10.安定のイブ
「おまたせ……ってどうしたの? 二人共どっか息切れしてるわね」
「ちょ、ちょっとな」
「別に気にしなくても大丈夫です! はい!」
「ああ、そう?」
困惑した様子のイブに、俺たちは笑顔で答えて見せる。
なんていうか、説明しろって言われても難しい。
というか、説明したら終わりな気がする。
レイレイも話をしたいわけじゃないらしいし、ここは甘えて黙っておくことにしよう。
「素材持ってきたよ! 木材とか、木材とか!」
「木材しか取れなかったわ。まあ、森の中だしね」
二人の後ろには丸太がごろんと転がっていた。
木材しか、と言っているが全然これでも大丈夫である。
「ありがとう。んじゃ、工具もあるし早速直すか」
俺は工具箱から道具を取り出して、ふうと息を吐く。
「あ、裁縫道具あるじゃん! ねね! 私裁縫やっていい?」
ミーアがレイレイが持っていた裁縫道具を見つけたのか、目を輝かせながら聞いてきた。
「お前……裁縫とかできるの?」
正直、ミーアが裁縫をするなんて想像できないんだけど。
「できるよ! 多分! だから安心して! 多分!」
「わ、わたしが付き添います。これ以上ブランケットが大変なことになったらと思うと心配ですし……」
「レイレイ手伝ってくれるの!? よし、それじゃあ一緒にやろう!」
レイレイが手伝うならある程度安心していいだろう。
彼女たちが裁縫をしているのを見たことはないが、ミーアよりかは断然できそうである。
「それじゃああたしたちは家具を直そうかしらね」
「だな。イブは壊れた家具を外に持ち出してくれ」
言って、俺は工具箱を持って外に出ていく。
とりあえず丸太を加工して、使えるようにするか。
ノコギリを取り出して、いそいそと丸太を切り始める。
「……遅いわね」
「そりゃ、遅いわな」
家具を持ってきたイブが、退屈そうに聞いてきた。
仕方がない。なんせ人力なのだ。
もし魔道具とかがあれば別だろうが、そんなものはない。
「スレイ、ここは任せてちょうだい。あたしがやる」
「できるのか?」
「大体、どんな部品がいるのか分かったし大丈夫よ」
言いながら、イブが丸太に近づく。
すると、爪が一瞬伸びたかと思うと素早い速度で丸太を加工していった。
ええ……なんだそれすげえ。
吸血鬼ってそんなこともできるのか。
「何じっと見てるのよ」
「いや、ちょっとすごいなって」
「当然のこと。それじゃ、素材渡すから家具の方頼んだわ」
「おう。任せとけ」
俺はイブから素材を受け取って、工具を手に持つ。
さて、ここから俺が活躍する場面だ。
まずは机。
こいつは脚の部分がダメになってしまっている。
腐敗した脚を取り外し、新しい脚を取り付ける。
あまり工作をした経験はないため、決して見た目がいいわけじゃないけど使えないわけではないはずだ。
「やるじゃん」
「やっぱ見た目は悪いけどな」
俺は続けて、椅子の修理に入る。
こいつは座る部分が大きく腐敗している。
このまま座ってしまえば、大怪我まったなしだ。
一度椅子を解体し、新しく組み立てていく。
……よし。これで大丈夫なはずだ。
「イヴ、試しに座ってみてもらえるか」
「大丈夫? これ、座った瞬間に後ろにこけたりしない?」
「大丈夫だって。俺を信用してくれ。多分大丈夫なはずだ」
「多分って……いいけど」
イヴは嘆息しながら、椅子にちょこんと腰を下ろす。
「大丈夫そうね。座り心地もいいわ」
「そうか! よかった、役に立てたな」
俺はふうと胸を撫で下ろす。
「それじゃあ中に家具を運ぶとするか。多分、今頃ミーアたちも終わっている頃だろうし」
「そうね。運ぶの手伝うわ」
俺たちは家具を持って、家の中に運んでいく。
中へ入ると、やはり裁縫は終わっていたらしい。
ただ、レイレイは汗だくでぜえぜえと肩で息をしている。
「スレイ! 裁縫できたよ!」
「おう。ありがとうな。……で、レイレイはどうした?」
「ぼ、暴走を……止めるのが……大変でした……」
「あー……お疲れさまです」
大体察することができた。
ブランケットを見てみると、何回か直した後が残っている。
大変だったんだな。
レイレイ、本当にありがとう。
「わぁ! 家具直ってるね! これで座れる!」
運んできた椅子にミーアが嬉々とした様子で座る。
足を揺らしながら、小刻みに肩を揺らしていた。
「スレイすっごいね! こんなこともできるんだ!」
「別にすごくないけどな。それよりも、満足してくれたようで嬉しいよ」
「うん! 満足満足!」
喜んでくれたようで何よりだ。
俺も頑張った甲斐がある。
「…………」
隣を見ると、黙っているイブの姿があった。
「イブもありがとな」
「……っ! べ、別に大丈夫よ!」
また目を赤くしてる。
やっぱりもう少し素直になってもいいのになぁ。
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