第1話 父が託した赤い球
K県にてここ数か月の間、連続行方不明事件が発生している。それを捜査している、暁零士刑事。
私立探偵の新堂條は、探偵稼業の傍ら行方不明の父を探している。
迫りくる大いなる野望・暴力・そして絶望に二人は打ち勝てるのか!
それは條の持つ赤い球がすべてを握っている・・・
トゥルルルルル
「はい、こちら新堂探偵事務所。って、ああ零士さんどーもー。」
「おう元気か、條。早速なんだけど実は・・・・」
暁零士刑事は、この数か月に及んでいる連続行方不明事件を捜査中である。
なかなか思うように進展せず、零士は探偵で度々世話になっている新堂條に捜査協力をする次第である。
「そうですかー。俺もその事件については多少気になってはいたんですよね。なんつーか、その、今までの事件なんか比べ物にならないくらい」
「ならないくらい、何だ?」
「ヤバイ。果てしなくヤバイ匂いがするんですよー。俺の探偵アンテナがね!」
「フッ、そんなことか。
まあ確かにこうも事件が長引くとかなり大規模なものになってしまってるのかもな。
とにかく、いつまでも解決できないのも警察の威信に関わるからな。それじゃ、情報が整理したらそっちの事務所で詳しい内容を話すんだが、いいかな?」
「ウチのほうは大丈夫です。いまやってることも個人的なことなんで、いつでも来てくださいよ。」
「個人的・・・・・・それは、満博士のことか?」
「え?まあ・・・そうです。親父です。こっちもなかなか進展がなくって・・・」
新堂満は條の父で、生物学系の研究をしていた博士である。現在條と別れており消息不明である。
「なんだかなあ・・・研究とかになると他のことが疎かになるほど入り込んじゃう人だったからなあ・・・今頃どうしてんだろ。」
生死の情報なども無いが、必ずどこかに生きている。
根拠はないが、そう思えてしまう。
その時ふと思い出した。
親父と別れる間際に受け取っていたモノを。
條は、事務所にある本棚の下部にある引き出しを開ける。そこには30センチ四方の箱があり、中を開けてみると、そこには赤色の球状のようなモノが入っている。
よく見ると、若干透き通っているようで中心がなにかモヤモヤと液状なのか光かどうかわからないような、重さもそれ程感じなくて見ているととても不思議な感じな球である。
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(いいか、條。もし本当に危険なことが起こってしまったら・・・この”ブラッドコア”を使うのだ。じゃ、いつかまた会おう。我が息子よ・・・・強くなれ・・・・!)
(待ってくれよ、親父、おやじいいいいい!!)
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「親父・・・・」
「見つかるといいな、博士。じゃ追って連絡するよ。それじゃ。」
連続行方不明事件については現在約20名が行方不明であり、それらが死亡したとの報告は無い。恐らくは何らかの組織により拉致されているというのが濃厚、というのが警視庁の考えであり、條もその線が一番可能性が高いとみて行方不明者の身元を探ってみる。
しかしその殆どは警察の調査済であるので、新たな情報は出てこなかった。
そこで今進んでいるのは、その行方不明を画策したと思われる組織の調査である。確証を得たものではないが、噂レベルでそのような怪しい情報が少なからず入ってくる。
次の日、條は、街の喫茶店にいた。
店内は大人の雰囲気が漂って、お茶やスイートは勿論、ランチも種類が多くそこそこ評判がいいということだ。條は喫茶店に入るのは初めてで、何となく照れ臭かった。
赤のベスト、白のシルクのシャツ、黒のズボンのスリムな服装に黒のハットという出で立ちは意外に目立っていた。
何故ここに来たかというと、零士刑事がこの場所に指定しこれから一緒に捜索をするプランを検討するとのことである。
「よお、條。待たせたな。」
紺のトレンチコートを片手に持ち、黒のスーツで入店してきた零士は身長も高く顔立ちも世間でいうイケメンなかんじで、誰もが羨むダンディーな男である。
複数の女性の客もちらっと見ていた。
「ああ、どーも零士さん。でもなんでここなんすか?俺の事務所でもよかったと。」
「それでもよかったんだが、今腹減っちゃってね。で、ここは俺の行きつけの店だし。ペペロンチーノが結構いけるんだよね。600円で食べれる。」
「そりゃパスタにしてはいい値段ですね。俺も別の機会にまた来ますわー。」
「そうか。よし、この事件が解決したらまたゆっくりと御馳走してやるよ。」
「やったぜ。」
「それじゃ、早速本題にはいるが。」
ガシャーン!!
突然、喫茶店の大きな窓ガラスが割れた。人が飛び込んできたのだ。
「何だ!?一体!!」
「大丈夫ですか!?」
條と零士は飛び込んできた人に呼び掛けた。
「か、かいじんが!怪人!!」
「怪人?」
「零士さん、あれ!」
破られた窓ガラスの向こうおよそ数メートルに、想像もつかない生物が現れた。
グオオオオオオ・・・・
「キャー!!」
「逃げろー」
外の人たちは慌てふためいている。おぞましい怪人に。
それは2メートル以上ありそうな緑色の身体に甲羅のような硬そうな皮膚をまとって、口が大きく牙っぽいのがキチキチをうごめいている。黄色のぎらついた目で周囲を伺い無差別に人を襲おうとしている。
その体にはぽつぽつと赤い斑点も見える。血だ!人を襲ってその返り血を浴びているのだ!何人かはすでにあの怪人の餌食にされていたのだ。
ヤツはこの條達のいる喫茶店に向かおうとしている。店内は完全にパニック状態で、逃げようにも入口のほうから怪人は向かってくるので、そこから逃げれば完全に殺されるし、全員テーブルの下に隠れているのが精一杯だ。キャーとか助けてーとか店内は悲鳴で埋め尽くされどうすればいいのか分からない。
「くそう!」
零士は銃を手に取り射撃をしようとした。刑事になって以来、射撃訓練や競技では優秀な成績を収めているが、実践という面においてはこれが初めて。しかも相手は人とはおよそかけ離れた怪人である。銃で効き目があるかどうか分からない。分からないけどやるしかなかった。
ハンマーを引き、両手で構えて、トリガーを引く。訓練と同じように、撃った。淀みはなかった。人命を守るために、零士は怪人に向かって撃った。
ビシュ!
零士の放った弾丸は、怪人の身体にヒットした。腹部あたりなのだが、当の怪人の方は少し怯んだ程度で倒すほどには至らなかった。
グオオオオ・・・・
「そんな・・・命中したのに・・・。」
零士は動揺した。いや、初めに撃つ段階からそういう状態だった。もっと冷静な状態なら頭の部分を射抜けたろうが、若干力が入って腹部になってしまった。人間ならそれでも致命傷になるものだが、相手は怪人。およそ人間の身体能力の何十倍はありそうだと思える見た目。ニューナンブM60程度の銃では歯が立たなかったようだ。
「くそう!今度こそ!」
「零士さん、ちょっと待ってください!」
條が引き留めた。彼が精神的にあまりいい状態でないということに気づいて制止して話かけようと考えた。
「俺、実は考えがあるんですよ・・・」
「あ!?今そんな悠長に話してる場合じゃない!」
「聞いて下さい!俺、アレをもってきてるんですよ、アレ」
「アレ?アレってまさか・・・」
「そう、これ、持ってきてるんですよ。」
それは條の父、満博士から貰い受けたあの赤い球だった。
「何でそんなの持ってきてたんだ?」
「いや、なんかね。ヤバいかな、と感じたんですよ。それでこれを持ってきて・・・」
「どうするんだ、それを?」
「使うんですよ!親父がヤバくなったらこれを使えって。」
「でも、実際どうやって使うんだ?それ博士はちゃんと教えてくれたのか?」
「えーっと、それはー・・・まあやってみますよ!」
(大丈夫かよ、條・・・相変わらず肝心な所を)
割と無鉄砲なところがある條を零士は心配であったが、今回は自分自身も精神的に追い詰められているのを自覚しているので、この條の行動力に賭けてもいいかな、とも考えている。
「いくぜ!」
ブン!
條はもっている赤い球を怪人目がけて力いっぱい投げていった。おそらく條が考えていたのはこうだった。
よく店とかにあるカラーボールがあって、それを人にぶつけると染料がこびりついてなかなか汚れが落ちないアレのように使うのだと。
ただこれは普通のボールじゃない、当たれば爆発したり、溶けたりなんかして倒せるんじゃないか、という條の勝手な希望であった。
しかしその思いを打ち砕くかのようにその球は普通のボールよりも推進力がなく、怪人の手前にポトリと落ち、割れることもなく足にこつんと当たる程度であった。
・・・・・
「あれ・・・・」
「おい、條・・・・何も・・・」
グルル・・・
怪人はその球を持ち腕に力を込めて、ヤツは條の方向に投げていった。
ブオオオオオオン!!!
その球は、條が投げた時とは段違いの速度であり、ピッチングマシーンのごとく一直線に條のところまで到達しようとした。
「だ、だめだ逃げれない!」
「じょおおおおおおおおおおお!!!!」
余りの速さに條の身体は反応できていない!條はこのまま球をくらってしまうのか!!一体この怪人は今回の事件とどう関係しているのか!そして條は行方不明の父を探し出せることができるのだろうか!!!




