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「ディーニュちゃん鹿は見える?」
四郎に肩車されたディーニュがキョロキョロと周りを見渡す。
『見えなーい』
その二人の姿を羨ましそうにカーリンが見ていた。
「いないか。それじゃ下ろすよ」
頭の上からディーニュを下ろす。そうするとカーリンが近づいてきて、
『次はアタシだな』
「は?」
『アタシが上から見てやる』
「しないよ」
『何で!?』
「いや、おいらは、ディーニュちゃん肩車してたから疲れてるんだ」
『正直言ったら? 重いって』
ディーニュちゃんがぶったぎった! カーリンにクリティカルヒットをくらわせた! カーリンはしゃがみこんでいじけてしまった。それを見て四郎が声をかける。
「おんぶならいいよ」
カーリンが顔をあげると四郎が背を向けてしゃがみこんでいた。
『いいの?』
「いいぞ。ほら乗れ」
この時、四郎の前に回り込んでいたならにやけた四郎の顔が見れただろう。
(あの桃が背中に、おいらの全神経よ! 背中に集中せよ!)
おっぱい教の信者は健在だった。そして背中にかかる重みがかかり、
(そう、この背に桃の柔らかい感触が2つ……?)
なかった。背中にべったりと板のようなものが乗っかった感触がして、四郎は振り返った。
『ん?』
そこにはくりっとした目でこっちを見ているディーニュの顔があった。背中に乗っていたのはカーリンではなかったのだ。カーリンはといえば、四郎の背中に乗ろうか乗るまいか戸惑っていてディーニュに先に乗られてしまい固まっていた。
『お兄ちゃん、ゴー!』
「……ゴー!」
四郎は力ない足取りで歩き始めた。まさに夢破れた者の、敗者の姿だった。カーリンはその背に乗るディーニュを羨ましそうに見ながら着いていった。
背中に幼女をおぶったまま獣道を見つけてそこを歩いていくと目の前に崖が見えてきた。
「そろそろ、降りてくんない?」
『やだ!』
「お兄ちゃん、疲れたの」
『やだ! やだ! やだ! やだ!』
「そう言わないで降りてー」
おんぶしてから1時間、ディーニュをおんぶしたまま歩き続け少し疲れた四郎はお願いした。ディーニュは楽な移動手段から降りるのを嫌がり後ろで首を横に振り駄々をこねる。その際、三編みの髪が四郎の顔に当たって痛い。
『ディーニュ、わがまま言わないで降りなさい』
見かねたカーリンがディーニュを抱えれ降ろしてやる。ディーニュは頬を膨らませているがなすがままに降ろされた。
『てめえ、後で見てろよ』
カーリンに聞こえるか聞こえないかくらいでボソリと呟いた。その声にカーリンの顔が少しひきつった。
四郎はその二人に気がつかないまま、崖に向かって歩く。足元も開けてきて先に開けた場所があるみたいだ。その前に草むらに入りそっと覗く。そこには鹿の集団がいた。
「よし、鹿を捕まえよう。カーリン、首をスパーって殺っちゃって」
『いいけど、ちょっと待ってよ。あの真ん中にいる一際でかいのここのボスよね?』
カーリンの指差す方を見ると他の鹿より大きな鹿が見えた。だが、その色がおかしい。全身の毛の色が緑かかった色をしており、さらに頭から伸びる角も水晶のように透き通っている。
『あれは魔獣だよ』
四郎の隣から顔を出したディーニュが言った。四郎はフラグは立っていたんだなと思いカーリンを見る。カーリンは何でそんな目で見られるのかわからない。
『お兄ちゃん、お兄ちゃん、魔獣は任せて!』
「ディーニュちゃん、できるの?」
幼女に言われて驚く。神とはいえ、見た目幼女に魔獣を倒せるとは思わなかったからだ。
『ディーニュなら大丈夫。アタシは鹿を狙うわ』
「本当に大丈夫なのか? 危ないんじゃないのか?」
『どっちかって言うとお兄ちゃんが邪魔!』
四郎にディーニュの言葉が突き刺さった。四郎は座り込みその場に『の』の字を書き始めた。
『それじゃ、行くよ』
ディーニュはエプロンドレスのポケットから粉を出すと空へ撒いた。それは風に舞い、鹿の集団の方へ飛んでいく。鹿の集団が何かに気がついた時には数匹を残して倒れこんだ。撒いたのはマスダズ茸をすりつぶして作った麻痺薬。これはあるものと合わせて料理に使うと深みのある味付けができるものだ。
『カーリン鹿は頼むよ』
そう声をかけるとディーニュは草むらから飛び出した。カーリンもそれに続いて飛び出す。ディーニュが向かったのは麻痺薬でも倒れない魔獣化した鹿。鹿はディーニュを見るとその場でディーニュに向かい頭を振り下ろす。すると角から半透明な刃が飛び出しディーニュに飛び出した。
『よいしょ!』
ディーニュはどこから出したのか自分の体が隠れるほどの板を出して半透明な刃を受け止める。それがまな板だと気づく者は神以外にはいないだろう。それを横にずらして打ち捨てると、魔物化した鹿に走る。魔物化した鹿も今度は自らの角で突き刺すために頭から突っ込んでいく。
『あまい、あまい』
ディーニュは突っ込んできた魔物化した鹿を紙一重で交わすと刀と見間違うほどの長さの包丁ですれ違いざま首をはねた。
首から青い血を撒き散らして角から地面に突き刺さった頭を見た残った鹿は逃げ出していった。その戦闘を見ていた四郎はあんぐりと口を開けて呆然とながら、ディーニュがただの幼女ではなかったこと今さらながら認識した。
『何をボケている? ほら鹿は確保したぞ』
そこにカーリンが鹿を引きずって戻ってきた。もちろん首を切り裂き血抜きをしながら。その鹿の血は普通に赤かった。
『お兄ちゃん、この鹿どうしようか?』
魔物化した鹿の頭を持ってこっちに戻ってくるディーニュ。
『この角は武器の材料になるし、皮は防具の裏地とか使えるし、後は料理できるし』
「料理?」
魔物化した動物って食えるんだっけ? 四郎にそんな疑問が浮かんだ。
『四郎、普通は魔物化した動物の肉は食わないんだが……』
側に来たカーリンが四郎が思っているだろう疑問に答える。
『そんなものを料理してしまう神がいるんだ。というか、普通は食べないようなゲテモノと呼ばれるものを料理する神が』
「おいおい、冗談だよな」
『その神が“ゲテモノ料理”の神。ディーニュだ』
ディーニュってそんな神だったの? 鹿の体を開いて内臓を取り分けているディーニュを見てそう思った。
四郎、おっぱい合法的に触れることかなわず。
幼女神はゲテモノ(魔獣)料理の神でした。




