9.えっとえっと!
「とりあえず今できることといえば、壊れた家具をどうにかするのと……ボロボロのブランケットをどうにかすることくらいか」
「そ、そうですね!」
言いながら、俺は掃除する時に端へと追いやった家具に近づく。
まあ、状態は悪いが素材を調達すれば直せないこともないな。
しかし道具がない。何か工作道具があれば助かったんだけど。
「道具を探している感じですか?」
「そうだね。道具があれば後は簡単なんだけど」
少し困りながら答えると、レイレイはうむむと唸る。
「家の裏にある物置とかって探しましたか?」
レイレイが指を立てて、小首を傾げてきた。
「物置……え、そんなのあるのか?」
「あ、あります。探索に出かける時、ちらっと家の裏を見た時に見つけました」
「……マジか! ワンチャンあるかもしれないな! さすがはレイレイ、頼りになるよ!」
「ほ、本当ですか? ……嬉しいです」
そう言うと、何故か長くとんがった耳の先が赤くなる。
あれ……もしかして照れてるのかな?
俺、何か変なこと言ったっけ。
「……!」
じっと見ていると、レイレイが慌てて両耳を隠した。
やばい、見てるのバレたか。
さすがに女の子のことをじっと見るのは気持ち悪いよな。
「あ、赤くなってましたか?」
「いや、ちょっとぼうっとしてただけだよ」
「そ、そうですか」
どこか安堵した様子で、レイレイは胸をなでおろした。
やっぱり照れていたのかな。
どこに照れる要素があったのだろうか。
いや、もしかしたら単純に俺に見られて嫌だっただけかもしれない。
そう考えると悲しくなる……あまり気にしないようにしよう。
気持ちを切り替えるのも兼ねて、咳払いをしてから物置があるだろう場所へと案内してもらう。
家から出て、裏へ。
「本当だ。多分ここ、物置だな」
家とは別に、また小さな小屋が設置されていた。
こんな場所が本当にあったとは。
普通に見落としていた。
入ってみようかと、扉に手をかける。
「あれ、全く動かない。歪んでるのかな」
見たところ、しばらく放置されているような雰囲気がある。
扉もボロボロだし、扉が壊れていても不思議ではないか。
「あ、あの。わたしが試してみてもいいですか」
「いいけど……大丈夫? 怪我しない?」
純粋に心配である。
特にレイレイなんて細身だし、万が一転んだりして怪我したら恐ろしくて仕方がない。
彼女が引き戸に手をかける。
もしものことがあっても大丈夫なように、背後で待機しておくことにする。
よし、いつでもこい。
勢いよく後ろに転んでも俺が受け止めてやる。
「え、えい!」
――ガコン!
木々がミシミシと音がなる――ってレベルじゃない。
あれほど動かなかった引き戸が勢いよく開いた。
嘘だろ……男の俺が本気で開けようとしても開かなかった扉を簡単に……?
「開きましたよ!」
「すごいな……さすがはレイレイだ!」
「えへへ、嬉しいです」
もしかして俺が過保護すぎるのかな。
にしても、一体その細身の体のどこから力が湧いてきているのだろうか。
不思議だ。
顎に手を当て、唸っていると知らぬ間にレイレイが中へと入っていた。
俺も慌てて背中を追いかける。
「だいぶホコリっぽいな。どうだ、何かありそう?」
使えそうな物を探しながら、尋ねてみる。
「あ! 裁縫セットがありましたよ!」
振り返ってみると、満面の笑みで道具を持っていた。
裁縫セットか。これがあればボロボロのブランケットはどうにかなるな。
「いいじゃん! ナイスだよ」
「ふふ、頑張りました」
本当に頑張って探したようで、肩とか手がホコリまみれになっている。
せっかく綺麗なのにもったいないな。
気になって仕方がないので、そっとホコリを払うことにした。
「よし。これでホコリは大丈夫だな……ってどうした?」
ふと顔を上げてみると、完全に体を硬直させたレイレイの姿があった。
耳も真っ赤である。
「ご、ごめん! 気持ち悪かったよな!」
思わず払ってしまったが、よく考えれば普通にアウトである。
なんせ、彼女は年頃の女の子だ。
男の人に近づかれるなんてもってのほかだろう。
「全然大丈夫です! 嬉しいというか、めちゃくちゃ嬉しいというかニヤニヤが止まらないというか、えっとえっと!」
手をぶんぶん振り回しながら、レイレイが後ずさりする。
おいおいおい、本当に大丈夫か。
「あ! 工具もありました! これで家具も直せますね! は、速く戻りましょうか! 家の方から音もしましたし、えっとえっと。多分イブさんたちも帰ってきてると、えっと、思います!」
「お、おい!」
レイレイはそう叫びながら、物置から飛び出していった。
一人残された俺は、若干反省する。
やっぱり年頃の女の子は難しいなぁ。
あとで謝ろう。
もしこれで「スレイさん……ごめんなさい。ちょっと」って言われたら死ねる。
というか普通に死ぬ。
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