表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fantasy Saga(仮)  作者: 天海 燈乃
第1章:黎明
53/54

第46話:霧の洗礼

お待たせいたしました!

またなんとか再開できそうです。

更新頻度は下がるかも知れませんが、少しづつがんばります。

よろしくお願いします!

また応援コメントとかしていただければ嬉しいです!

「……おい…カシラがお呼びだ」


あれから程なくして低く落ち着いた声で起こされた。


カイが重い瞼を持ち上げると、そこには木製の仮面を被った男が立っていた。


差し出されたのは、表面を滑らかに削っただけの簡素な杖だ。


カイはズキズキと熱を持つ右腕を庇いながら、ゆっくりと上体を起こす。


全身の細胞が悲鳴を上げているが、ここがどこであれ、動かなければ先はない。


外に出ると、そこは乳白色の深い霧が支配する世界だった。


視界は数メートル先で途切れ、巨大な樹木の根が複雑に絡み合う間を、泥を跳ねさせながら歩く。


すれ違う里の者たちは皆、仮面の下で静かにカイを見つめ、声もなく霧の向こうへと消えていった。


案内されたのは、里のなかでも一際太い巨樹の空洞を利用した広間だった。


立ち上る香草の煙の向こう、一段高い場所に、獣の骨をあしらった仮面の男が座っている。


彼こそが、この泥濘の地を束ねる頭だ。


「……目覚めたか、草原の若人よ」


頭の声には、威圧感よりもむしろ、威厳のある重みがあった。


「あんたが、ここの頭か。……助けてくれたことには、感謝する」


カイが杖を突きながら短く告げると、頭はゆっくりと頷いた。


「礼には及ばん。我らとて、ただの慈悲で動く余裕はない。……お前が連れていたあの巨熊を退けた力。それがこの里を救う『可能性』に見えたからこそ、拾い上げたに過ぎん」


「力……右腕のことか」


「そうだ。我ら森の民は、この泥と霧の中で細々と命を繋いでいる。だが、それも限界に近い。……お前のその異質な力が、我らの窮地を払う『楔』となるならば、我らはお前を客人として迎えよう」


頭の言葉は理知的で、かつ現実的だった。


カイもまた、自分が一方的に守られる立場ではないことを悟る。


その時、広間の奥を覆っていた薄い布が静かに揺れた。


「……父様とうさま。お呼びでしょうか」


鈴の音を叩いたような、澄んだ声が響く。


現れたのは、質素な白い衣を纏い、顔の半分を覆う仮面を手にした少女だった。


「おお、エリスか」


それまでの厳格な面持ちを和らげ、頭の声に父親としての慈愛が混じる。


「この者の腕を診てやってくれ。……昨日、お前が精一杯の癒やしを施してくれたおかげで、こうして立てるまでになったのだな」


エリスと呼ばれた少女は、音もなくカイに歩み寄った。


彼女の指先が、包帯越しにカイの右腕にそっと触れる。


その瞬間、焼けるようだった熱が、春の陽だまりに溶けるように引いていくのをカイは感じた。


「……今は、痛みを眠らせただけです。無理をすれば、すぐにまた身体を焼くでしょう」


エリスはカイの目を見ることなく、静かに、そしてどこか寂しげに告げた。


その瞳の奥には、今のカイには読み取れない深い「諦め」のような色も宿っている。


「カイと言ったな。……この里の現状を、エリスに案内させよう。我らが何を恐れ、お前に何を求めているのか。それを知った上で、改めて答えを聞かせてくれ」


頭の言葉に、エリスは静かに一礼し、カイを促すように入り口へと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ