 そんな彼に、アティも柔らかく微笑む。


「ウィルさんは甘いものがお好きなんですか?」


 イザークは、うんうん、と上機嫌な笑顔で何度も頷いた。


「あのクールな性格と見た目からは想像できないっすよね? でも、ウィル先輩は第2騎士団1の甘党なんすよ」

「そうなんですね。エミリア……ウィルさんの妹も甘いものが好きなんですよ」


 アティはエミリアのことを思う。避暑地に行ったエミリアは、今、何をしているのかしら。アティは彼女に会いたくなった。


「似てる兄妹なんっすね。その子と付き合いは長いんすか?」

「はい、親友なんです。12歳で彼女が学校に来てから、寮でずっと同室だったんですよ」

「おれも騎士学校の寮にいたことがあるっすよ。で、同室のやつとは、すっげー仲悪かったっす。

 きっとその子は、アティさんと同じで良い子だから親友になれたんすね。すぐ暴力ふるうウィル先輩とは正反対っす」


 威嚇する子犬のように鼻にシワを寄せるイザークに、アティはクスクスと笑う。

 そんな2人のテーブルに、品物をトレイに載せた店員が笑顔でやってきた。


 紅茶にミルフィーユ、コーヒーにサンドイッチ、テーブルは一気に華やかになる。


 アティはミルフィーユの見た目に目を奪われている。

 バターで輝くパイは粉砂糖に彩られ、カスタードクリームは食欲をそそる黄色で、味のアクセントになるだろう苺の赤色を際立たせていた。


「美味しそうです……!」

「そうっそよね! 最高に美味しいっすよ!」


 そして、おやつを待つ子犬のようなイザークに見つめられているアティは、ミルフィーユをゆっくりと口に含んだ。


 その瞬間、彼女に衝撃が走る。


「んんんんん!!」

「どうしたんすか、アティさん!?」


「……美味しい、です! もう、こう……言葉が出ない……!」


 キラキラと薄緑の瞳を輝かしながら、真っ赤に染まる頬を押さえるアティに、イザークは嬉しそうに口を開けて八重歯を見せて笑った。


「それはよかったっす!」


 そんな2人を物陰から見ている男たちが、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ、悪巧みをするようにコソコソと話していた。


いつもブクマ、ポイント、感想ありがとうございます。とても励みになっています。


自分で書いたものを読み返してみると、最近の更新は量、質ともに劣っていると思い至りました。

なので、毎日更新から土日の昼と夜の2回更新に変更させていただきたいと思います。


大変勝手で申し訳ございませんが、ご理解とご了承のほど、よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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