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「ーーと言う訳で、依頼は取り消しになりました」
いつもの受付嬢が四郎に説明する。そしてその事に茫然としている四郎の手元に依頼書を滑り込ませる。
「ていっ!」
その依頼書を百人一首のように弾き飛ばしカウンターの奥に飛んでいく。
「ああっ! 薬草採りがーー」
追いかけて行く受付嬢を放置して四郎が肩を落としてカーリンの元へ戻った。
「依頼をキャンセルされました。また新しい依頼を探さなくてはなりません」
『……ドンマイ』
優しいのはカーリンだけだった。他の者は、
『ここまでやって、ただ働きだってーのかよ! どーすんだ!』
アルッテがつかみかかる。
『モーニング頼んだんだぞ! 代金どうすんだよ!』
「そっちかよ!」
仕方なく四郎はモーニング代を払った。アルッテは美味しそうに食べながら、
『それで、今までの代金は?』
「成功報酬だし……」
『それでも、今まで時間使ったんだからその分貰ってもいいんじゃないか?』
「……そうなの?」
『労働の代金は使った時間を考えてもらうのが基本です! どんなにサボってても』
「最後の一言は余計だ!」
『時は金なり! これは時間はお金に換金できると言うことです!』
『アルッテ、それおかしい……』
「そうか! なら依頼人にお金として払って貰って良いってここだよな!」
カーリンのツッコミ虚しく、二人の妄想は加速する。
『なら、早速ハークの所へ行こう』
「先生、ハーク君の宿がわかりません」
『何! なら受付嬢に聞いてくるんだ! そしてハークのヤサを押さえるんだ!』
「わかりました」
『借金取りの基本は、ヤサを押さえて相手が根負けするまでお願いする。それだけだ。わかったか!』
「わかりました!」
『よし行くぞ!』
『ちょっと、まちーー』
とんでも理論で丸め込み、四郎を従えて走り出したアルッテにカーリンの制止は届かなかった。
「アルッテ、いたか?」
『四郎は?』
2時間後、疲れきった表情でトボトボと歩く二人を見てカーリンはため息をついた。ギルドでハークの泊まっている宿を聞いて、個人情報なのでと言われて教えてもらえず、やけくそに町中の宿を走り回ったが何処に泊まっているかもわからなかった。
「ちくしょー。何処に隠れやがった」
『我々が来るのを察して逃げたに違いない』
『宿屋で騒ぎ起こして追い出されただけだからな。私がどれだけ頭下げたと思ってるんだ……』
二人揃って宿へ押し込んで親父に叩き出される。または宿にいた冒険者叩き出される。その都度にカーリンが止めて謝る。その間に二人が逃げる。それを何度も繰り返して最終的に宿屋から危険人物としてマークされるまでになった。
『よし、明日も聞き込みをするぞ』
「明日こそは見つけましょう!」
『させないからな! ヒピュスの布団に押し込むぞ!』
現在、勇者宅で食っちゃ寝生活を満喫中の駄女神。その布団は本人以外を引きずり込み二度と出ることの出来ない牢獄になる。
「『それだけは勘弁してください!』」
土下座する二人を連れて勇者の家へ帰った。
『……それで、この状況は?』
「見た通り、変態です。覗き魔です」
メイド達がそれぞれ武器を持って走り回っていた。その中の一人を捕まえて聞いた答えがそれだった。
「それで、捕まったの?」
「それが……」
「逃げられましたわ」
「追い込みかけている時にあそこから抜けられるとは……」
四郎達の前にメイド達を率いるギャリーとパミュリュムが悔しげにやって来た。
「まあ、あれだけ追っかけ回したからもう来ないでしょう」
『甘いですね。犯罪者は狙った獲物は逃さない。これが常識ですよ』
得意気な顔で口を出すアルッテ。
「本当ですか?」
『どっかの3世もそう言ってます』
「お前が何で知ってんだよ!」
『神だから!』
「あーー、ハイハイ。ご飯はまだ?」
四郎は聞き流し、メイドに夕飯の事を聞きメイドと共に出ていった。
『こうしてはおれん! 変態を捕まえる為に罠をはるぞ!』
「具体的には?」
『それは……』
アルッテとメイド達が集まって話し合いをしている。
『いい予感がしない』
カーリンの呟きはこの後、的中することになる。




