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「どうしよう、困った」
『どうしたの? アタシが相談にのってあげるわよ』
「金がない」
『…………』
アマテーラス神殿から街道を通り途中の村に着いたとき四郎が困った様にしていたので聞いてみるとそうかいされた。
四郎は村の小さな神殿でも頼って奉仕作業をして泊めてもらおうと考えていたのだが、人は間に合っているとのことで断られた。一晩くらいは泊まっても良いと言われたが。
「働かないと明日食べる飯にも事欠くことになる」
その言葉にカーリンは顔を強張らせた。地上の食べ物を食べるのを楽しみにしているカーリンにとっては信者がいなくなった事よりも重大だった。
『働きましょう! ご飯の為に!』
「いや、その働くとこも無いんだが……」
アマテーラス神殿から伸びる街道の近くの村だといっても少し大きめの村であるだけで、主要な産業もなくアマテーラス神殿に行くものが宿泊する宿と酒場で少し潤っている村なのだ。当然村人で十分に賄える仕事しかない。
『そういえば、ギルドって無くなったの?』
「……ギルド?」
『ちょっとした依頼を受けて報酬を貰うとこ』
「あるのかな? 聞いたことがないぞ?」
四郎が知らないのも無理はないアマテーラス神殿ではギルドに頼らず信者がその仕事を奉仕作業としてしていたため、神殿にはギルドが無かった。オームスさえもその事を失念していたため伝えられていない。
歩いていた村人に聞いてギルドの場所を教えてもらい、その場所に行ってみる。
『ここがギルド』
「うん、看板がかかっているな」
玄関の上に剣と盾とハンマーの看板があり《雑用も気軽にご相談下さい》という文面も書いてある。入って見るとカウンターにオバサンが暇そうに座っている。
「この村に着いたばかりなんだけど、何か仕事あるかな?」
話しかけなければ進まないと思いオバサンに聞いてみる。
「ギルドの身分証は?」
「身分証?」
「持ってないのかい? それなら依頼を受けられないよ」
『身分証はここで作れないの?』
「できるよ。この紙に名前と年齢を書いてくれ」
そう言って二人に紙を差し出した。二人は素直にそれに名前と年齢を書き込みオバサンに手渡す。
「十湯田四郎、年が17才とカーリン、年が……書いてないじゃないか!」
『えっ? 書いてるでしょ?』
「何でこんなふざけた数字なの? こんなの神様位しか……」
『……あの、神なんですが』
オバサンがカーリンを見る。そしてポケットから銅色のメダルを出した。
「嘘は言っちゃいけないよ。私は鑑定の神のメダルを持っているんだからね」
そう言ってカウンターの上にメダルを置き、
「顕現せよ。鑑定の神、ミルミル」
銅色のメダルが光りそこに眼鏡が現れた。そしてその眼鏡をオバサンが掛ける。
「さあ、これであんたの偽りは全て剥ぎ取られ真実を……」
オバサンが固まり、そのまま脂汗を流して震え出した。
「ほ、本物の神様……」
『神と言っても廃れた神ですが』
「失礼しました! 神罰は勘弁して下さい!」
オバサンが謝り、
「申し訳ありませんが、神様をギルドに入れることはできません」
そう言った。なぜならギルドは人間のための組織であり、神はその手助けをしてもらうことで感謝をするものだからだ。
『アタシは働けない? ご飯を食べられない?』
神が絶望した。
「いやいや、まてまて、おいらが身分証作ればおいらの神だから一緒に仕事できるよな」
今にも倒れそうなカーリンを見て慌ててオバサンに確認する。
「それなら大丈夫です。ちゃんと2人用の依頼を受けられますよ」
「そう言うことらしいから、依頼を見よう」
『はい』
オバサンが身分証を作っている間に依頼を見る。依頼は黒板の様なものに紙を留めてあるみたいだ。
「鹿を一週間以内に1頭狩ってくるってあるな」
『それやる!』
「できるの?」
『見つければ、首をスパーンと……』
「それじゃこれにするか」
その紙を取ってカウンターに行く。ちょうど身分証もできた見たいで青いカードを渡された。
「これには依頼を受けた回数とその失敗と成功の回数が自動で書き込まれるから。他のギルドでもちゃんと見せるんだよ」
鹿狩りの依頼を受理してオバサンが忠告してくる。それに礼を言って外に出る。
外は暗くなってきていた。
「今日は神殿には泊めさせて貰おう。鹿狩りは明日から行こうか」
『そうね。そうしましょう』
こうして神殿の一室を二人で借りたのだが、
「こいつ、寝相悪いな」
夜中に目を覚まして見たカーリンの寝相に呆れて、蹴っ飛ばされて床に落ちていた毛布をかけてやり、もう一度眠りに着いた。
「はっ! おっぱい拝むの忘れてた!」
定番のギルド。