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《叛逆の魔物使い》〜落ちこぼれE級の俺が魔王軍にスカウトされたので責任持って人類を滅ぼしにかかります〜  作者: 時雨
新たなる世界

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第18話 ゴブリンの拠点

 深々《《しんしん》》と降りしきる灰が、目に見える全てを白く彩り、踏み鳴らす足音はギュッギュッと小気味の良い音を奏でる。

 ナラク達は、そんな火山灰が降り積もる真っ白な森の中を歩いていた。


「この空から降る灰、体がかゆいガル…」


「ふふ!僕はプルプルだから平気だ…わぁぁ!ブルブルするなら言ってぇぇ」


 最後尾で辺りの魔物の気配を探りながら歩くガルラは、定期的に体を震わして毛皮についた火山灰を振り落としていた。

 ガルラの背に乗るスラピーは、そんなガルラの振り払いをモロに受け、遠心力により体がブーメラン状に変形してしている。


「それにしても鬼の兄さん、すごい強さですねぇ。あっしら一瞬で全滅しやしたよ」


「まぁ、それなりに強くなってきたからな」


 案内役のゴブリンことゴブキチは、さっきからずっとナラクのことを煽てていた。きっと用済みになった瞬間に殺されるのが怖いのだろう。

 ナラクの予想通り、機を見計らかったゴブキチは真面目な顔つきで


「兄さん、折り合って一つお願いがあるだで」


 とお願いをしてきた。


「ちゃんと、あっしらの拠点に案内する約束は果たすで。その代わりあっしの命は見逃してほしいだで」


 カタカタと体を震わせながらゴブキチはそう懇願する。


「おっけー、分かったぜ。お前の命は保証するよ」


「鬼の兄さん、いや兄貴!ありがとうだで!!このご恩一生忘れないだで!!」


「大袈裟なヤツだな笑」


 きっと彼は、これからこの先で行われることを察しているのだろう。自身の身の安全がナラクによって保障されたゴブキチは、パァっと顔を明るくして歩幅を大きくして歩く。




 あれから三十分ほど、白い森の中を歩き続けだろうか。高く聳える樹木をあと数本抜けたところで岩場に突き当たる。そんな場所で突如、ゴブキチが歩みを止めた。


「着きやしたぜ。この先があっしらの拠点だで」


 冷んやりとした風が目の前から吹き付けてきた。


 ゴブキチが指を刺した方へ目線を向けると、

いかにもといった風貌をした洞窟が口を開けて待ち構えていた。

 洞窟の入り口からは、ゴブキチのようなゴブリンが頻繁に出入りしている。


 ゴブキチの案内に嘘はなく、どうやら正真正銘ここがゴブリンの拠点のようだ。

 そしてこの中にニアの妹が捕まっている。


「待っててね、ラン」


 じっと洞窟を見つめるオーガの少女、ニアはいかにも姉らしい表情でそう呟いた。


「あっしらはこの洞窟で生活しているで。あ、あ!だけど気をつけるだで、少しでも中に足を踏み入れれば全員から袋叩きだで!」


 ゴブキチはあせあせとそう忠告する。


「そこでこの呪文の出番だぜ」


 そういうと、ナラクはスラピーの前に立った。


「ナラク!!あの作戦やるんだね!!」


「あぁ!ゴブキチが言うには、人質や捕虜はあの洞窟の地下に閉じ込めるらしい!そこに行って妹さんを救出してくれ!!」


 ナラクの立てた作戦はこうだ。まず、スラピーに何者からも認識されなくなる「イツノマニ」の呪文をかけゴブリンの拠点に侵入させる。

 そして地下に捕まっているというニアの妹を見つけ出し、保護できたらスラピーが合図を送る。

 その合図が届いたら、いよいよ開戦の時だ。外で待機していた俺達が一気に突撃する。


 合図はナラクとスラピー同士の通話で受け取るつもりだ。音に魔力を乗せて通話する、呪文転送の仕組みを応用したテクニックである。


 この作戦においてスラピーは、エンジンを始動させる点火プラグのような存在だ。ニアの妹を保護できなければ俺達は何もできない。


「大役だがいけるか??スラピー」


「任せて!!絶対オーガの女の子助ける!!」


 スラピーは自信満々でそう答える。


「よし!行くぜ!『イツノマニ《無存在呪文》』!!」


 スラピーの存在がスーッと辺りに溶けた。そのまま堂々と見張りのゴブリンの間を通り抜け、洞窟の中に飲み込まれていく。


「本当はニアが真っ先に突撃したいだろうけど、ごめんな。この呪文は俺と契約した魔物にしか使えないようなんだ」


 基本的にこの世界ではヒール系を除き、バフ系、特殊効果呪文を付与できる対象は本人のみである。

 しかしナラクの持つ固定スキル《魔物使役》では、()()()()()()()()()とみなされるらしく、ナラクは自身のみならず、スラピーとガルラにもアシスピ《初級速度向上呪文》やイツノマニを付与できた。


「仕方ないわ。あの子にしかできないんでしょ。でも合図が来たら私が一番乗りで暴れるわよ」


 ニアは肩をぐるぐる回しながらニヤりと口角を上げた。


「頼もしいな笑 あ、そうだ」


 ナラクはそう笑い返すと、懐から群青色のゴツゴツした物を取り出した。


「先陣をきる君にこれを渡しとくぜ」


「なにこれ?石??」


 ニアは怪訝そうな顔つきで渡された石をじっと見る。


「おっと、扱いには気をつけてくれよ。これはただの石じゃないぜ。コイツは「ズドーン石」と言ってね、全力で地面に投げつけると龍の咆哮のような大爆音を奏でて破裂するんだ」


「そんな物が…、一体何に使うんだい?」


「開戦の狼煙みたいなモンさ。中のゴブリンの数は相当だろう。いきなりズドーン石が炸裂すればかなりの混乱を呼ぶだろう」


「そこを一気に叩くって訳ね…」


「そーゆーことだぜ」


 大地が震えるほどの大爆音だ。洞窟の中で炸裂すればかなりの被害をもたらすだろう。


 突入を待つナラク達の緊迫した空気を彩るかのように、溶けることのない雪が軽やかに舞う。

 すでにスラピーが目の前の拠点に侵入してから一時間が経過しようとしていた。


 待ちに待ったスラピーからの合図は唐突にやって来た。


「ナラク!オーガの女の子保護できたよ!!」


「本当か!!よし来た!!」


 スラピーと会話するナラクの声を聞いたニアとガルラが、配置につく。


「準備はいいか!?奴らに格別の挨拶をかましてやろうぜ!!」


「えぇ!」

「ガルルル!!」


「行くぞぉぉ!」


 ニアは大きく振りかぶって手に持つズドーン石を洞窟へと放り投げた。その直後


「ズズガァァァァァァァァンッッ!!」


 音の衝撃波が空気を伝い、洞窟全体に激しい揺らぎを与える。そんな爆音を間近で聞いてしまった見張りのゴブリンは、鼓膜が破れたのか耳から血を垂れ流し膝から崩れ落ちた。


「ランを返せやぁぁッッ!!」


 突然現れた爆音の災害に襲われた拠点へ宣言通り、ニアが叫びながら先陣をきる。そんな彼女の数歩後ろからナラクとガルラも続いて突入した。


 不幸は続けて起こるものである。突如現れた爆音の災害により呆気に取られているゴブリン達。

 しかし、人と魔物の形をした次なる災害達は少しの待ったも与えずに襲いかかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《Profile》


ゴブキチ (ゴブリン族)


魔物ランク  D級

得意攻撃   棍棒振り回しベイ

好きな物   酒 自分 

嫌いな物   パリパリするタイプのワックス

       死


 ・体長は約一メートル。そこら辺のゴブリンとの見た目は大差がないが、髪型のみこだわりがあるらしく、モヒカンが流行しているゴブリン界の中で異質のオールバックを決めこんでいる。仲間の命より自分の命が大事であり、ナラクに脅された時も迷わずに仲間の拠点へ案内した。その点においてはとても信用ができる魔物。またかなり計算高く、常に先を見て行動を選んでいる。

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