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『それで、彼女は見つかったのか?』


 真夜中の宿。虫の声さえ途絶えた時間に小さい蝋燭の火の前で男がどこからともなく聞こえてきた声に頭を垂れる。


「直ぐに見つかるはずです。もうしばらくお待ちください」

『あれが無ければ始まらない。急げよ』

「わかっています」


 蝋燭の火が不意に揺らめき消える。その時に一瞬、壁にあるはずのない影が浮かび闇に消えた。


『む? 何処かで知らない神の気配が……』


 刹那の間に感じた不穏な気配に顔を上げたこの国の神。真剣な顔をしたその手には神官きんにく新人写真集が開かれていた。


『まあ、いいか。それにしても新人はほっそいなー。鍛えがいがある』


 気配が完全に消えているのを確認すると、写真集に意識を戻した。この時に何があったのかよく調べていれば、大きな騒動に発展しなかったかもしれない。


「どうです? 何処に潜伏してるかわかりましたか?」


 ギルドに入ってきた男が、四郎を見かけて話しかけた。


「ああ、依頼人の……依頼人さん」

「名前覚えてないんかい!」

「いや、教えてもらってない」

「へ? そうでしたっけ?」

『あの時、絵が凄すぎて聞いてません』

『画伯じゃなかった?』

「ディーニュちゃん違うよ」

『G・ハークです』

「アルッテ、画伯もじっただけだろが!」

「……合ってます」

「マジっすか!?」


 アルッテがどや顔を四郎に向ける。四郎はそれに目を向けずに依頼人の方に疑惑の目を向ける。


「そんな目で見られても、名前は変わりませんよ」

『偶然とは恐ろしいモノだ』

「本当にな」

「それよりも、見つかりましたか? 彼女」


 四郎に期待するような目を向けて聞いてきた。四郎はそれに顔をしかめて、


「実は……難しいです」

「……そうですか」

「画伯の絵を認めてもらうのは」

「はい?」

『どっかのメイド100人に聞いてみました!』

「じゃじゃん!」


 四郎が、どこからともなく円グラフの書かれた厚紙を出す。


『……手が3本て何? が32%』


 言いづらそうにカーリンが言う。


『足が曲がってるね。が26%だって』


 無邪気にディーニュが手を上げる。


『全体的にキモい。が88%で美術品として認められませんでした。以上!』


 アルッテが最後に止めを指す。


「何で絵の評価になってんだよ! それにグラフと数値が合ってねえよ! 100%越えてんだろうが!」

『……心意気?』

「そんなもんねえ!」


 テーブルを叩いて抗議するハークが落ち着いた所で四郎が言う。


「暇そうな黒メイドに絵を持たせて買い物ついでに探させてるのでお待ちください」

「お前らも探せーー!」

「『ギルド内では騒がないでください』」

「お前らも探せーー!」


 その時に入り口に人影が現れた。黒い髪に白いカチューシャ、黒いメイド服に白いエプロン。その人物は手に持った画伯の絵をヒラヒラさせながら四郎の側に来た。


「見せて回ったけどもキモいって言う人が増えただけだった」

「お疲れ様。今日の夕飯は?」

「肉屋が牛を仕入れてたから持ってきて貰って、ステーキだよ」

『付け合わせは私が作る!』

「料理全般手伝ってね。ディーニュちゃん」

『良いよー』

「よっしゃ! これで負担が減る!」

『これだから、レインボーは……』

「アルッテだけ筋ばったヤツね」

『それは四郎に譲ってくれ。固いのが良いそうだ』

「勝手に決めんな!」

「それじゃ、これ返すからね」


 テーブルに置くと帰っていった。


 帰っていく後ろ姿を目を見開いて見つめるものがいる。


「ミツケタ……」


 騒ぐ四郎達には目もくれずに口元を歪めて笑うハークが呟いた。


 

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