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運良く朝から猟師に会い鹿の出る山を教えて貰った。村からアマテーラス神殿の方に少し戻った所から入った山だ。
「そこには魔物も出るでよ、気を付けるんだよ」
そう言って猟師は村のすぐ近くの山に仕掛けた罠を見に行った。
「魔物ってどんなやつなんだ?」
『動物が魔力で強化されたやつだな。見た目も変わってしまうやつもいるし、下手すると騎士団とかの討伐対象になるやつもいる』
「そんなやつがいるのか?」
『安心しろ。そんなのは滅多にでない』
「おいおい、こんな所でフラグ立てるなよ」
『……フラグって何?』
そんな話をしながら森に着いた。
「……ウサギしかいない」
森の入り口から獣道に入り奥に進んでいくが、時折ウサギが顔を出すだけで他の動物が出てこない。昼飯用に1羽だけ狩ってあとは手を出さない。
「もっと奥まで行かなきゃダメだな」
『奥か……』
鬱蒼と繁る草木を見渡しうんざりした声を出す。
『解体がしたい』
「バカなこと言ってないで行くぞ。そうしないと晩飯からパン一枚になる」
『うう、わかった』
「ってか、何? 疲れたの?」
『いや、写し身のメダルを使ってるから疲れることはないな。地味に四郎の魔力に負担が係るくらいか』
『それなら大丈夫だろ。何か昨日からしたら楽になってるし』
神を顕現させたまま数日過ごした結果、四郎の魔力量は思った以上に鍛えられていた。
「しかし、魔法は使えない」
四郎は生活魔法と呼ばれるちょっとした魔法は使えても攻撃魔法の様なものは使えなかった。オームスさんにその事で頭を捻らせた事もあり、特訓もしたのだができなかった。本人的にはできないなら他の事で頑張ればいいや位しか思っていない。
『魔法なんか神の力の模倣だろ? アタシがいるんだ心配はない』
「それじゃ、どんなことができるんだ?」
『解体したときに血を派手にぶちまけるとか』
「使えねー」
『!!』
驚愕の表情をするカーリンを放っておき、奥に進んでいく。後ろでブツブツ呟いているカーリンにいい加減イライラしていると、その前に鹿が現れた。そして四郎を見ると逃げ出した。
「カーリン! 追うぞ!」
『鹿! 鹿! 鹿!』
鹿の足に人間が追い付けるはずがない。しばらく追っていると獣道を外れ道に迷ってしまった。
「しかし、我々、探検隊は恐れずに奥に進むのであった」
『ねえ、誰に言ってんの?』
四郎のちょっとした呟きを聞きつけてカーリンが聞いてくる。聞かれた四郎は耳を赤くしながらそ知らぬふりで辺りを見渡した。
「あっちに洞窟があるな。あの中に入ったのかも」
『ねえ、ねえ、聞いてる?』
無視して洞窟に入る。カーリンのいた洞窟のように奥が暗く見えない。
「“血と解体の神”カーリン様、お先にどうぞ」
『ちょっと待って、何でここで正式名呼ぶの?』
「強制力働かないかなって思って」
『働くはずないでしょ! 神はお願いを聞くだけだから』
写し身のメダルを使い呼び出した神はその時に応じて願いを聞くのであって、強制されたりはしない。神は自分の領分のから外れた願いは聞くどころか下手をすると神罰を落とすことも稀である。
『……まあ、行くけどね』
「あざーす」
こうして洞窟に入ったのだが、少し入ると右に曲がり大きく広がっていた。その中央に人が乗るぐらいの板とそれに突き刺さっている包丁の様なものがあった。
「これ何?」
四郎はこれは祭壇の一種だと思ったが、神であるカーリンの方が詳しいだろうから聞いてみる。カーリンはその顔を青ざめさせて、呟く。
『“ーー料理の神”』
「食い物の神様か拝んでいこう。ご利益があるだろ」
『いや、ちょっと待てこの神はーー』
「昼飯用のサンドイッチ貰ってたよなそれでもいいか」
カーリンの言葉も聞かずにサンドイッチを突き刺さっている包丁の前に置き祈る。包丁刺さった場所が光り四郎は思わず目をつぶった。
『久しぶりの食べ物。ウマウマ』
目を開けるとそこには幼女がいてサンドイッチをパクついている。そしてサンドイッチを食べあげると四郎の方を向いて頭を下げる。
『ただのサンドイッチだったけど、地上の食べ物は長く食べて無かったから美味しかった』
紫色の髪を三編みにして肩に足らし、エプロンドレスに包まれた小さな手足がちょこまかと動き可愛らしい。
「美味しかったですか。よかったですね」
四郎は何も考えずにその頭を撫でる。くすぐったそうに目を細める幼女がしばらくして、
『お兄ちゃんに神として付いていきたいけど、写し身のメダルが出せないの』
上目遣いで寂しそうにこっちを見る。それに四郎は笑顔を向けた。
「大丈夫だ。お兄ちゃんに任せなさい」
『本当?』
「ちょっと待ってろよ。ちょっとチッパイ様のところに行って貰ってくるから」
『神罰!』
「グワァァ!」
どこからともなく雷が四郎に落ちる。四郎は全身を痙攣させながら気絶した。
『うぇ? 今のアマテーラス様?』
目を見開いて驚く幼女にカーリンが近づく。
『久しぶりね。ディーニュ』
『“血と解体の神”カーリン?』
『そうよ。何で貴女がここにいるの?』
『私の作る料理を食べる人がいなくなって地上に呼ばれることが無くなったの』
『まあ、そうね。……同情する』
『貴女も似たようなものよね?』
『でも今は、四郎の力でここにいるわ』
気絶した四郎を膝枕して答える。その顔には本来神が人に向けて浮かべることの少ない表情を浮かべて。
『数多の命を奪い血に酔っていた神とは思えない顔するのね』
『いや、四郎とはそんな関係じゃ……』
『ほーほー』
幼女が顔を赤くするカーリンを見ながらニヤリとし、
『なら、私も着いていきたいなー。そうしたら四郎お兄ちゃんにカーリンの良いとこ教えられるんだけどなー』
『ほ、本当か?』
『と言うか何で乙女なのよ! 押し倒しちゃえばいいじゃない』
『そういうのは、今はできないと言うか……やっぱり合意の上で……』
『乙女か!』
見た目幼女でも神の端くれ男女のあーいう事もこーいう事もよく知っている。それに神が人間に対してのそれは大概問答無用で行われる。
『それで、写し身のメダルは作れるの? カーリンも永いこと信仰心無かったから出来ない?』
『それが、四郎からの信仰心が結構多くて、なんとか1枚くらいは』
四郎からの信仰心(おっぱい教)は一日中側にいて崇め奉っているため、溜まりが早いのだ。
『それなら作って! お願い!』
ディーニュが土下座しそうな勢いで言った。
『神の世界で一人でいるのは寂しいんだよ! 他の神のように人といたいんだよ!』
カーリンにもその心はよくわかった。同じような立場に四郎に会うまではいたのだから。
『わかった。少し待って四郎起こすから』
そう言って四郎に往復ビンタをかました。それは四郎が起きるまで続いた。
『そこは優しく起こそうよ』
こうして頬の痛みに目を覚ました四郎に写し身のメダルを渡し無事にディーニュは四郎に着いていくことになった。
幼女神です。言っときますが、お腹は黒いです。




