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《叛逆の魔物使い》〜魔王軍にスカウトされたので責任持って人類を滅ぼしにかかります〜  作者: 時雨
新たなる世界

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第13話 魔王城

 ドアといった物もなく常時開放されている家の入り口に、柔らかな日差しが差し込んでいた。

 その光の絨毯じゅうたんは時間と共に伸びていき、ナラクの顔にのし掛かる。


「ん…眩しいなぁ。もう朝か」


「おはようございます。ご主人様」

「おぉ、おはようガルラ」


 ナラクはしょぼついた目を擦りながら、昨日キャサリンに国宝級とまで言われた魔道具を使ってゴシゴシと顔を洗う。


「水を手に入れるために遥か先まで取りに行かなければいけないなんて大変だな。人間界じゃとても考えられないぜ」


「そう考えるとご主人様のそれは確かに国宝級ガルね」


 共に早起きしたガルラと何気なく話していると突然、悪寒のような何かがナラクの身を包み込んだ。この濃密に圧縮されたデタラメな強さの気配には身に覚えがある。


「おはよう、ギルバートさん」


「おはよう。ナラク」


 日の光を背にし、逆光によって黒く染まったギルバートが入り口に立っていた。

 



 なかなか起きないスラピーをやっとの思いで起こしたナラク達は、再びギルバートに案内されながらガナン帝国内を歩いていた。


「よく休めたか??」


「お陰様で休めたぜ。助かるよ」


「それなら何よりだ」


「ところで、今回はどこに行くんだ?」


「魔王様のところへだ」


「「「……魔王様!?」」」


「魔王様って偉い人!?」


 スラピーがプルプル震えながら口をあんぐりと開けて聞き返した。


「あぁ。このガナン帝国で一番偉いお方だ。そうだ…、魔王様に謁見えっけんする前に、今の魔王軍の現状を伝えなければな」


 ギルバートは淡々と魔王軍の現状について話し始めた。


 ギルバートの話によると、魔王軍の拠点は全部で三国あるという。圧倒的な武力を誇る第一帝国『ヴィルヘイム』。日々進歩する技術が特徴的な第二帝国『アルバニア』。そしてここ、一番人口が多いとされる第三帝国『ガナン』。どの国にも必ず一人の魔王がいて、それぞれの国を治めているらしい。


「しかし、ここ最近人類の進化が激しくてな。強力な固定スキルを持つ人間が爆発的に増え始めたのだ」


「俺はずっと小屋に閉じ込められていたから、世界情勢に疎いんだけど、魔王軍は苦戦しているのか??」


「あぁ、大いに苦戦している。まだ帝国こそ奴らに見つかっていないものの、国境付近の前線では悪い報告が立て続けに送られてくるような状態だ」


 ギルバートは苦虫を噛み潰したような顔で空を見上げた。


「もっと他の強力な種族や大陸の魔物が魔王軍に加われば、一気に戦力が上がるのだが…」


「よく分からないが、なんで魔王軍に加わらない魔物がいるんだ??」


 ナラクはきょとんとした顔で疑問を浮かべた。


「ふむ…。ときにスラピーとガルラはこの国の魔物が使う言語を理解できるか??」


 ギルバートは確かめるように質問した。


「全く分からないよぉ」

「我も、ギルバート殿の言葉以外分からないガル…」


「そうだったのか!?お前ら!?」


 スラピーもガルラもコクンと頷く。てっきりナラクは、自身と同じようにスラピー達もこの国の言葉を理解できているものだと思っていた。


「アルスーン王国周辺の言語は、この国にも出身者がいることによって何とか学習できた。しかし、到底理解に及ばぬ独自の言語生態で社会を築く魔物も少なくないのだ」


「なるほど…。他の地域に住んでいる強い魔物を魔王軍に引き入れるために、全ての魔物と話せる俺の能力が欲しかったって訳か」


「勘が鋭いな…、ナラク。その通りだ」


 ギルバートは顎をさすりながら答える。


「しかしこの件は、魔王様には承認こそ貰えど、我の独断のようなものである。実際のところ、ナラクが本当に魔王軍の味方なのか、魔王様は未だ半信半疑といったご様子だ」

「そこでナラク…!このあとの魔王様との謁見で何とか魔王様に認めてもらって欲しいのだ。申し訳ないが失敗すれば、ここにいる魔物全てがお前達に牙を向くと心得ろ」


「まじかよ…!?」


 自分の言葉で懐疑的な思いを抱く魔王を説得できるのだろうか。しかも失敗すれば命は無いときた。ナラクの頬に一筋の冷たい汗が伝う。


「スラピーとガルラにはその間、魔王軍の言語を習得してもらう」


「お勉強ってこと!?」

「誠心誠意頑張らせていただくガル」


 ガルラはやる気に満ち溢れた顔をして、そう意気込んだ。スラピーは心底嫌そうな顔をしているが…。


「お待たせ致しました。ギルバート様。そちらの二名の魔物が、今回の生徒ですかな??」


 その間を切り裂くように、向こう側から歩いてきたブルドックなような見た目をしている魔物が声をかけてきた。


「おお、シザーズ先生。この二人がアルスーン王国周辺の魔物だ。是非、標準語を喋れるように指導して頂きたい」


「かしこまりました。これからあなた達には標準語を学ぶ授業を行います。私のことはシザーズ先生と呼んで下さい」


 シザーズ先生はスラピー達の方を向くと、二人に伝わるように言語を変えて話しかけた。


「「!?」」


「僕達の言葉だ!!」

「よろしくお願いするガル。シザーズ先生」


「では、教室に行きましょう」


 そうしてスラピーとガルラは、シザーズと呼ばれる魔物に連れ去られてしまった。


「一人で頑張らなきゃいけないのか…」


(何て言えば信用を勝ち取れるだろうか??向かいながら一人で考えるしかねぇな。ギルバートさんめ…昨日教えてくれれば、まだ対策練れただろッ!)


 ナラクは、魔王との謁見で何を話すか、少しでも考える時間を稼ぐために歩幅を狭めて歩く。

 もちろん、その足取りは言うまでもなく重かった。


「見えてきたな。あれが魔王様が住まわれているお城だ」


 ふと見上げると、三階建ての建物ほどある立派な洋城が、ナラク達を見下ろすようにして聳え立っていた。石で作られたその城の有り様は、周りに立ち並ぶ古典的な民家とは明らかに一線を画している。

 丁寧に整えられた城庭の先にある木製の扉には、きっと近衛兵だろう…、二匹の半人型の犬が堂々と立っていた。


「さぁ、到着だ。心の準備は良いか??ナラク」


 ギルバートがナラクに今一度覚悟を問う。


「ちょちょっと待て!!お腹痛くなってき…」

「ギルバートだ。開門願う」


(ギルバートォォォ!!!!)


「「了解」」


 見張りは大きなかんぬきを抜くと、門を押して開け始めた。鈍い音を立てながらゆっくりと中の様子が露わになっていく。

 外から覗ける中の様子は真っ暗だった。しかし、我一番と言わんばかりに風がビュウウと飛び込んでいく。当然、その前に立つナラクの背にも後押しするかのように吹き付けた。

 風が背中を押してくれている。そう感じたナラクは心なしか肩が少し軽くなったのを感じていた。きっと風は勇気も一緒に運んできてくれたのだろう。


「よし…。行くぜ!!」


 ナラクの命を賭けた魔王との謁見が今始まる!


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《Profile》


キャサリン (イノファンシー族)


魔物ランク  C

得意攻撃   ジャイアントスイング

好きな物   狩り♡ ムキムキな魔物

嫌いな物   デートする時に「どこでも良い」

       と言う男


 ・ピンク色の体毛に覆われた猪とマッチョとオネェを混ぜたような魔物。体長は約二メートル。ガナン帝国に来たばかりで、他の魔物から避けられていたナラクに初めて好意的に接してくれた魔物でもあり、性格は世話焼きで困っている者をほっとけないタイプ。毎朝新鮮な動物の肉を狩ってはお手製のボロボロな出店で販売している。


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